以前,《異常犯罪捜査官》という映画を紹介したけど,これはそれと何の関係もない作品のようです。というか,どっちもものすごく出来の悪い三流サイコスリラーでして,両者で違っていたのは,こっちはオッパイシーンがやけに沢山あることくらい。あとは,ナイフで傷つけるシーンがやけに生々しいことくらいかな。ま,いずれにしてもクズ映画殿堂入りです。
えーと,身重の妻をしょうもない事故で亡くしたロス市警の刑事がいて,ちょうどその頃,ラスベガスで「妊娠初期の若い売春婦連続殺人事件」が起きて,それをこの刑事さんが追う,という内容です,と90字で内容を要約できます。それ以上でもそれ以下でもありません。
ちなみに,この映画の監督はデヴィッド・ヘヴナーといって,B級,三流映画ばかり撮っているので,この手の映画を何本か見ていると必ずぶつかる人です。私も幾つか見たことがありますが,全然進歩がありません。むしろ,画像を見ていると「ほら,スタイリッシュだろう? この映画の謎,わかんないだろう? どうだ,怖いだろう」と自己陶酔・自己満足しているだけじゃないかと思いますね。
こんなクズ映画,見る人はよほどの物好きでしょうし,まず見る人はいないと思いますので,最初にネタ晴らしをすると,犯人はその刑事本人です。とはいっても,途中で何度も赤ん坊の泣き声の幻聴が聞こえるシーンがあって,そこに殺しのシーンがかぶさるもんだから,途中で見ているほうには誰が犯人かしっかりと分かっちゃう仕掛けになっていて,意外性も何もありません。
ま,途中で,刑事さんと恋仲になる若くて美乳の美人さんが,ベッドのプレーで刑事さんに手錠をかけて動けなくし,ナイフを手にとって「痛みと快楽は相乗効果を持つのよ」とか言いながら,ちょっとハードな女王様プレーをするシーンがあり,ほんの少しだけ,このお姉さんが犯人かなと思ったりしますが,彼女が他の犠牲者たちを知るすべはないのでこの可能性はすぐに却下されます。
あとは,ひたすら退屈なシーンが連続しますが,見ている人間が飽きてくると,親切にもオッパイシーン,エッチシーンになります。とはいっても,その半分以上は同じ回想シーンですから,やはり途中から飽きてきます。
最後は,刑事の別荘に恋人の女性が呼び出され,途中で異変に気がついた彼女が逃げ出し(刑事の別荘なら,どこに隠れるところがあるか本人が一番知っていそうなものですが,なぜか彼女は逃げられたりします),それを犯人である刑事が追うという,ありがちなシーンがあります。この時点でまだ残り8分くらい残っているのでどうなるかと思っていたら,彼女はあっさりと足を滑らして頭を強打,どうやら意識を失った模様。そこでこの刑事が彼女を部屋に連れて行くのかと思うと,なぜか彼女にナイフを握らせて部屋に戻ります。ま,彼女を犯人に仕立てようという魂胆らしいのですが,それはさすがに無理だろうと・・・。
そしてその別荘に,上司の警部補が踏み込み,お前が犯人だったのか,というお決まりの謎解きシーンがあり,犯人が逃げようとしたために警部補が銃を構え,犯人が銃を持って振り向き,というところで別荘の外のシーンになり,2発の銃声がして映画はお終い。何がどうなったのか,全然わかりません。果たしてあの美乳のお姉さんが死んでいるのか生きているのかすら不明。
何よりわからないのは,犯人が犯行に及んだ動機です。映画では,精神分析(?)の専門家が登場して,彼が殺された売春婦たちに以前インタビューをしたことがあったとか,途中まで犯人扱いされる黒人青年も恋人への暴力でこの専門家にかかっているとか,そういう伏線があるのですが,最後の最後になっても,なぜこの刑事がこういう犯罪を起こしたのか,全く見当がつかないのです。突然気が狂って殺人に及んだ,と説明されたほうがまだ納得が行くような気がします。途中に張られた意味のない伏線が,余計に無理やり感を増します。
そして何より,刑事の妻の死に方がこれまた情けないです。あと2週間で予定日というおなかをしていて,カメラマンらしいのですが,そういうお腹をしていてビルの屋上のいかにも足場の悪そうなところに足をかけて何かの写真を撮っているのですが,案の定,足場が崩れて彼女は転落死。妊娠9カ月でこんなところに登って何を撮影しようとしていたのでしょうか。なぜわざわざ,ビルの屋上から下に壁伝いに降りようとしたのでしょうか。もしかしたら,これこそこの映画最大の謎ではないかと・・・。
(2008/03/20)