「褥瘡を放置すると,そこから感染して敗血症になるから治療すべきだ」「褥瘡を放置すると死んでしまうから治療すべきだ」というのはもっともらしい考えである。
だが,「褥瘡で死んではいけない」というのなら,人間は何で死んだらいいのだろうか。肺炎で死ぬばいいのだろうか。脳血栓で死ねばいいのだろうか。癌性腹膜炎で死ぬのはいいのだろうか。人間は褥瘡で死んではいけないのだろうか。
人間は必ず死ぬし,一度しか死なない。交通事故で死ぬ人間もいれば,戦争やテロに巻き込まれて死ぬ人間もいる。山で熊に襲われて死ぬこともあれば,ハイキングで道に迷って死ぬ人もいる。肺炎で死ぬ人もいるし,心不全で死ぬ人もいる。死因はさまざまだが,一度だけの生,一度だけの死において,人間は平等である。
ならば,褥瘡で死ぬのは別に異常でもなんでもない。褥瘡は数ある死因のうちの一つに過ぎない。
褥瘡で死んだら家族が恥ずかしい思いをするのだろうか。褥瘡で死んだら家族が恨むのだろうか。褥瘡で死んだら患者本人が恨みに思って化けて出るのだろうか。
褥瘡が死因であって,何が悪いのだろうか? なぜ「褥瘡専門医」を受傷なさっている医者は,褥瘡を特別扱いするのだろうか? 褥瘡とはそんなに特別な病態なのだろうか?
(2004/08/17)