そもそも褥瘡とは何なのか


 寝たきり高齢者の褥瘡とは,老衰という自然現象に伴って起こる病的状態である。そして老衰とは「進行性・不可逆性」であり,その意味で老衰とは全身性変性状態(疾患)と考える事ができる。

 高齢のため体がきかなくなり,食事も取れなくなり,排尿や排便のコントロールもできなくなり,水を飲めば誤嚥し,意識が混濁して意思の疎通がとれなくなり,皮膚も弱くなってわずかな外力でも皮膚が傷つき,目は白内障で濁り,耳は聞こえなくなり,やがて寝たきりになり・・・というのは自然現象である。
 死が避けられないように加齢も止めることはできない。人により,加齢の形はさまざまで,高齢であっても元気な人もいれば,初老なのに寝たきりになってしまう人もいる。両者の差がどこで生じるのかは私にはわからないが,人間が生物としての本来の寿命を超えて生きられるようになった時,加齢現象・老衰現象は必然のものとなったと思う。

 そのようなさまざまな「加齢・老衰現象」の一つとしてあるのが褥瘡だ。決して,寝たきりの患者には褥瘡だけが生じているわけではないのである。


 進行性・不可逆性の変性疾患は治療方法がないことがほとんどであり,医療者側にできることは「対処療法」しかない。老衰の進行をストップさせる手段がない以上,老衰によって起こる症状には対処療法しかできないのは当然である。老衰が「原因」であり,老衰症状が「その結果」だからだ。「原因」が除去できない以上,「結果」に対しては,対処療法しかないのである。


 さらに褥瘡が「老衰という全身性進行性不可逆性変性疾患」の一症状である限り,完全に治癒しても再発は避けられない。これは「褥瘡を作る原因(=老衰)」そのものを治療できないからだ。つまり,このような全身状態の患者の場合,治療によって褥瘡を治癒させたとしても,それは「一時的に褥瘡のない状態」に過ぎず,「褥瘡が再発しない状態」にはなりえないのである。

 要するに,どれほど高価な薬剤を使って治療しようと,どれほど完璧な手術をしようと,「褥瘡のない状態」にはできても「褥瘡ができない(=再発しない)状態」にはできないのだ。これは厳然たる医学の限界である。

 「高価な薬剤や治療材料,優れた手術で褥瘡を完治させても,褥瘡が再発しない状態になるわけではない」という事実こそが,褥瘡治療を考える上での第一歩ではないだろうか。

(2004/07/21)

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