【目 的】
市販の尿素10%含有ハンドクリームが正常皮膚に及ぼす影響を調べるため,自分の皮膚を用いて実験した。
【Materials and Method】
病院の売店で購入したハンドクリーム,【ウレノア ホワイト しっとりなめらかクリームN 尿素10%配合】を使用。2008年2月14日から25日までの連続12日間で行った。
自分の右前腕伸側遠位部の皮膚に直径1.5センチ程度の部位を選び,ここにハンドクリームを塗布してフィルム材で密封し,一日に2~4回程度,フィルムを剥がしては塗布部位をよく洗い,その後またクリームを塗布してフィルムで密封を繰り返した。仕事の合間に実験を行ったため,クリーム塗布の回数は一定にできなかった。また,クリームを塗布せず,フィルムで密封しただけの部位をコントロールとし,12日後に比較した。
観察は実体顕微鏡,Dino-Lite Plus,60倍拡大で行った。
【結 果】
実験開始:14日 10:00 | 15日 10:45 | 16日 20:00 |
この時点では,塗布部位の痒みなどの自覚症状はなく,顕微鏡での観察でも皮膚紋理がやや浅くなる程度の変化しか認められなかった。
17日 09:00 | 18日 11:00 | 19日 14:00 |
18日(実験開始から5日目)ころから軽い痒みを覚えるようになり,ハンドクリーム塗布部位のみ白っぽくてかさついてきた。コントロール(フィルム貼付のみ)部位には変化は見られなかった。
19日より小さな赤色のポツポツ(皮膚科学的にはなんていうんだろう?)が数個出現し,痒みが増強してきた。
20日 09:00 | 21日 09:00 | 22日 09:00 |
赤いポツポツは広がり,ハンドクリーム塗布部位のみ痒くなり,22日頃よりクリームを塗るたびに軽い痛みを覚え,クリームを塗るのがちょっと嫌になってきた。フィルム材で密封していなければ,引っ掻いていただろうというくらい痛痒かった。
なお,コントロール部には変化はなかった。
23日 09:00 | 23日 09:00 近くの別部位 | 23日 09:00 コントロール |
23日(実験開始から10日目)の状態。赤いポツポツはハンドクリーム塗布部位全体に広がり,痒みがひどくなってきた。痛みは,クリーム塗布直後が特にひどく,フィルム材で覆うと少し楽になった。
コントロール部位には肉眼的に変化はなく,痒みもなく,顕微鏡写真でも特に変化はなかった。
25日 09:00 | 25日 09:00 デジカメ写真 | 25日 09:00 コントロール |
25日(実験開始から12日目),一部の「赤いポツポツ」の表面が白いもので覆われ,痒みは一段と強くなり,症状は悪化し,塗布直後の痛みもあり,これで事件中止とした。
デジカメ写真でわかるとおり,塗布部位のみに発赤を伴う湿疹(?)ができているのがわかる。なお,黒い油性マジックの点線は,レンズ位置を決めるために描いたものである。
コントロール部位は12日間,フィルム材で密封したが特に変化はなかった。
【わかったこと】
なお,写真をご覧になった皮膚科の先生より,ハンドクリーム塗布部に見られた変化は「水疱」で,病名はimpetigo contagiosaであることを教えていただきました。ありがとうございます。また,以下のようなコメントをいただきました。
impetigo contagiosa では,増殖した Staphylococcus が作る exfoliative toxin が,表皮の接着分子である desmoglein 1 を破壊して subcorneal bulla を作るところから病変が始まると考えられていますが,先生の Dino-Lite は,まさにその初期病変,炎症のない角層下水疱と見られる水疱を見事にとらえています。
(2008/02/27)