《ジョージ・A・ロメロ presents ゾンビキング Zombie Beach Party
(2003年,カナダ)


 素晴らしい映画のことをA級映画,それより質の落ちる映画をB級映画,そしてその下にC級,D級・・・ときて,最下層のあたりを私は「アルバトロス級」と呼んでいます。もちろん,アルバトロスコア配給の一群のクズ映画を指す言葉です。
 この《ゾンビキング》もアルバトロス配給なんで,普通の映画と比べたら,もちろん「アルバトロス級」のしょうもない映画なんですが,これがなんだか変に爽やかで後をひくんですね。滑りっぱなしのゆる〜いシーンの連続なんですが,そのゆるさが楽しめる境地,つまり「箸が転んでも可笑しい」精神状態に到達できると,これがしみじみと笑える映画に変貌するのです。人間,心の持ちようで,どんなものにも楽しみを見つけられるようになるんだなぁ,と哲学的な気分にすらなってきます。ま,こういう境地に達するためには,掃いて捨てるほどの「アルバトロス級映画」を見る必要がありますけどね・・・。

 この映画の内容を一言で言えば,「ゾンビとプロレス」,あるいは「ゾンビ vs 覆面レスラー」です。映画のレベルで言うと,ゾンビ映画とプロレスが死ぬほど好きな素人の映画愛好会が作った同人映画級ですし,映画の完成度といえば未完成品,作りかけ,作っている途中で飽きちゃって適当に仕上げた・・・ってなところですね。


 ストーリーは・・・と,まとめるのも馬鹿馬鹿しいですが,こんな感じです。

 舞台は,ゾンビたちがそこらに普通にうろついている世界です。プロレス界の英雄覆面レスラー,ユリシーズは海辺の町に向かっていた。恋人の女性覆面レスラー,メルセデスと彼女の弟である覆面レスラー,ブルーセイントと会うためだった。再会を喜ぶ3人だが,一匹狼として活動する覆面レスラーのティキがゾンビ・レスラーを率いて興行しているという噂を聞き,その試合会場に向かうが,ティキはゾンビ同士の八百長試合をプロモートしているようだった。しかし,試合会場で働く女性2人(ゾンビに興味を持っている)がゾンビ輸送用トレーラーに近付き,そこで何者かに襲われて一人が殺されてしまうという事件が起こる。当然,ゾンビを操るティキに容疑がかかる。ティキの無実を信じるユリシーズは「野良ゾンビ」の溜まり場を突き止め,そこからゾンビを操って世界制服をたくらむ覆面レスラーの「ゾンビキング」と,その腹心の部下の覆面レスラー,マーデライザーの仕業であることを突き止める。そして,正義の覆面レスラー達と,悪の覆面レスラー+ゾンビ軍団の全面戦争に発展するのだった・・・ってな内容でございます。


 というわけで,登場人物はゾンビ以外のほとんどは覆面レスラーでして,覆面を被っていない登場人物は,最初の5分くらいでゾンビに殺されちゃう馬鹿ップル(ホラー映画に必須だね)と,途中にゾンビに食いつかれちゃう警察署長さん,そして,巨乳担当,胸の谷間係のお姉さん方くらいです。覆面レスラーさんたちは食事中のマスクをはずしませんし,寝ているシーンでも顔だけは写さないという徹底ぶりです。この覆面へのこだわり,異様に力が入っています。

 ところが,この覆面がどれもマヌケなデザインで力が抜けます。ユリシーズの覆面なんて笑っちゃうような感じだし,悪役の女性覆面レスラーの鼻の部分はまさに「子豚ちゃんの鼻」って感じです。でも,常に覆面を被ってくれているため,登場人物を覚えるのがとても楽です。どれを見ても同じに見える欧米人の俳優さんを見分ける,という苦労が要りません。その意味では,とても親切な映画です。

 そして,映画の1/3以上はプロレスのシーンなんですが,これが変に常識的というか,普通にレスリングしています。CGにも頼らず,ワイヤーアクションすらありません。普通に地味にプロレスをしています。
 この作品に出演しているレスラーさんたちは実は本職のプロレスラーで,アメリカ最大のプロレス団体であるWWE所属(?)とのことです。そういう人たちが,普通のコンクリートの道路の上や公園,木の桟橋の上でレスリングをするのですから,下手なことをしたら間違いなく怪我をするわけでして,そういうことから,「ちょっと手を抜いているけど,一応マジ」なレスリングシーンになったらしいです。そういうわけで,普通のプロレスのリングで行われるプロレスのシーンは普通のプロレスの試合になっていて,これはよくできています。


 B級ゾンビ映画,アルバトロス級映画に欠かせないのが,無意味なオッパイシーンですが,この映画もその伝統をしっかりと受け継いでおります。ユリシーズと親友覆面レスラーがクルージングをするシーンがありますが,船を操縦するのはトップレスのお姉さんですし,ゾンビキングがハイブリッド・ゾンビを作るために拉致したお姉さん達もトップレスですし,ユリシーズの夢に出てきて事件の謎解きを教えてくれるお姉さんもなぜかトップレスでございます。何れも意味ない乳シーンです。とはいっても,この映画の場合,乳を見せるのは貧乳系のお姉さんばかりで,巨乳系のお姉さんは谷間担当・ブラ装着ですので,それ以上は期待しないように。

 それと,この映画は日本語吹き替えでなく,字幕版で見たほうがいいです。日本語吹き替えが異様に下手だからです。特にユリシーズ役の声が台詞棒読みの上に変に甲高く,全然プロレスラーらしくありません。

 主人公のユリシーズはもちろん,ホメロスから取ったものでしょうが,そのためか変に哲学的な台詞が多いです。このユリシーズという名前に対抗するため,それ以外の登場人物の名前も変に凝っていてナイスです。

 ユリシーズの仲良しレスラーが,捕まえられたティキの飼いゾンビを見て,「ゾンビにも潜在意識が残っていて,それを呼び起こせばいいんだ」とかいいながら,ゾンビに渦巻きを見せて催眠術(?)にかけ,大人しくさせて心を交流させるところなんて,本来は突っ込むべきシーンなんですが,その後の,飼いゾンビを森に放って野良ゾンビたちをおびき寄せるなんてシーンがあるため,もうどうでもいい感じです。

 そのほかにも,「女性が半裸で手を縛られる」といういかにもなシーンが何箇所かありますが,どれも,手を縛っているんじゃなくて,手でローブを握っているだけです。あるいは,ユリシーズ(だったかな?)が鎖で縛り付けられるシーンでも,暴れると簡単の鎖が切れたりします。このあたりも,いい仕事をしています。


 ゾンビを倒す手段といえば,一般的には「頭を吹っ飛ばす」,あるいは「首を切り落とす」で,それはこの映画でも踏襲されていますが,何しろこの映画はプロレス映画ですから,武器は一切使いません。あくまでもプロレス技を駆使し,それから頭をねじり取るだけです。このあたりのこだわりもナイスです。

 おまけに,ゾンビキング一味を倒した正義のレスラーたちは,親分を失って途方にくれるゾンビたちに,「お前たちはもう自由なんだ,大丈夫だ!」と活を入れ,それでゾンビたちは正気に戻るんですよ。そして,最後は,覆面レスラーとゾンビ君たちが飲めや歌えのパーティーでどんちゃん騒ぎでお開きとなりますが,動きの鈍いゾンビの叩く太鼓が最後までリズムに乗れなかったりして,変にリアルだったりします。


 それにしても,この映画のタイトルの《ジョージ・A・ロメロ Presents》って何なんでしょうね。もちろんロメロといえば,ゾンビ映画の大御所監督で,ゾンビ映画の決め事の全てを作った人なんですが,実は製作のどこにも関わっていないみたいです。そういえば,ロメロの名前は映画の冒頭に1秒くらい映ってすぐに消えちゃっていましたが,もしかしたら《ジョージ・A・ロメロ Presents?》だったかもしれません。

(2008/02/22)

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