放射線下顎骨骨髄炎(骨硬化性骨髄炎)の治療


 下顎骨の悪性腫瘍などの治療で放射線治療をした後に,下顎骨に骨髄炎を起こすことがある。骨硬化性骨髄炎などと呼ばれているようだ。治療をしたことがあるとわかるが,極めて難治である。
 実は数例だけだが,この骨硬化性骨髄炎だが簡単に治療できる。私の経験はわずかに数例だが,ほとんど以下の方法で治癒が得られた。

 具体的な方法は次の通り。


【腐骨の除去,掻爬】

【骨欠損部の処置】

【プロスタグランディン (PGE1) 投与】

【食事】

【抗生剤】


 極めてシンプルであるが,要点は手術部位の血流阻害因子を徹底的に排除し,血流増加に努め,乾燥を防ぎ・・・という,常識的なことをまとめただけである。
 ちなみに,「骨髄炎が起きているのだから感染予防に努めなければ」というのはナンセンスだ。病名こそ「骨髄炎」だが,病態の基本はあくまでも放射線による組織壊死と血流障害であり,そのため,細菌が感染を起こそうにも栄養はないわけで,真の意味での「骨髄炎」は起きていないからだ。

 食事は普通にとらせるべきである。唾液の分泌があれば口腔内(創部)は常に湿潤を保たれ,治癒が早まるからだ。
 よく,「食べ物からばい菌が入って感染する。だから絶食にしなければいけない」と考えて絶食を続けさせる先生がいらっしゃるが,これは杞憂というものである。食べたって食べなくたって,口腔内には多数の細菌がいるのだから,食物から入る細菌(・・・どう言うばい菌がいるんだろう?)はそれに比べたら誤差範囲である。だったら口から好きなものを食べて元気をつけてもらったほうが治りも早いだろうし,湿潤状態も保てるのだ。

(2004/12/09)

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