昨年11月,鳴り物入りで始まったのが民主党の事業仕分けでしたが,結局これで生み出せたのは2兆円とか3兆円でしたっけ? 民主党が「無駄を省けば20兆円くらい捻出できる」と豪語した目標には遠く及ばなかったわけです。
これを見てふと思ったのだが,これって「内臓脂肪を外科手術で除去する」のと似ているんじゃないかと思ったんですね。内臓脂肪が10キロあったとしても,実際に手術で摘出できるのはそのうちの一部であり,全部なんてとても取れないのですよ。事業仕分けもこれと同じではないかと・・・。
腹部の手術をするとわかりますが,腸間膜やら大網(omentum majus)にはびっしりと脂肪が付いています。大網なんてまさに「脂網」そのもの,脂の塊です。これを全部とったらお腹スッキリ,体重は一挙に数キロ減るんだろうなと誰しも考えます。しかし,これがうまくいかないのです。
例えば腸間膜の脂肪ですが,これが本当に「脂肪の塊(モーパッサンの小説・・・じゃないって)だけ」だったら問題ないのですが,実際には「動静脈の周りに脂肪が付着したもの」なんですよ。だから,バサバサと脂肪を切除していくと至る所から出血してきます。だから,血管を見ながら血管を傷つけないように脂肪を切除していけばいいのですが,それはとては面倒です。なぜかというと血管はそこらにあるからです。
もちろん,腸間膜動静脈の主要なものさえ傷つけなければ出血したって問題ないんだけど,動脈をバサバサ切っていくとそのうち腸管のsegmental necrosisを起こしちゃうので,やはり動脈本管に近づくとどうしても脂肪切除は難しくなります。
しかも,事業仕分けが対象とした「内臓脂肪」は人体の内臓脂肪どころじゃなかったのです。
事業仕分けが仕分けようとした「内臓」は,腸間膜は上腸間膜も下腸間膜も大網もゴチャゴチャに癒着していて,それどころか腹膜や大腸とも癒着していて,どこからどこまでが大網腸間膜で,上腸間膜と横行結腸の癒着をどこではがせばいいのかもわからない状態だったからです。クリアカットにわけようとしたら,互いにゴチャゴチャに癒合・癒着していたわけです。
だから,ここは余分な脂肪だろうと思って切除すると思わぬ大出血(=地域の反対とか専門家の反対とか)が噴出して止血ができなくなったりしたため,とりあえず一番関係の無さそうなところからちょっとずつ脂肪を切除するしかなかったわけです。
そういうわけで,苦労して脂肪を切除した割には,手術が終わってみると実際に切除できた量は予想より少ない,ということになります。これが昨年の事業仕分け2兆円の本質じゃないかと思います。
(2010/07/05)