真崎先生から次のような興味深い症例の投稿をいただきました。なお,患者さんからも
「従来の消毒・軟膏・ガーゼで,傷が治らずに苦しんでいる患者さんがこれを見て少しでも減って,湿潤療法を受けられるように,自分の写真をネット上で公表してもらってかまいません」と許可を頂いているそうです。
症例は30代女性。
当院初診時は右下腿創部は厚い痂皮を伴い周囲に発赤を伴い痛みあり,局所麻酔下にデブリードマンを施行しアルギン酸+フィルムとしました。
翌日からはプラスモイスト(±白色ワセリン)で自宅で1日1〜2回交換してもらいました。
当院まで車で一時間以上はかかる遠方に在住で,最初は週に1回,その後2週に1回の通院としました。当院初診から約1ヶ月の8月26日の受診時には創部は上皮化していました。受診間隔が2週に1回だったので実際はもっと早く上皮化していたかもしれません。
7月27日 | 7月27日 | 8月3日 |
8月10日 | 8月26日 |
初診時の炎症を伴う厚い痂皮を見ると,ここにどんな軟膏を塗ろうが無駄としか思えませんし,デブリードマン以外の選択肢はないと思うのですが,やはり皮膚科としては軟膏で治すという発想なのでしょう。
自分は皮膚科の知識があまりないのでよくわからないのですが,創部の中心には○○軟膏,周囲には○○軟膏,という発想が理解できません。
被覆材で覆うと,創部の中心も周囲もあまり関係ないと思うのですが・・
皮膚科すべてを否定するつもりはありませんし,皮膚科の軟膏の使い分けが奏効する疾患・病態もあるかと思いますが,この症例のような創傷治療については軟膏・ガーゼはまったく治療にならないのは明白です。
ひとつの診療科が独自の治療体系(皮膚科の軟膏治療のように)をもつだけではなく,他科が違う視点からもっとお互いに意見を交わして正しい方向になるようになればよいと思うのですが。
自分は一応消化器を専門にしていて,現在は胃・大腸カメラはスクリーニングとしても行われていますが,いずれはカプセル内視鏡やCTなどがそれに取って代わる時代が来るかもしれません。あるいはまったく新しい検査の仕方も現れるのかもしれませんが,そのような時代の変化があったときにその変化に寛容でありたいと,今回の症例を見て思いました。
(2011/08/30)