ラップの安全性を問う愚


 ラップは医療用の材料でなく,創面に使用した際の安全性も確認されていない,という議論も褥瘡治療においては意味をなさない。老衰している寝たきり患者が相手だからである。たとえ発癌性があったとしても,それで癌が発生する時間は患者に残されていない。「寝たきりで褥瘡のある」患者が1年以上長生きする確率は限りなく小さいだろう。


 「ラップは滅菌物でないから,傷に使うと敗血症を起こす」とヒステリックに騒ぎ立てている偉い先生もいるらしいが,これは食品包装用ラップ工場を見学してから物を言うべきだろう。食品に使用する材料は極めて高度な清潔環境を要求されている。それに比べれば,病棟や外来の不潔さは想像を絶する。

 こういう馬鹿なことをおっしゃられている先生には,「あんたの手の方が余程汚いと思うよ。そういう不潔極まりない手で患者に触れると,患者さんが敗血症を起こすんじゃないですか」と老婆心ながら進言申し上げたい。

 食品用ラップ製作工場と比較にならないほど不潔な病棟や外来で治療していて敗血症にならないのに,なぜラップを張ったくらいで敗血症になるのだろうか。馬鹿も休み休み言って欲しいものである。

 大体,褥瘡創面には膨大な数の細菌が既に存在している。たとえラップに細菌が付いていたとしても,褥瘡創面にもともといる細菌数に比べれば,象にアリ,大海の一滴,富士山麓の樹海にチューリップの球根を植えるようなものである。
 褥瘡創面の細菌叢を乱すほどの細菌にまみれたラップ・・・なんてのは,存在しないと思うよ・・・常識的に考えれば。物理的に考えれば,あのツルツルの面にそんなに細菌がくっつけるはずがないのだよ。これは単純な物理学だ。

 「ラップで敗血症」と考えられている先生がいらっしゃったら,高校程度の物理学を学びなおすよう,進言させていただきます。


 要するにこれは,「医薬品として厚生労働省が認めたものにだけ治療効果がある。医薬品でないものに治療効果があるはずがない」という思い込みに過ぎないのである。だから,医薬品でないラップを使った治療にヒステリックに対応しちゃうんだろうな。つまりこれは「お上に弱い」ってやつだ。

 お上が戦争に行けといえば戦争に行き,お上がブッシュ支持と言えばブッシュを支持し,お上が許可した血液製剤を使って薬剤エイズを発症させる,という構造である。

 厚生労働省の認可した薬剤だから安全,と思ったら大間違いだ。ゲーベンクリームやイソジン,ヒビテンのような「組織破壊薬」が,治療薬として認可されているのが現実である。例えば熱傷創面をイソジンやヒビテンで消毒し,ゲーベンクリームを塗布したガーゼで覆えば,確実に3度熱傷を作ることができる。これ以上に危険な薬剤はない。つまり,厚生労働省が認めた効能書きを鵜呑みにすると,とんでもないことになるのだ。

(2004/08/24)