爪白癬の治療について,山本先生から投稿をいただきました。以下は先生からのメールと症例写真です。なお,山本先生は私のサイトの「外傷を湿潤療法で・・・」にもご参加いただいております。
爪白癬の治療は高価な内服薬を4〜6ヶ月,またはそれ以上,内服しなければならず,私も,もっといい方法はないものかと考えておりました。先生がおっしゃるような理屈で,患者さんの承諾を得た上で,爪甲の部分切除+ラミシール錠の2週間内服を行った経過がありましたので報告します。術後7か月間フォローしましたが,再発はなく,爪は正常になりました。なお,内容,画像を公開するにあたり,患者さんの承諾は得ています。またラミシールは通常量の125mgを1錠/日投与しております。
患者さんは,72歳,女性。数年前から右第1趾爪の一部の変色に気づいていたそうですが,放置していたようです。テレビで爪白癬の話を聞いて当院を受診しました。肉眼的には爪の全部ではなく一部に変色があり(画像1),その一部を検鏡し白癬菌を認めました。
十分に治療法を説明し,納得した上で,局所麻酔下に爪甲部分切除(右1/3)しました。直後は,カルトスタット+フィルムで,1病日からはハイドロサイトで湿潤療法としました。術後の創痛は少しあったようですが,日常生活には影響せず,7日目からは全く自覚しなくなったそうです。鎮痛剤,抗生剤の内服投与は行いませんでした。ラミシールは術当日から2週間内服してもらいました。また,16日目に残存した爪の一部を検鏡しましたが,白癬菌は認めませんでした。
抗真菌剤の内服は,この症例では2週間にしましたが,明確な根拠はありません。懸念していた創痛は患者さんの生活スタイルによっても違うと思います。全部で4人の患者さんにこの方法を行いました。内服の投与期間は,もっと短くてもいいかもしれませんが,少なくとも2週間での再発の経験はありません。爪床に残った菌に対する治療が問題なのだと思います。私のやり方では,爪母はそのまま温存しています。
初診時 | 抜爪後 | 14日後 |
2ヵ月後 | 7ヵ月後 |
以上が山本先生からのメールと写真である。
爪白癬は非常に多いし,通常は長期の内服治療が必要である。この患者さんのように,他に疾患がなく全身状態に問題はなく,爪白癬だけが問題という人も多い。このとき,山本先生が示されたように〔局所麻酔下で抜爪〕+〔創傷は被覆材で湿潤治療〕+〔2週間程度の抗真菌薬の内服〕で治癒し,再発もないとなると,これは多くの患者さんにとって福音となるのではないだろうか。
(2005/04/08)