《死亡特急 IM AUFTRAG DES VATIKANS》 (2005年,ドイツ)


 この映画,あまり知られていないドイツのアクション映画ですが,まあ,そこそこ楽しめます。殺人ウイルスを持ったテロリストが聖地ルルドに向かう列車をハイジャックするが,その列車に偶然乗り合わせた元特殊工作員が・・・という,どこかで聞いたことがある設定でして,まあはっきり言ってスティーブン・セガールの《暴走特急》の二番煎じという感じはしますが,主人公の設定がちょっと面白いので許しちゃいましょう。

 とはいっても,非常ブレーキが壊れて止まれなくなった暴走列車が舞台ということは,利用できる空間がほぼ列車内に限られてしまうため,格闘シーンに使える場所は列車内かその屋根だけだよね,というのは最初から予想がついているし,暴走する列車はどこかに突っ込まなければ止まらないために,どこかの時点で乗客を後ろに移して機関車との連結を切るんだな,というあたりも予想通りです。このあたりは作るほうも辛かったろうな,という気がします。


 映画はテロリストグループが研究所に侵入し,殺人ウイルスを盗み出すシーンから始まります。室内用のヘリコプターなどのデジタルがジェットが楽しいし,その後のカーチェイスシーンも気合いが入っています。最初からド派手な爆破シーンもあり,追跡する警察のパトカーが気持ちいいくらい吹っ飛びます。このあたりは見ていて楽しいです。

 そして,修道院で平穏な生活を送る青年修道士,ラスコ登場。彼はコソボ治安維持部隊に所属する兵士でしたが,あまりにも多くの死を見すぎて嫌になり,この修道院に入って神に祈りを捧げる毎日でした。そして,聖地ルルドに向かう特別列車に先輩修道士2人と乗り込みます。

 かたや,8歳くらいの男の子と彼の母親がいて,この子は特別な血液の病気ですが治療に10万ユーロかかります。しかし,保険外診療のため金は支払えないと保険会社から宣告され,途方にくれています。そしてある教会の計らいで「もう神に祈るしかないのだから」とルルド行きの切符を渡されます。一方,逃走車両の中で僧衣に着替えたテロリストたちも歩いて警察の包囲網を抜け,そのルルド行き列車に乗り込みます。彼らは50万人が集まっているルルドの街でウィルスをばら撒く計画でした。

 そしてテロリストたちは計画を実行し始めますが,ラスコの先輩修道士たちは何か異常が起きていることをいち早く察知し,惨事が起こることを未然に防ぐために動き出しますが,一人の修道士がナイフで刺されてしまいます。そして,彼を探しに来たラスコに虫の息で「私たちはプグヌス・デイ,つまり神の拳という秘密結社だ」と告げ,息を引き取ります。神と教会の脅威に対抗するために十字軍時代に作られたもので,ラスコの暮らす修道院は新たな戦士を養成するためのものだったのです。そして,ラスコはテロリストたちへの反撃を決意しますが,テロリスト側は既にその時,ウイルスの入った試験管を通風孔に設置しようとしていました・・・という内容です。


 まず,主人公のラスコが結構いいです。超ハンサムではありませんが,次世代のアクションスターになれる要素は十分に持っている感じです。格闘シーンも悪くありません。ありきたりのカンフー風アクションといってしまえばそれまでですが,格闘技映画としての水準はクリアしていると思います。そして,「もう人が死ぬのは見たくない」という潜在意識が邪魔をして,敵にとどめを刺せなかったり,最後の一撃が出せなかったりするところがこの手の登場人物としてはちょっと新鮮でしょうか。

 そして,冒頭の超小型ヘリとか,ラスコたちが全乗客にあらかじめワクチンを飲ませるときに使う○○とか,小物の使い方も気が利いています。なるほどね,これなら全員に配れるわけね。

 あと,女優さんは3人登場します。テロリストのお姉さん,警察本部の連絡係(?)のお姉さん,そして少年の母親です。テロリストさんはちょっときつめの美人,連絡係さんはそれより知的な感じの美人でどちらもよろしいです。ただ,母親役がお姉さん系でなく「本物のお母さん」としか見えないため,ちょっと物足りないというかドキドキ感が皆無です。もうちょっと美人さんの方がよろしかったかと・・・。でないと,「私たち,また会えるかしら?」と言われても困っちゃいます。

 問題なのは,テロリストたちが何をしたかったのか,いまいちよくわからない点でしょう。通常ならテロリスト側は,「ウイルスをばら撒かれたくなければ金を出せ」とか「テロリスト仲間を釈放しろ」という要求を出すはずですが,そのどちらでもなく,ルルドの街中でウイルスをばら撒いて皆殺しにするというのが目的なんですね。でも,50万人を殺した後に何をするつもりなのか,誰もいなくなったルルドを占拠するとしてその後どうするのか,全く説明なし。


 というわけで,まだ見たことがなければ,時間つぶしにはいい映画じゃないかと思います。

(2008/02/26)

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