【尿素クリームは保湿剤でなく乾燥剤】
保湿剤,保湿クリームという商品群・薬品群があるが,その大半に保湿効果はなく,むしろ,皮膚に対しては乾燥剤として作用する。以前この問題は,尿素の角質に対する作用という面から取り上げたが,今回は水分子の動きという面から考えてみたい。
例えば,保湿剤と言えば尿素である。以前説明したように尿素は1分子あたり平均6個の水分子と水素結合する。だから「尿素分子が多くの水分子を結合して保持する」というのは正しい。
しかし,水と結合している尿素を皮膚に塗ったとしても,その水は皮膚の上に放出されるわけではないのだ。水を放出させるためには尿素と水の結合(=水素結合)を切り離す必要があり,それには外部からエネルギーを投与しなければいけならず,具体的には加熱をするなどすると尿素は水を放出するわけである。要するに,水分子をたっぷり保持した尿素を皮膚に塗り,その水を皮膚に分けて欲しければ,顔を火で炙るなどしなければいけないのだ。
逆に言えば,水分子を保持した尿素を皮膚に塗っただけでは水分は皮膚に供給されないし,それどころか,尿素に空いている水素結合があれば皮膚の上の水分を奪って尿素と結合するだけのだ。要するに,「皮膚に尿素を塗れば皮膚は乾燥する」のである。
おまけに,尿素外用剤のほとんどすべてはクリーム基剤である。クリーム自体が皮膚の乾燥剤であることはすでに説明したとおりである。クリームの界面活性剤が皮膚表面の皮脂を溶かして除去し,皮脂を失った皮膚は乾燥するからだ。
以上から,尿素は保湿剤ではないし,尿素クリーム(ウレパール(R),ケラチナミン(R)など)は皮膚乾燥剤であると結論づけることができる。
(2011/08/18)