イソジンゲルを傷に塗るとどうなるのか?


【目 的】
 イソジンゲルも感染創,術後離開創,その他のさまざまな傷の治療に使われている。しかし,果たして傷に塗ると傷が治るのか,治癒を阻害するのかについての実験は過分にして知らない。なければ自分で実験するしかない。


【Material and Method】
 自分の右下腿内側近部部を被検部位とし,強力なガムテープを「張っては剥がし」を40回ほど繰り返して皮膚表装(角質)を破壊した。この部位を二つに分け,近部部をプラスモイストで被覆し,遠位部はイソジンゲルを塗布してガーゼで覆った。実験は3月13日朝から始めた。
 観察は実体顕微鏡Dino-Lite Plusで行い,拡大率は60倍とした。


【結 果】

3月13日:実験前 角層破壊後 境界部分

 実験部位の状態。正常皮膚との移行部を見るとどのくらい破壊されているかがよくわかる。出血は認められないが,ヒリヒリと痛い。なお,境界部分の黒いものは,位置決めのために皮膚に油性マジックで書いた線である。


12時間後:イソジンゲル プラスモイスト

 プラスモイスト貼付部は程なく痛みがなくなり,ぶつかると痛い,という程度になる。一方,イソジンゲルを塗布した部分は直後は痛みはなかったが,10秒後くらいからチクチクと痛くなり,その後しばらく痛みが続いた。顕微鏡で見ると,プラスモイスト貼付部位は滲出液で覆われている感じできらきら光り,イソジンゲル塗布部分は乾燥している。


3月14日:イソジンゲル プラスモイスト

 プラスモイストの部分は触っても痛くなくなったが,イソジンゲルを塗布した部分はさらに痛みがひどくなった。足を引きずるほどではないが,塗布した直後の痛みはかなり強い。


3月15日:イソジンゲル イソジンゲル,その2 イソジンゲル,その3

 イソジンゲルを塗布した部分の痛みがひどくなり,安静にしていても痛くなった。顕微鏡で見ると明らかな潰瘍形成が認められ,これ以上潰瘍が拡大しても困るので,実験を中止した。


3月15日:プラスモイスト

 実験終了時のプラスモイスト貼付部。滲出液はなく潰瘍形成も認めない。触っても全く痛くない。


【わかったこと】
 はじめから予想されたことであるが,イソジンゲルを傷に塗ると非常に痛いし,創の治癒を阻害するどころか,創を破壊して傷を深くすることがわかった。まさに,治療薬でなく破壊薬,破壊毒薬である。こんなものを傷の治療薬として売っているメーカーの良識を疑うしかない。

 皮膚潰瘍の治療薬を販売しているメーカーは今後,社員を一人犠牲にして皮膚に傷を作り,自社で販売している軟膏類を塗布して痛みが出るかどうかの人体実験をすべきだと思う。これは誰にでもできる簡単な実験であり,拒絶する理由はないはずだ。それで痛みがなく傷が深くならなかったら,皮膚潰瘍治療薬として胸を張って販売してください。

(2008/03/17)