移植する皮膚はどこから取るか


 まず分層植皮だが,前述のように手術の目的は「見栄えはどうであれ早く傷を皮膚で覆うこと。広い面積の傷を覆うこと」にある。同時に,皮膚を採取したところにも傷が残るため,外から見える部位では困る。

 以上から、分層皮膚は採取部として背部と大腿が選ばれることが一般的だ。これらの部位は平坦なため,まとまった面積の皮膚が簡単に採取できるし,衣服で隠せるので好都合なのだ。なお,頭皮から分層皮膚を採取することもできる。長所は傷跡が頭髪で隠せるという点だが,坊主頭にしなければ皮膚が採取できないという欠点がある。


 もう一方の全層植皮だが,とにかく縫縮できなければ意味がないため,通常は下腹部が選ばれる。容易に縫縮できるからだ。また、通常手術は仰向けで行われることが多いため、腹部なら皮膚を取るために体位交換しなくてもいいというメリットがある。また,傷が下着に隠せるというのもメリットである。

 しかし,手や指の掌側への植皮の場合は腹部は使いにくい。移植皮膚から毛が生えてくるし,色が黒っぽくなるからだ(これが色素沈着だ)。腹部全層皮膚を手に移植すると,本当にシャレにならないくらい真っ黒になるのである。
 そのため,手掌や指への植皮では「毛が生えてなくて日焼けもしない」部位の皮膚が選ばれる。具体的には足関節や足背,土踏まず(この場合は分層植皮となる)が選ばれることが多い。これらの皮膚は毛が生えず日焼けしない(=移植後に色素沈着しない)からだ。

 また,顔面の?度熱傷に対しては,顔の皮膚と肌理が比較的似ている上腕内側が選ばれることが多く,面積が小さい場合には耳介後面から皮膚を採取することもある。

(2011/05/25)

左側にフレームが表示されない場合は,ここをクリックしてください