5月31日の産経新聞に面白い記事が掲載されていました。詳しい内容は上記のサイトで読めます。要するに,アメリカの11歳の女の子が,
抗菌ソープは99.6%の菌を殺すとされるが、普通のせっけんでも99.4%の殺菌効果がある。除菌商品の多くはいいバクテリアまで殺してしまったり、「スーパー・ジャーム」という耐性の強い菌を生み出したりする恐れもあり、除菌洗剤に入っている殺菌作用のあるトリクロサンが人体に有害である可能性も指摘ということを発見した,という記事です。要するに,石鹸だろうが殺菌石鹸だろうが,皮膚常在菌まで殺してしまい,その結果,皮膚常在菌がいなくなれば皮膚の弱酸性は保たれなくなり,さまざまな好ましくない細菌(病原菌)が入り込み,その人の健康にも害が出ます。さらにそれを無視して手を洗い続けると,手の皮膚が荒れて表皮ブドウ球菌が棲めなくなり,黄色ブドウ球菌だらけになります。
つまり,手洗い励行すると院内感染が多くなります。常在菌のことを知っていれば常識なんですが,このあたりのことをご存じない「院内感染対策の専門家」がたくさんいて,「院内感染対策のために手を消毒薬で洗いましょう」なんて喚いたりしているようです(・・・あくまでも伝聞ね)。こういう「専門家」は,上記の11歳に教えを乞うべきでしょう。
それにしても,11歳でこれを発見しちゃうか。もしも本当なら,彼女が今後も,このような視点を持ち続けて成長して欲しいと思う。
同時に,この記事を紹介している女優の西田ひかるさんの反応も面白い。
水洗トイレでは便器の水を流すと、霧状になって三メートルほども飛ぶそうです。アメリカではお風呂とトイレが併設された洗面所が多く、霧状に舞った便器の水が洗面台に置いた歯ブラシにかかるというのです。という部分だ。確かに,水洗トイレでは3メートルの範囲で霧状になった水が飛んでいる,と聞くと,「それならトイレの蓋を閉めて流しましょう」と反応しちゃうのはわかるけど,これってどうなんだろう。こういう情報を前にすると,人間の反応は2種類に分かれると思う。
トイレより台所の方がばい菌が多い家も少なくないそうです。ちょっと信じがたかったのですが、同じふきんやスポンジをずっと使っていませんか? お肉や魚を切るときに使ったまな板を洗った後、同じスポンジをそのまま使うと、菌を広げているようなものです。
私なら断然,後者だな。もちろん私はこれまで病気になったことはあるが,それは,トイレの壁にくっついているであろう「水洗トイレの霧状の水」に触れたためでもないし,トイレに入ったあとに腹痛になったこともないからである。恐らくバイキンだらけの環境で生活していると思うが,多分,それらのバイキン君たちと共存する術を持っているから,別に病気にならないんだろうと思う。
でも世の中には「3メートルも飛んでいるのですから,トイレを流すときは蓋をするように」と考えちゃう真面目な人がいる。インフェクション・コントロールの専門家に多い気がするし,その巣窟と化しているのがCDCである。
どうも彼らの考えを見ていると,一神教的発想だな,と思ってしまう。要するに
普通なら,「こんなにしているのに院内感染が減らないのなら,そもそもその方針が間違っているからじゃないか?」と考えるのが普通だと思うが,一神教的院内感染対策専門家は,「まだわれわれの信心が足りないからだ」と考えちゃう。神を疑うことが最大の禁忌だから,しょうがないんだろうけどね。
(2005/06/02)