なぜ皮膚移植をするのか・・・従来の説明


 形成外科の手術書や熱傷治療の本には皮膚移植術がなぜ必要かについて説明してある。ぶっちゃけ,次のようなことが書いてある。

 皮膚は体表面のバリアであり,それがなくなると水分は蒸発するわ,細菌が創面から入ってくるわ,神経がむき出しになるから痛いわ,といいことは一つもなく,そのままだと下手すると感染症を起こして命取りになりかねない。だから,傷はできるだけ早く皮膚で覆わなければいけない。そのための治療手技が皮膚移植術である。特にV度熱傷(=表皮と真皮のすべてが失われ,皮下脂肪層が露出している深い熱傷)では自然治癒は絶対にないので絶対に皮膚移植が必要である。

 もちろん,湿潤治療について知っていれば上記の「必要な理由」がすべて嘘であることは一目瞭然だろう。V度熱傷であっても自然に治るし,熱傷の痛みは乾燥によるものだからラップやプラスモイストで覆うだけで痛みは軽くなるし,熱傷創だから感染しやすいと言うこともない。つまり,湿潤治療では皮膚移植術は不要な技術・治療手技となる。

 逆に言えば,「消毒して軟膏ガーゼ」という昔ながらの熱傷治療をしている限り,今後も植皮術は必要な手技として生き残る・・・ということになる。


 現時点で,どういう場合に皮膚移植が必要かと言えば,私は次のように考えている。


 ちなみに,熱傷の深さは次のように区別されている。


 ちなみに,こういう超テキトーな絵に対し,「表皮と真皮の間は直線ではない」とか「真皮乳頭が書かれていないからこの絵はおかしい」と文句をつけるのは野暮というものである。

(2011/05/12)

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