糖尿病性壊死の局所治療についてはほとんど問題ないが,糖尿病に閉塞性動脈硬化症(ASO)に合併した症例の皮膚壊死の局所処置に関してはかなり注意を要する。まして「糖尿病+糖尿病性腎不全(人工透析)+ASO」の3者合併となると,要注意状態である。
何が要注意かというと,デブリードマンすることがさらに組織壊死を進行させてしまうからだ。つまり,善意で行っている常識的医療行為が,患者の状態を悪化させる危険性があるのだ。
糖尿病だけであれば,壊死した部分を「出血があるまで」デブリードマンし,血糖のコントロールとプロスタグランディンE1の点滴を併用しながら湿潤治療すれば,創は問題なく治癒するはずだ。
しかし〔糖尿病+腎不全+ASO〕では,血糖のコントロールをしてプロスタグランディン点滴をして湿潤治療をしているにもかかわらず,壊死がなす術もなく進行することが少なくない。
デブリードマンした時点では確かに血行があったはずなのに,翌日見るとそこは真っ黒になっていて,そればかりかその近位側も暗紫色の不安定な色に変化しているのだ。そして,どのような治療をしても,この変色した部分は数日後に完全壊死に陥る。
これまで,何度こういう例に泣かされたかわからない。
これらの例を後から反省すると,デブリードマンという行為そのものが組織の循環を悪化させていたとしか思えないのである。こちらとしては「傷を早く治そう」としていた行為なのに,それが逆効果だったわけである。
なぜこうなるのだろうか。単純に考えれば,〔糖尿病+腎不全+ASO〕が合体した時,末梢の血流は極めて不安定になり,組織全体が易刺激性となり,ちょっとした刺激で血管攣縮が進行し,それが組織修復のために最低限必要な血流限界の閾値を超え,結果として不可逆的虚血状態をもたらしているとしか考えられない。そうでなければ,デブリードマンの翌日を狙い撃ちしたような壊死の進行の説明がつかないのである。
であれば,このような「糖尿病+ASO」,あるいは「糖尿病+糖尿病性腎不全+ASO」で壊死した部分の治療はどうあるべきなのだろうか。恐らく,
こんなところになるのではないかと思う。
これ以外に解決法があったら,是非,教えてください。
(2005/09/05)