「1日に1回消毒をして・・・」の嘘


 医療現場にはいろいろな「消毒がらみの処置」がある。その多くは1日に一度であったり2日に一度だと思う。場合によっては1週間に一度だったりする。
 結論から先に書くと,このような処置は全て嘘っぱちである。いくら「エビデンスがあります」といったって,嘘は嘘である。そういう「エビデンス」を信じる方がおかしいのである。


 「1日」とは何だろうか。もちろん,地球が1回自転するのに要する時間である。人間からすると,太陽が顔を覗かせると1日が始まり,次に太陽が昇るまでが1日という時間単位である。

 別の言い方をすると,「太陽の動きを元にして決めた生活の単位」であるといってもいい。人間は太陽を動きに従って生活しているから当然である。だから,あらゆる生活パターンの基本にこの「1日」という単位が登場する。当然の事ながら医師や看護師の勤務体制も「1日」を基本に決めている


 一方,消毒は細菌を殺したり,細菌を少なくするために行なう行為である。となれば消毒(処置)の間隔は本来,細菌の増殖速度とか,消毒液の消毒効果の持続時間などを元に決められるべきであろう。例えば,細菌の増殖速度で決めるとしたら6時間とか7時間とか,そういう時間が「処置間隔の単位」になるだろうし,消毒薬の効果持続時間で決めるとしたら「1時間」とか「1時間半」とかが「単位」になるはずだ。そしてこうやって決めた間隔は,決して「○日」にはならないのである。


 ここでわかったと思う。「1日1回の消毒」というのは人間の勤務の都合で決めただけである。少なくとも細菌学的な意味は皆無だ。消毒の対象である細菌の増殖とも,消毒薬の効果が続く時間とも無関係である。だから,1日に1回の消毒がらみの処置は全て嘘っぱちなのである。

 ましてこれが「1週間に1度消毒して・・・」となると噴飯物。細菌がカレンダーを見て生活しているなら話は別だろうが,一般に細菌はグレゴリオ歴とは無関係に生活している。細菌は決して「今日は月曜日だから燃えるゴミの日だったな」とゴミを出したりしないのである。


 となると,CDCの「CVカテーテルの処置は1週間に1度,2%ヒビテンで消毒し・・・」というのも嘘っぱちである。いくら「エビデンス」があろうと,嘘は嘘である。CDCというと金科玉条の如く,永遠の真理の如く考えている人は少なくないが,こういう嘘を見逃していいのだろうか?

 「1週間に1度の処置と1日に1度の処置で感染率は変化しない」という実験論文があったとしても,「1週間とはそもそも何なのか?」という基本も考えていないのだから,根本から間違っている論文だ。いくらCDCがエビデンスとして採用しているといっても,こういう論文を頭から信用するのはおかしいと思うし,こういう嘘に気がつかないのも困りものだと思う。CDCともあろうものが,こんな初歩的な嘘論文に騙されるのは嘆かわしいと思う。


 と書くと,「じゃあ,処置の間隔はどうしたらいいの?」という疑問が生じてくるはずだ。「○日に1回の消毒と処置」が嘘である以上,消毒する必要はないのである。必要なければ止めればいいのである。そして,処置の間隔は「皮膚(創)の状態に合わせて決める」べきであるし,その間隔はその時の状態によって,弾力的に変えていいし,変えるべきなのである。

 もちろん1週間に1度だっていいだろうし,3日に1度でもいい。月水金と「燃えるゴミの日」に合わせて処置する日を決めてもいい。
 それこそ,医師や看護師の都合で決めていいし,病院・病棟の都合にあわせて適当に決めてもいいのである。こんなこと,CDCに決めてもらわなくてもいいのである。
 そして真夏と真冬では,当然,処置の間隔は変えるべきなのである。

(2003/09/22)

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