弱酸性石鹸はお肌に優しい?


 以前からよくわからないものの一つが,「弱酸性石鹸は弱酸性だから肌に優しい」という商品である。何でも「赤ちゃんの肌は弱酸性,だから弱酸性の石鹸で洗ってあげましょう」というのがコンセプトらしい。

 なぜ弱酸性なら肌に優しいのだろうか。肌が中性に近い人なら,中性洗剤で洗えば「お肌に優しい」のだろうか。


 石鹸はあくまでも石鹸である。石鹸の本質は「油を水に溶かすことで油汚れを落とす」点にある。つまり,界面活性効果で汚れを落とすのが石鹸だ。弱酸性だろうと中性だろうとアルカリ性だろうと,界面活性剤は界面活性剤だ。

 かたや,界面活性剤は強力は細胞障害性を持っている。界面活性効果は細胞の生存を許さないから当然である。皆さん御存知のように,SARSウィルスは消毒薬で拭くより中性洗剤を浸した布で拭いた方が確実に除去できるが,これは界面活性剤の持つ生体障害性そのものの効果であることは誰でも知っていると思う。細胞培養しているシャーレに界面活性剤を入れたらどういう惨状になるか,実験したことがあればその効果(?)の程がよくわかる。

 「弱酸性だからお肌に優しい」と言う石鹸を,人体の表皮細胞を培養しているシャーレに入れても大丈夫なんだろうか。


 弱酸性の石鹸がお肌に優しい,という原理が私には理解できないのである。界面活性剤でありながら,皮膚に障害を持たないということがなぜ両立するのか判らないのである。

 これほど「お肌に優しい,使っても安全」宣伝しているところを見ると,もしかしたら,界面活性効果を持っていないのかなぁ? 界面活性効果なしに油汚れが落とせるとしたら,これはもうトンデモナイ大発見,大発明だと思うけれど・・・。

(2004/06/14)

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