消毒はウル○ラマン


 消毒はウル○ラマンである。我輩は猫であると同様,消毒はウル○ラマンなのである。そして,ウル○ラマン・タロウは強酸性水による褥瘡洗浄ウル○ラマン・レオは水圧をかけて行う褥瘡洗浄である。


 まず,一般の手術創の消毒について考えてみよう。

 たとえば,毎朝9時,回診時に手術創の消毒をしていたとする。
 消毒で皮膚表面の細菌は死ぬが,毛穴に潜む皮膚常在菌には消毒薬は作用しないのでこれらが生き残り,消毒薬の効果がなくなると皮膚表面に這い出し,次第に増えてくる。滅菌ガーゼで創を覆おうが,覆うまいが,この細菌は無関係に這い出してくる。
 これが大体,午前10時頃のできごとだ。
 そして,翌朝9時の回診時まで,手術創はガーゼで覆われたまま。
 この頃までには,毛穴から這い出した細菌は,消毒したところもしないところも,わけ隔てなく均等に分布している。
 ということは,お昼頃から翌朝の午前9時まで,皮膚の細菌数は「消毒前」と同じになっている。つまり,一日の大半が「消毒していない状態」と変わりがないのである。

 さて今度はウル○ラマン氏の登場。言うまでもなく住所はM78星雲,仕事は地球での怪獣退治である。恐らく毎日,遠距離通勤していらっしゃるのだろう。話の都合上,ウル○ラマン氏は朝9時に出勤することにさせていただく。
 朝9時に地球に出社したウル○ラマン氏は直ちに業務(怪獣退治)に取り掛かる。
 ウル○ラマン氏が地球にいられるのは3分間のみ。この間に怪獣をやっつけてくれるわけだ。そして,地球での滞在制限時間(3分間)近くになると胸のカラータイマーがピコピコ点滅し,9時3分になるとM78星雲への帰途につく
 そして丸一日が過ぎ,翌日の朝9時,ウル○ラマン氏は地球に出勤,また怪獣退治の3分間が始まるのであった。
 つまり,ウル○ラマン氏が地球にいるのは3分間で,その後23時間57分は地球にいらっしゃらないわけだ。
 と,ここで気がつくのは,「この23時間57分間,地球には怪獣がいないのか?」という疑問である。
 ウル○ラマン氏が3分間の間の獅子奮迅の奮闘で,地球上のすべての怪獣を全滅しているのであればいいが,何しろこの怪獣は6時間ごとに分裂する能力を持っているのである。つまり,ウル○ラマンに退治(怪獣側からすると虐殺だな)されずにすんだ怪獣や,洞窟に隠れていた怪獣がいたら,すぐに分裂して数が増えてしまうのだ。

 頭のいい怪獣だったら,9時3分,ウル○ラマン氏が帰った時点で洞窟から這い出して暴れまわるだろう。
 「ウル○ラマン氏が不在の時は怪獣はおとなしく眠っていて,翌朝,ウル○ラマン氏が地球に来る頃を見計らって暴れだす」なんてのは間抜けな怪獣であり,それは水戸黄門御一行が来たのを見計らって悪事を働く悪代官みたいなものである。頭の良い悪代官は水戸の御老公がいなくなってから悪事を働くもんです。

 と,ここまで来ると,「毎朝,満員電車に揺られてウル○ラマン氏が通勤してくる意味があるの?」という疑問が生まれるはずだ。つまり,

  1.  怪獣が大暴れしているのであれば,ウル○ラマン氏が3分間で目に付いた怪獣を倒したところで意味がない。いくらウル○ラマン氏が超人(名前は「超人」そのものだけど)とはいえ,地球全部の怪獣を倒すことは不可能であり,ウル○ラマン氏が不在の23時間57分間,怪獣は暴れ放題になっている。つまり,大暴れしている怪獣軍団を倒そうとするのであれば,ウル○ラマン氏は地球に長期出張し,24時間,怪獣たちの活動を見張っている必要がある。
     つまり,ウル○ラマン氏の3分間の地球支援活動は一時的な効果しかなく,ほとんど無駄ということになる。

  2.  怪獣が暴れていないのであれば(つまり,人間を含めた他の生物と安定した相互関係を保っている),そもそも怪獣を殺す理由がない。暴れてもいない怪獣をウル○ラマン氏が殺しまくっているとしたら,ワシントン条約に違反し,国連決議を無視した武力行使であり,暴挙と言わざるを得ない。これじゃまるで,大量破壊兵器の証拠がないのに他国を攻撃しているようなものである。


 しかも最近,このウル○ラマン氏が「地球防衛活動」と称して行っている行為について,疑惑が浮上しているのだ。

  1.  ウル○ラマン氏が「この怪獣は地球の生態系を破壊している」と主張している怪獣の中には,本来非常に性格がおとなしく,通常は破壊活動に加わらないものが含まれている。これらの怪獣は,「お前,ちょっと暴れてみろよ」とそそのかす「悪い連中」がいなければ,暴れることはほとんどないことが判明している。

  2.  ウル○ラマン氏の必殺技,スペシウム光線が全く効かない怪獣が発見されている。この種類の怪獣は,スペシウム光線を浴びせられても,平然と増殖できるのである。

  3.  ウル○ラマン氏と怪獣が戦うと,戦いの場となった場所(なぜか東京だったり富士山の近くだったりすることが多い)に住む住民の多数が犠牲になっている。ウル○ラマンに踏み潰された住民は必ず死ぬが,踏みつけられた怪獣は必ずしも死なないので,余計にたちが悪い。

  4.  ウル○ラマンの戦いのために多数の住民が犠牲になってしまい,その後の復旧が遅れてしまったり,時には,全く復旧のめどが立たないことがあり,廃墟と化すことが少なくない。

  5.  総理府が,ウル○ラマン氏の活動(=戦闘)場所となることが多い関東方面の住民に対して直接アンケートをとったところ,「害になっていない怪獣を倒すために,町が破壊されるのは困る」「ウル○ラマン氏は来ないで欲しい」「毎朝,来る必要があるのか。必要な時だけでいいのではないか」という意見が多かった。


 また,ウル○ラマン氏が所用により地球に来られなかった数年間,彼に替わって地球防衛の仕事をしていた実弟のウル○ラマン・タロウ氏(強酸性水による攻撃を得意としていた)ウル○ラマン・レオ氏(水圧をかけて洗浄することで怪獣を倒すのが得意だった)らの活動についても,以下のような疑問の声が上がっている。

  1.  ウル○ラマン・タロウ氏の強酸性水攻撃はさまざまな種類の怪獣を倒すことができるが,氏が倒したと報告した怪獣の大半は,地球に害を及ぼしていない無害な怪獣であった可能性が強い。

  2.  ウル○ラマンレオ氏もウル○ラマン・タロウ氏も,「自分の活動により怪獣の数は有意に減少した」と報告しているが,これは彼らが地球で活動して宇宙に帰った直後の数字であり,その数時間後に測定すると,怪獣の数は彼らの活動前と変化していなかった。
     つまり,両氏が「戦果」として報告している数字は瞬間最大風速のようなものであり,一時的な効果だったと考えられる。

  3.  ウル○ラマン・タロウ氏が戦闘で使用した強酸性水は下水道を腐食する作用を持ち,各地の水利施設を破壊する可能性が指摘されている。

  4.  ウル○ラマン・レオ氏の「水圧作戦」は確かに怪獣を洗い流したことは確かだが,同時に人間の住居や田畑もめちゃくちゃに破壊し,ようやく復活し始めた表土も剥ぎ取ってしまった。


 以上のような理由から,地域住民は地球防衛隊に「地球の防衛になっていないし,それどころか環境を破壊し,住民まで巻き添えにしているウル○ラマン一族の地球での活動停止」を求め,署名を添えた嘆願書を提出しているが,地球防衛隊の首脳部は「ウル○ラマン一族が毎朝,地球を訪れるのは1世紀前に閣議決定されたことであり,昔から慣れ親しんできたことだ。いわば地球の風物詩であり,地球の朝はウル○ラマン一族で始まる。ウル○ラマン一族によって破壊されたものがあるとしてもそれは些少であり,地域住民の努力で復元して欲しい」というコメントを出している。

 なお,帰ってきたウル○ラマン氏は,怪獣をお茶で洗って倒すという必殺技で地球デビューを果たしたが,同氏が戦闘に使用しているお茶では怪獣を倒せない,といわれており,ウル○ラマン一族についての疑惑はさらに深まっている。


 なお,このウル○ラマン,ウル○ラマン一族は,実在のウルトラマン,架空のウルトラマンとは一切無関係です。

(2003/07/17)

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