徳永恵子(宮城大学 看護学部教授)


 まず,徳永教授の文章を幾つか引用させて頂く。


 徳永教授は医療現場で昔から「台所用品」が使われている事をご存知ないのだろうか。言うまでもなく皮膚科のODT療法のラップ整形外科の指尖部損傷で使われるアルミホイル,そして褥瘡などのデブリードマンに使われる歯ブラシである。特に歯ブラシは外傷創面の汚染を落とすのに広く使われているはずだ。恐らく徳永教授も使った事があると思うがどうだろうか。これらは医療材料でもなければ,創面に使用した際の安全性も確かめられていない。

 であれば,徳永教授は台所用品のラップを使うのはおかしい,というのと同じ理由で,ODT療法もアルミホイル療法も歯ブラシでのデブリードマンも非難すべきである。上述のように「どのような医療行為でも患者に安全ではない方法や誤った治療が選択されている時には,見て見ぬふりをしないで,患者のために "NO" 言える看護師が求められている時代」とまで書かれている以上,徳永教授は皮膚科医がODT療法をしていたら「そんな危険な治療をすべきでない」と抗議し,整形外科医が切断指をアルミホイルで包もうとしたら,「あなたは患者を何だと思っているのですか。台所用品でくるむなんて医療はすべきでありません」とおっしゃるべきであるし,現実にそうなさっておられるであろうことを期待する。そうでなければ,論理的に不合理である。

 ついでに言うと,ODT療法もアルミホイル療法も歯ブラシでの創面のブラッシングを非難する論文も書くべきであろう。それが彼女の医療者としての良心を証明する行為である。


 また,ハイドロコロイドとラップではラップの方が優れている,というのに仰天なさっていらっしゃるが,それはハイドロコロイドを買いかぶりすぎである。実際にハイドロコロイドを褥瘡に使ってみるといろいろ皮膚のトラブルが起きているからだ。そのトラブルの原因の多くは,ハイドロコロイドの接着力の強さと,健常皮膚を密封してしまうことそのものにある。これはハイドロコロイドの剤系そのものの問題であると同時に限界である。

 また,褥瘡が一部分に体重がかかる事が原因であれば,被覆材(治療材料)の厚さは極限まで薄い方がいい。これは単純な物理学である。この褥瘡発生の物理学を知れば,厚さが極限まで薄いラップの方が優位である事は誰にだってわかる簡単な原理である。
 どうしてもハイドロコロイドの優位性を言うのであれば,ラップより薄いハイドロコロイドを開発する必要があるはずだ。


 また徳永教授は「水分吸収力のあるドレッシング材の方がいいに決まっている」と書いているが,これは一つの製剤で「創の湿潤状態の維持」と「浸出液の調節」をしようと考えているからであり,この2つの機能を切り離して,湿潤状態の維持はラップ,浸出液の調節は紙オムツで何も不都合はないし,それでドレッシング材の優位性を言うには無理がある。


 第一,被覆材は2週間までしか使えないのである。被覆材メーカーから無料で被覆材の提供を受けられる人はいいが,それ以外の大多数の医師や看護師はこの2週間の制限で苦しんでいるし,そのために,使いたくても被覆材が使えないのだ。

 もしも,どうしても被覆材を使えというのなら,2週間を越えて被覆材を合法的に使う方法を教えて頂きたいものである。そういう現場の苦しさも知らず,いいものだからドレッシング材を使いましょうというのは,机上の空論である。


 それと,これは卑しくも科学論文なのであるから「それなのに“どんな創にもラップ療法が適応”というのはなんなんでしょう」というような文章は掲載すべきではないだろう。おばさんの立ち話じゃないんだから・・・。
 このような文章を見逃したとすれば,編集者の責任だし,能力が低いと思う。医学雑誌,看護雑誌の編集者としては失格である。

(2005/02/01)

左側にフレームが表示されない場合は,ここをクリックしてください