褥瘡治癒過程のアセスメント:その2


 以前にも「褥瘡治癒過程のアセスメント」についての疑問を書いたが,これらは要するに「褥瘡の所見」を数値化したものに過ぎない。褥瘡を観察するときに,どういう項目について観察したらいいかを列挙したものであり,カルテに「浸出液中等量」と書くのは面倒だから数字で「3」と書こう,と決めただけのものではないかと思う。もちろん「3」としても「C」としても「V」としてもよかったはずだ。


 だからこれは,肺炎の所見を

の各項目を5段階評価し,それぞれに0から4の数値を割り振っているのと本質的に違いはないはずだ。これは臨床所見を数値化しているだけのことであるから,それなりに意味があるとは思う。
 しかし,「痰の色」と「痰の量」などの数値を合計し,それで「肺炎の重症度」の診断基準にしたらどうだろうか。そしてそういう基準を「日本呼吸器学会」が提唱したらどうだろうか。恐らく,学会員から「そんな意味のない数字を合計するのは無駄ではないか」と,抗議が殺到するはずだし,それが医学常識というものだろう。


 なぜこんなことを書くかというと,これらのアセスメントが治療手段の選択に全く役立たないからである。アセスメントをするのであれば,それは将来の方向性とか,治療の選択とか,そういうものに意味のある情報を与えるものでなければいけない。そうでないアセスメントは,するだけ時間の無駄である。
 肺炎の治療において意味がある情報は,起炎菌の種類,有効な抗生剤の種類,全身状態を評価する検査結果だけである。痰の量も痰の色も,治療上は無用な情報である。


 「褥瘡のラップ療法」をしてみるとわかるが,治療法は極めてシンプルである。感染していたり,壊死組織が残っている褥瘡でも,ラップしておけば自己融解で除去されて感染は治まるし,ポケットがあっても勝手にふさがってくれる。必要なものは食品包装用ラップ,紙オムツ,ワセリンかプラスチベース,そして絆創膏とデブリードマン用の鋏とピンセットだけ。それ以外の薬剤は一切不要である。  乾燥して干からびているような褥瘡でも,ラップを張っておけば数日のうちに,瑞々しい肉芽が出現してくるのだ。

 このような治療を一度経験すると,やれ褥瘡の面積はいくらかとか,深さは何センチかとか,ポケットの大きさはいくらかなんて,全く問題ないのである。大きかろうが深かろうがポケットがあろうが,ラップで覆うだけで褥瘡は治るのである。


 このようなシンプルで最大限の治療効果を持つ治療法があるのに,なぜアセスメントだけ微にいり細にいり,多くの項目を計測しなければいけないのか,私には理解できない。

(2003/10/03)

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