以前,《キングスパイダー》という超低予算で手抜きしまくりのモンスター映画を紹介しましたが,なんと生意気にも続編が作られているんですね。もうこの時点で想像を絶するというか,常識の範囲を500光年くらいはみ出しています。こんな映画を作りたいという人がいるというのもすごいし,そのために金を出す人がいるとのもすごいし,その映画を買い取った会社(もちろん,我らがアルバトロスコアだ)もすごいし,そういう映画だとわかってDVDを借りる奴も借りる奴だし,おまけに見終わった後に感想をまとめる奴もいるわけです。世の中広いのです。
前作の隠されたテーマは「ハリウッドのクソ野郎どもに鉄槌!」でしたが,第2作目のテーマは「ラスベガスにも鉄槌!」です。どうやら,映画監督か脚本家がラスベガスで大損こいてしまい,その恨みを映画で晴らそうとしたんだろうね。だから映画の中で,「(ラスベガスの)住民なんて気にせずに爆撃しろ!」なんてセリフが登場するし,ラスベガスの有名なホテルやカジノを意味もなくぶっ壊しているんでしょう。
ええと,前作では巨大な蜘蛛がハリウッドのあたりで暴れまわり,それがアメリカ全体に広がるのを防ぐために小型原子爆弾をライフルで撃って爆破させたんですね。もちろんロスは廃墟と化しています。今回の作品はここから始まります。
全滅したはずの巨大蜘蛛に実は生き残りがいて,その卵かなんかを手に入れた男がラスベガスに到着し,闇の武器市場で売ろうとするんですが,それを阻止しようとする政府組織(?)との(しょぼい)やり取りの中でぶつけてしまって容器を割ってしまい,10センチくらいのお子ちゃま蜘蛛がウジャウジャとカジノの中に逃げ出します。そしてこの蜘蛛はカジノの中で人を襲い始め,合体して巨大化するのです。
あのハリウッドの惨劇はラスベガスでも繰り返されるのか! 人類になすすべはないのか? その時,空から舞い降りたのは巨大ロボット,メカデストラクターだった。軍が極秘裏に作り上げた最終兵器だ。プラズマ砲を武器に巨大な蜘蛛に立ち向かう我らがメカデストラクター! 果たして人類に未来はあるのだろうか,ってなナイスなお話でございます。
まず,第1作目よりは多少は予算がついたらしく,糸で吊るしただけのプラモデルのヘリとか,ダンボールを丸めただけのバズーカ砲とか,おもちゃのゴム人形を動かしただけの蜘蛛とか,そういう極貧シーンはありません。超チープながらもCGを使ったりしていますし,しょぼいけれど爆破シーンはふんだんにあります・・・というか,ミサイルが当たってもいないのに爆発する建物があったりして,最初から最後まで火柱シーンの連続です。お金が多少でも使えるようになって,よほど嬉しかったんでしょうね。
巨大蜘蛛が道路を歩いたり建物によじ登るシーンは全てCGですが,よじ登るスピードが異様に速いです。しかも,メガデストラクターとの対決シーンでは,蜘蛛のくせに後ろ足2本で直立しています。しかもこの直立・対決シーン,迫力ゼロなんですが,やけに長々と続きます。見ているうちに猛烈な睡魔に襲われますが,ここは我慢のしどころです。後でもっと強力な睡魔シーンがあるからです。
主人公とも言うべきメガデストラクターですが,これほど旧式の巨大ロボを見たのは昭和40年頃以来です。一応空は飛べますが,歩く姿は危なっかしいです。重心が低い体系なんで,本来なら安定性があるはずなんですが,なぜか,メガデストラクター君の姿を見ていると,転ばないだろうかとハラハラします。しかも空を飛ぶたびに足から火を噴出すのですが,どう見ても,足が燃えているようにしか見えません。
それを操縦するのが二人の軍人さんです。映画の冒頭,焼け野原となったハリウッドを捜索している二人組みですが,原爆爆発直後というのに防護服も着ていませんが,その後元気なので,原爆の放射線は残留していなかった模様です。さて,メガデストラクターの操縦席,どう見てもどっかの事務室の一角を使ったものらしく,操縦席の後ろに家庭用消火器が備えられています。この消火器が映るたびに気になってしょうがありません。しかも,操縦桿みたいなのがしょぼいのなんのって・・・。これを見ると,鉄人28号は格好よかったなぁ,なんてノスタルジーに浸れます。
この軍人2人の上官の将軍がいて,プラズマ砲を備えた戦車みたいなのを操縦するのですが,この戦車のハンドルはどう見ても安物自転車のものです。しかも,ちょっとプラズマ砲を撃つとバッテリー切れになっちゃうし・・・。
しかもこの将軍様,部下が「このまま蜘蛛を攻撃すると市民に当たります」って言っているのに,「構わん,撃て!」だもんな。しかも,最初の巨大蜘蛛を戦闘機で攻撃するシーンでは,ミサイルが蜘蛛に全く当たりません。ビルを壊すのが目的なんじゃないの,という気がしてきます。映画を作った監督,よほどラスベガスに恨みがあるんだろうなぁ。
そう言えば,巨大蜘蛛はゴジラそっくりの声を出して暴れます。もしかしたら,ゴジラの声をそのまんま使っているのかも・・・。
巨大蜘蛛とメカデストラクターの対決だけじゃ時間が持たないため,ラスベガスのカジノに子蜘蛛が逃げ出した後,延々とカジノの風景がダラダラと続きます。といっても,ポーカーの試合としょうもない2人組の会話しかなく,蜘蛛は排気ダクトの中を動き回っているんだけど誰も襲わず,しかもダクトのシーンは同じものが使いまわされます。
その後,メガデストラクターと蜘蛛の対決でカジノが壊れ,5人くらいが閉じ込められます。普通ならここで,迫る子蜘蛛軍団を避けつつ壊れたビルから脱出を図るシーンになるはずですが,何しろ予算がないため,全員,一つの部屋にずっといるだけで,何の行動も起こそうとしません。それだけでは時間が潰せないため,メガデストラクターを操縦する二人のうちの片方と,カジノでバイトをしている女の子が以前付き合っていて,という設定にして,この軍人君が彼女に携帯電話をかけるシーンが,これまた無意味に続きます。飛行機で携帯電話をかけるのはご法度ですが,さすがはメガデストラクター,飛行中に携帯電話をかけても計器故障は起きません。
そうそう,冒頭の「蜘蛛退治のために原爆で吹き飛ばされたハリウッド」の様子が描かれいて,そこらに,いかにも作り物という感じの頭蓋骨がごろごろ転がっています。これだけの犠牲者を出したというのに,蜘蛛退治には結局失敗したわけですから,目も当てられません。大蜘蛛は退治できても,ウジャウジャいる子蜘蛛が退治できなかったことが作戦失敗の原因なんですが,アメリカ軍はその経験を全く生かしていません。第2作でも同じ過ちを繰り返します。馬鹿だねぇ。
日本語吹き替えですが,最低レベルの下手さではありませんが,プロとは思えないレベルの吹き替えでした。英語版で見たほうがまだマシかもしれません。
他にもまだまだいくらでも突っ込める部分があるのですが,もう飽きちゃったんで,書くの止めようっと。
(2008/03/04)