「褥瘡のラップ療法」は一度やってみるとわかるが,極めて安全,簡単であり,まず失敗することがない。在宅で家族の方がラップ療法をし,時々外来に来る患者さんがいるが,創面は極めてきれいな状態を保っていて,感染するような症例はほとんどない。まさに下手な病院顔負けである。
こういう治療が普及すれば,「褥瘡ができたから病院へ入院させよう」ということも少なくなるんじゃないだろうか。だって,する事といえば洗ってラップを張るだけなんだから。
高齢になれば体の動きが鈍くなったり,忘れっぽくなったり,皺が増えたり,オシッコが近くなったり,目が見えなくなったり,耳が遠くなったり,褥瘡ができたりするのは不思議でも何でもない自然現象現象だ。自然の摂理を超えて長生きしているのだから,しょうがないとも言える。
だから,高齢化社会であればいずれ誰にも褥瘡ができる可能性はあるし,それを避けることは難しいというのも自然な帰結である。
そうであれば,褥瘡治療を「特殊な医療技術,特殊な医療知識を持った専門家にだけできる治療」とするのは間違っている。万人がいずれ直面する問題なら,万人がその対処法を知っておくべきである。
褥瘡学会の使命は,高価な薬剤や治療材料を使った「特別な治療法」の普及でも,面倒くさいだけで役に立たない局所評価法を普及させる事でもないと思う。誰でも簡単にできる簡便な治療法を国民全体に普及させる事がその使命だろう。褥瘡治療を誰にもできる簡単なもので,特殊な知識は要らないことを広める事にあるのではないかと思う。
そうなれば,「褥瘡がある患者は入所させられません」なんてバカな事を言っている施設もなくなるだろう。何しろ家庭でもできる事をこの施設ではできないのです,と公言しているようなものだからね。
褥瘡治療を医療関係者にしかできない特殊な治療とすべきか,ごく普通の誰にでもできる簡単な処置とすべきか,どちらがいいと思いますか?
(2004/08/26)