傷があって抗生剤を投与すればMRSAは必然的に登場する


 このようにして,創面(肉芽)には遅かれ早かれ,黄色ブドウ球菌のコロニーができる。そういう時に抗生物質を投与するとどうなるか(抗生物質を投与する理由は呼吸器感染でも尿路感染でもいい)

 もちろん,創面の黄色ブドウ球菌は抗生剤で死滅し,抗生剤に耐性のある細菌に交替する。それがMRSAである。要するに,傷があって抗生剤を投与していれば,MRSAが登場するのは当たり前であって,特別異常な状態でないということだ。

 創面にいる黄色ブドウ球菌を殺したからといって無菌になるわけがないし,創面が「黄色ブドウ球菌の生存に適した状態」である以上,非耐性ブドウ球菌以外のブドウ球菌,すなわちMRSA(耐性ブドウ球菌)がそこで繁殖するのが自然なのだから,しかたないのである。いわば自然現象である。


 そして重要な事は,このようにして登場したMRSAは「院内感染」ではないということである。「傷があって抗生剤を投与」していれば,完全無菌室に患者を閉じ込めていても,宇宙ステーションのような完全無菌環境にいても,創面にMRSAは必ず登場するからだ。

 要するに,「MRSAがいるから院内感染」,「MRSAが出たから傷が治らない。MRSAを早く殺さなければ」という短絡的思考をしていても,何も解決しないのである。

(2005/09/28)

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