食品包装用フィルムを使った広範な擦過創の治療

−サッカー小僧,ラグビーおじさんの怪我はこうやって治そう−


 症例は20代の男性。サッカーの試合中に転倒して左大腿部〜膝蓋部〜下腿を擦りむき,近医を受診して治療を受けたが,湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)のことを知人に聞き,受傷翌日に当科を受診した。


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  1. 初診時の大腿部の状態。しっかりと「消毒とガーゼで治療」されている。
  2. ガーゼの下にはソフラチュール。網目がしっかりと創面に食い込み,剥がすのに悲鳴を上げさせてしまった。ごめんな,私が悪いんじゃないんだよ。
    こういうのを見ると「ソフラチュールは傷にくっつかない」というのがタワゴトに過ぎないことがよくわかる。
  3. 大体外側部の創の状態。網目がナイスである。しかも創面は乾燥気味。碌な治療じゃないな。
  4. 膝蓋部から下腿にかけての状態。膝蓋部はやや深いのがわかる。
  5. 食品包装用ラップにたっぷりと白色ワセリンを塗布し,ワセリンがついた面を創にあてる。もちろん,ラップ単独でもいいのだが,ワセリンを塗ったほうが痛みが早く治まり,治療効果もよいようだ。また,写真にあるような「木のへら状のもの」があるとラップに塗りやすい。
    ワセリンはオリーブ油を利用すると簡単に落とせる
  6. ラップで下腿を被覆。
  7. ラップで大体も被覆。ちなみに絆創膏は紙絆創膏である。この上に軽くガーゼで覆い(ガーゼで覆うのはもちろんラップの端っこ,つまり浸出液がしみ出てくるところだ。ラップ本体の上を覆ってもあまり意味が無いよね),その上から包帯を巻いた。さすがに大腿部は浸出液が多かった。


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  1. 3日目の状態。下腿外側の創は上皮化しているのがわかる。ちなみにこの頃から自宅の風呂に入り,入浴後は自分でラップを巻いてもらっている。もちろん,入浴しても痛くないからだ。
  2. 6日目の状態。膝蓋部(一部,全層皮膚欠損である)もほとんど上皮化している。下腿の創は瘢痕すら残っていない。
  3. 13日目の状態。皮膚全層欠損部も全て上皮化し,治療完了(実際にはその10日目頃に治癒していたため,ラップ被覆は行なっていなかった)


 このような広範な擦過創や挫創で,砂などの異物が入っている場合,ブラッシングをしようにもなかなか局所麻酔が大変である。まして,患者さんが年少である場合,局所麻酔自体が難しい。
 このような場合は,キシロカインゼリーをたっぷり創面に塗り,その上にフィルム材を張って密封。この状態で数分置くと,ほとんど無痛でブラッシングできる。


 なお言うまでも無いと思うが,熱傷でもこの治療法が極めて効果的である。湿潤療法(うるおい療法,閉鎖療法)に無知な病院にいくと,長くかかるし,治らないし,傷は残るし,おまけにムチャクチャ痛い。それでよければ,お近くの病院にどうぞ。

 無知な治療しかできない無知な医者にかかってはいけません。あなたの体(健康)を守るのは,あなたです行くならこういう病院です。医者(患者)を選ぶのは,患者さんの権利です。

(2004/09/10)

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