《ハドソンホーク》 (1991年,アメリカ)


 ちょいと古い映画でございます。ブルース・ウィリスが長年温めていたアイディアを実現した映画とのことで,世紀の大泥棒ハドソン・ホークに扮したウィリスが活躍するアドベンチャー映画です。

 ですが,どう贔屓目に見ても面白くありません。これほど「手に汗握らないアドベンチャー映画,ハラハラ感ゼロの怪盗映画」になると見ていて気の毒になるくらいです。ギャグ満載なんですが,あらゆるギャグがすべりまくっていて,ポイントをほぼ完璧にはずしまくっています。1991年という発表年代を考えてもセンスが古すぎるというか,いまさらこういうコメディで受ける時代じゃないよ,ブルースさん,と,なぜ誰も意見しなかったのでしょうか。

 要するにこれは,一番出来の悪い「ルパン三世」を金をかけて実写版にしちゃった感じ,といったら雰囲気がわかってもらえるかな? アニメなら違和感をさほど感じないシーンも,実写にしちゃったもんだから違和感満載になってしまったんですよ。ま,ブルース・ウィルスって本当は,「ダイハード」路線じゃなくて,こういう愚にもつかないコメディーが好きなのかもしれないけどね。


 ストーリーはこんな感じだったかな。

 まず舞台は15世紀。レオナルド・ダ・ヴィンチが貴族の命で馬の彫刻「スフォルツァ」を作っています。ところが天才ダ・ヴィンチは鉛から青銅を作る研究をしていて,なぜか金ができちゃうのです。どうやらプリズムみたいな多面体の組み合わせ方に秘密があったようです。

 そして500年後,稀代の大泥棒,女とカフェ・カプチーノが大好きなハドソン・ホークが刑期を終えて釈放されるシーン。もう足を洗おうと考えているホークに,マフィアのマリオ兄弟がスフォルツァを盗むように脅してきます。嫌々ながらのホークはそれでも,昔からの仲間のトミーに連絡を取ります。しかし,根っから盗みが好きらしく,鼻歌なんぞを歌い,軽やかに踊りながら盗みに成功します。ところが翌日の新聞には,「スフォルツァを盗もうとした盗賊がいたが撃退し,スフォルツァは無事に守られた。明日,オークションに無事に出品される」という記事が載っているのです。

 そこでホークはオークション会場に向かい,そこで,バチカン(スフォルツァの本来の所有者ね)の美術品鑑定人,ちょいと美人のアンナと知り合いになります。そしてスフォルツァは出品され,アンナが鑑定し,贋物のはずなのになぜか「これは本物のスフォルツァです」と言います。これを競り落としたのはメイフラワー夫妻。そしてなぜか大爆発が起こり,スフォルツァは木っ端微塵!

 次は,CIAの連中がホークに接触してくるんだったかな? このCIAの皆さん,揃ってチョコバーみたいなお菓子を胸ポケットに入れているので名札をつけているみたいです。それから何だかいろいろあって,ホークとトミーは眠らされ,気がつくとローマにいて,目の前にはメイフラワー夫妻がいます。そして,今度はダ・ヴィンチのノートをバチカンから盗み出せと命令し,またもや鼻歌なんぞを歌いながら盗み出します。そして,アンナと会うんだったかな? そしてアンナは,ホークの大好きなカプチーノの中に睡眠薬を入れて眠らせ,結局,ダ・ヴィンチのノートはCIAのカプランの手に渡ります。そしてカプランは,ホークに次はダ・ヴィンチのヘリコプターの模型を盗み出せ,と命令します。

 そしてついに,事件の黒幕がメイフラワー夫妻で,ダ・ヴィンチの錬金術のパーツがスフォルツァ,ノート,ヘリコプター模型の中にバラバラに隠されていることが明かされます。絶体絶命のホークをトミーが助け出しますが,今度はアンナが拉致され・・・ってな感じだったかな。


 まず何より,ストーリーを思い出すのに苦労するほど,ストーリーがわかりにくいです。登場人物はそれほど多くないんだけど,メイフラワー夫婦のようにやけに「濃ゆい」人物が多いため,それ以外の登場人物の印象が薄くなり,「あれっ,これって誰だっけ?」というのがいたりするのが原因じゃないでしょうか。

 えーと,ホークはお洒落でスマートな泥棒さん,という設定で,盗みのシーンでは時計を見ずに鼻歌を歌っています。「時間的余裕は4分30秒しかない」,「それなら○○って曲の長さだ」というわけで,時間を測る道具としてちょっと懐かしいヒットナンバーが使われています。この設定,使い方次第で効果的になったはずなんですが,のべつ幕なしに歌っているし,しかも盗みの最中にトミーと踊ったりするんですよ。ウィリスはこれをお洒落だと思っているらしいですが,見ている方に全く伝わらないのが痛いです。。

 そのほかにも,体を張ったアクションシーンが至る所にあって,それはたいてい,コメディーシーンで終わるんだけど(例:ビルの屋上からホークとトミーが落下し,屋根を突き破ったと思ったらマフィアの自宅のソファーに着地,とかね),これがことごとく「笑えねぇ」,なんですよ。同じシーンを「ルパン三世」で見たら違和感ないんだろうけどね。そのほかのギャグにしても,妙にこじんまりしてお行儀いいだけで突き抜けた馬鹿馬鹿しさがないし,下品なギャグの部分(例:メイフラワー夫妻が登場する部分とか)にしても優等生が頭で考えた感じの下品さのため,あってもなくてもいい感じです。要するに,全体にパワフルさが不足しています。

 あと,ダ・ヴィンチのグライダーとか小道具を生かしたシーンはそれなりに良かったんだけど,中心となる部分のつくりが雑すぎるためにそういうシーンがまるで生きてきません。どうせお馬鹿映画なんだから,もっとぶっ飛べばよかったのに・・・。

(2008/01/23)

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