下腿血疱の治療例


 症例は50代の女性。バイク運転中に転倒し,右下腿に倒れたバイクがのしかかって挟まれる形になった。救急車で近位に搬送されたが,下腿遠位部全体に血疱形成と皮膚欠損があり,当院を紹介され,同日,当科を受信した。
 なお,この患者は入院はせずに通院のみで治療している。


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  1. 初診時の下腿内側の状態。

  2. 初診時の下腿外側の状態。下腿遠位部全周に多数の血疱形成があり,皮膚は圧挫されて欠損し,高度に腫脹している。

  3. 直ちに血疱表面に接着剤付きポリウレタンフィルム材を貼付し,フィルムの上から針を刺して血疱内容液を吸引し,針を刺した孔にフィルム材を貼付して,孔を塞いだ。ガーゼをあて,軽く包帯を巻いた。

  4. 翌日の状態。また少量ながらも血疱液が溜まっていたため,フィルムの上から液を吸引し,針穴にフィルム材を重ね張りした。血疱液吸引は3日目にも行った。

  5. 6日目,張り重ねたフィルム材を除去した(これまではフィルムは剥がさずに,上に張り重ねるのみとしていた)。ほとんどの部分できれいに上皮化していることがわかる。

  6. 17日目の下腿内側の状態。1箇所,潰瘍が残っているが,それ以外は跡形なく治っている。

  7. 17日目の下腿外側の状態。瘢痕を残さずに治癒していることがわかる。


 感染のない水疱,血疱の治療は基本的に同じである。フィルム材を水疱(血疱)表面に貼付し,そこから水疱液(血疱液)を穿刺吸引し,軽く圧迫するだけである。水疱液(血疱液)が再度溜まったら吸引を行い,注射針の孔はフィルム材か絆創膏で閉鎖し,貼付したフィルム材は原則的に剥がさないようにする(水疱膜,血疱膜が破れるから)
 なお,感染症状を伴った水疱,血疱の場合は直ちに水疱膜や血疱膜を除去することは言うまでもないだろう。

 上記を繰り返し,水疱液(血疱液)が溜まらない状態が数日間続いたら,積み重なったフィルム材を剥がしてよい。もう既に上皮化しているはずである。


 なぜ,水疱(血疱)を直接穿刺しないかというと,水疱膜(血疱膜)を破らないようにするためである。
 この原理は「ゴム風船に針を刺しても破れない」というマジックと同じである。針を刺すところにあらかじめセロハンテープを張っておくと,針を刺してもゴム風船は破れないってやつね。

(2004/06/24)

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