かなりパックリと口があいている裂傷なのに,どうしても局所麻酔に同意してもらえず,縫合ができないことがある。動かない部分ならテーピングで何とかするところだが,顔面でしかも上口唇というよく動き,汗をかく部位だったら,テーピングだけで治療できるのか,不安になってしまう。
このような症例に対しテーピングで非常にきれいに治った症例を,私が勤務する相澤病院の救急部,清野先生が報告してくれた。最初の2日を彼が治療し(休日だったため),それ以降を私が引き継いで治療した。
症例は15歳男性。自転車に乗っていて転倒し,上口唇裂傷,頬部擦過傷を受傷し,当院を受診した。上口唇に長さ2センチの裂創を認め,傷は大きく開いていたため局所麻酔下に縫合しようとしたが,患者が局所麻酔注射に同意しなかった。そのためテーピングのみで治療する事となり,傷がきれいに治らない可能性があることを説明した上で,テーピングを行った。
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全ての例がこんなにうまく行くとは思えないが,極めて見事な治療結果だと思う。ちなみに治療時期は5月下旬であり,発汗も多い時期であるが,それでトラブルは起きなかったようである。
この症例の場合は成人のため,絆創膏が張れる面積が確保できたというのも,よい結果につながったと思う。小児のように上口唇自体の面積が小さい場合,テーピングのみで固定するのは難しい(発汗も多いし・・・)。
(2004/06/15)