以前,『皮膚は考える』(傳田光洋,岩波科学ライブラリー112)という本を紹介した。ここには次のような現象と実験結果が記載されていた。
ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質を角層欠損部に塗布すると治癒が早まるというのは極めて興味深い実験的事実だが,反面,このメカニズムが現実の皮膚損傷に関与していないのも事実である。人為的に神経伝達物質を外部から塗布すれば傷は治るが,これらの物質が体の外から降ってくるという事態は絶対に起こらないからだ。
ではなぜ,このような治癒促進現象が起こるのだろうか。なぜそれは神経伝達物質でなければいけないのだろうか。消化管にある物質や呼吸器にある物質でなく,中枢神経系の神経伝達物質なのはなぜだろうか。これらをどう解釈したらいいのだろうか。
理論的に考えれば,「昔は神経伝達物質は創傷治癒物質として働いていたが,その後,何らかの原因で機能しなくなった。しかし,現在でもその機能は失われずに残っていて,人為的に神経伝達物質を外側から投与すると皮膚表層の創傷治癒が進む」と解釈するしかないはずだ。
だがそれでも,なぜ皮膚が脳の神経伝達物質を作るのか,神経伝達物質がなぜ皮膚の再生をコントロールしているのか,なぜそれらが神経伝達物質であるのかについては一切謎だ。上記の本でもこの謎については全く言及されていないし,インターネットで調べてもこれらについて解明している研究は見つけられなかった。
だが,これらのすべての謎を一元的に,しかも(多分)クリアカットに説明できる仮説を,ひょんなことから思いついた。しかもそれは,「なぜ中枢神経系は外胚葉から作られるのか?」という発生学上の大きな謎も説明できるのだ。おまけに,傷の治療やアトピーなどの皮膚疾患を治療をしていて時々直面する「理論的に説明がつけられない変な現象・変な反応」まで説明できてしまうのだ。
もちろん,トンデモ仮説,大馬鹿仮説である可能性は高いが,少なくとも,これまで誰も説明できなかった(説明しようとする人すらいなかった)現象を一挙にまとめて一元的(?)に説明できるという魅力も持っている。そういうわけで,大恥をかくかもしれないが,このサイトで発表することとした。
とはいっても,私の仮説を説明するためには,その前提として40億年前の地球最初の生命誕生のあたりから話を始めなければ理解してもらえそうにないのである。本一冊分にはならないが,月刊誌一年分の連載くらいの分量にはなりそうだ。
こんな,大風呂敷理論であるが,折を見て少しずつ(?)追加していこうと思うので,ちょっとお付き合いいただけたら幸いである。
とはいっても,なにぶん,仮説の上に仮説を積み重ねるような部分もあるため(オイオイ),仮説そのものが間違っていたら全体が崩壊する可能性もある。だから,論理の間違いや仮定の間違いを見つけた人がいたら,是非,容赦なく指摘していただきたいと思う。そういう「ツッコミ」で潰れてしまうなら,所詮その程度の浅知恵に過ぎないのだから・・・。
(2009/01/16)