手や指の熱傷・広範挫創で困るのはドレッシングの方法である。デュオアクティブやティエールを使う手もあるが,枚数が多いと保険で査定されることがあるし,第一,熱傷処置と創傷被覆材を同時に請求できない県も多数ある。
また,日常生活では指が使えないと非常に不便極まりない。
もちろん,食品包装用ラップで覆うのもいいが,指全体を巻いたりする場合はラップ同士がくっついたりして,結構煩雑である。
そこでちょっとした工夫。ディスポーザブルの手袋と利用する方法だ。特に,熱傷(外傷)の状態に応じて指先を出してやるように手袋を細工してやると,患者さんのQOLは格段に向上する。
ここでは,実際の治療例を挙げて具体的な方法を説明する。
症例は30代男性。仕事中に調理用の熱した油のなべが爆発し,右手に熱傷を受傷。直ちに氷水で冷やした後,当院救急外来を受診した。連休の初日であったが,救急室では「ワセリンを塗布した食品包装用ラップ」で創面を覆う治療を続け,受傷4日目に当科外来を受診した。
なお,「受傷○日目」には受傷当日を含めている。
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実はこの方法,手の熱傷を扱う医師の間では結構知られていると思う。私も以前から,時々行っていたが,指先を切るところまで気を使っていなかったので,手袋の中は浸出液でヒタヒタ状態となり,患者さんにとってはあまり気持ちのいいものではなかったと思われる。
しかし,最近はこのように手袋の指先を切ったり,手背だけの熱傷の場合は思い切って指部分をすべて除去して使用することで,患者さんが非常に楽になることがわかった。もちろん,浸出液が多い時期では,手袋の上にガーゼが必要であるが,それでも指先が出ているのと出ていないのでは,大違いである。
また,プラスチベース(白色ワセリン)を創部に塗布するか,手袋の中に塗布するかであるが,後者の方法だと余計なところまで油まみれになるので,前者のほうがいいようだ(ま,どうせ,時間がたてば油まみれになるかもしれないけどね)。
休日などは患者さん自身に処置してもらったりしたが,まったく問題なくできたそうである。
もちろんこの方法は,熱傷だけでなく,他の外傷・皮膚潰瘍にも応用できることはいうまでもない。
(2004/10/15)