《ウエスト・オブ・ザ・デッド ALL SOULS DAY:DIA DE LOS MUERTOS
(2005年,アメリカ)


 「〜オブ・ザ・デッド」というタイトルの映画の8割はクズである,というのがクズ映画ファンの共通認識となっています(・・・多分)。もともと「ザ・デッド」はゾンビのことなんですが,こういう「オブ・ザ・デッド」もの映画には何故か,ゾンビでないものが多数含まれているのです。今回紹介する《ウエスト・オブ・ザ・ゴッド》はそういう「ゾンビでないクズ映画」の一つで,善良な映画ファンは絶対に見ないほうがいいです。時間と金をドブに捨ててもクズ映画道を極めたい,という方のみご覧下さい。


 この映画のすごいのは原題の《ALL SOULS DAY:DIA DE LOS MUERTOS》を完全に無視して《ウエスト・オブ・ザ・デッド》というタイトルにし,しかもジャケットは完全にカウボーイ姿の不気味な男が描かれ,おまけに「荒野のゾンビ!!」という宣伝文句までつけている点です。配給会社の騙しのテクニックはすごいです。これには誰だって騙されますよ。

 というか,このジャケットと「荒野のゾンビ」でもう既に頭の中にはストーリーが浮かび上がりますよね。「妻子をなぶり殺しにされ,自分自身もだまし討ちで殺されたカウボーイがゾンビの姿で甦って復讐する」ってな物語かな,って思いませんか。もしかしたら,手を前に出した例のポーズのまま馬に乗るんだろうかとか,いろいろ頭に浮かんでくるんですよ。

 ところが,その予想の全てが外れます。カウボーイは登場しないし,馬に乗った保安官は登場するけど活躍するわけじゃないし,ゾンビみたいなのは登場するけど後半だけだし,このジャケットに書かれているのは全て嘘。要するに,嘘で固めたジャケットで売りつけているわけだ。ま,クズ映画にはよくあることですけどね・・・。

 そして,それを上回るのが映画としての出来の低さというか,レベルの低さです。これまで数々見てきたクズ映画の中での最低レベル,キング・オブ・クズ映画というほどひどくはありませんが,一般的鑑賞に耐える代物ではないです。よいこやよい大人は見ないようにしましょう。


 舞台は国境近くのメキシコの鉱山町サンタボニータ。1892年にそこで死の女神を祭る古代遺跡と金銀財宝が見つかります。で,その町の権力者がその財宝を独り占めし,さらに,不死を得ようとします。そのためには女神に生贄が必要だ,ってんで,町のお祭りである「死者の祭り(映画の原題はこれからきているらしい)」を利用して町民を発掘現場に集め,生き埋めにします。


 で,時代が移って1952年。旅行中のアメリカ人一家(夫婦と19歳の娘と6歳くらいの男の子。この男の子はポリオの後遺症で両下肢が不自由)がいて,車はガス欠になりそうだし疲れたし,ということでたまたま通りかかったのがサンタボニータ。で,一つしかないホテルに行くんだけど,誰も出てこない。しょうがないんで奥をのぞくと,不気味な感じのメイドさんと老婆がいて,老婆は一心不乱に呪いの人形みたいなのを作っています(あっ,書き忘れたけど,映画の冒頭はお姉さんが一心不乱に薬草みたいなのをこね回しては人形を作っていましたね)。普通ならここは泊まれないんだな,ホテルと看板を出しているけど今は客を泊めていないんだな,と気がつくところですが,何しろこの夫婦は厚顔無知,傲岸不遜なアメリカ人でメキシコ人を馬鹿にしていますから,勝手にズンズン入っちゃって部屋に泊まります。パパとママは一緒の部屋でイチャイチャ始めますし,姉と弟は同じ部屋に入り,姉は「あんた,覗かないでよ!」とか言ってお風呂に入ります。ホラー映画にお約束のオッパイシーンってやつです。そしてここでギャーという悲鳴が上がり,弟は恐ろしい顔に変身しているため,ホテルの外に逃げるとそこにはゾンビ君たちが・・・。

 ちなみに,パパとママがその後どうなったか不明ですし,弟がポリオで足が不自由という設定も意味不明です。ま,そういう細かいことを気にしたら見られない映画なんで気がつかないフリをしてあげましょう。また,この1952年のエピソードはその後の展開にも絡んできませんので,まったく無駄なシーンです。要するにオッパイ・サービスのためだけに挿入したシーンと思われます。


 そして舞台はいよいよ2005年のサンタボニータ(1892年,1952年,2005年という年数にまったく関連性も説明もないというのがすごいです)。アメリカ青年のジョスと彼の恋人アリシアが登場します。二人はアリシアの両親が住むメキシコに向かう途中ですが,なぜかサンタボニータの町に迷い込み,よそ見運転をしているもんだから葬儀の列に車が突っ込んじゃいます。すると棺桶が落下して蓋が開き,なんと裸の生きたお姉ちゃんが転がり出すんですよ。おまけに彼女は舌が切り取られているんだから,さあ大変。

 普通,こういう状況ならとりあえず車を飛ばして逃げ出すのが常識的反応ですが,さすがはジョス君は正義感に燃えるアメリカ人ですから,「傷ついた女性を放っては置けない」とばかりに,警察署にこの女性を連れて行きます。そして車が故障してしまったため,その日はその町に泊まることになります。もちろん泊まるのはこの町に一つしかないあのホテル。ホテルは例によって無愛想で陰気なメイドさんと不気味チックな老婆がいるだけ。いかにも「泊まっちゃだめだよ,泊まるんじゃないよ」という負のオーラが観客全員にビンビン伝わってきますが,さすがは勇猛果敢で鈍感なアメリカ人です。かまわず泊まっちゃいます。でも,何となく変だな,と思ったらしく,ジョスの親友のタイラーに電話して迎えに来てもらいます。

 で,タイラー君の車が到着するまでとりあえず暇なんで,することといったらエッチくらいしかありません。もちろんこれは,ホラー映画の登場人物の義務,観客へのサービスってやつです。ところがエッチの途中,アリシアには亡霊みたいなのが見えるのです。このあたり,どんどんオカルト映画っぽくなります。


 そんなところにタイラーとその恋人エリカが登場。タイラー君は医学部学生という設定でマッチョタイプ。エリカちゃんはどっかのエリカ様みたいにぶーたれませんが,頭が空っぽのチアリーダーなんだそうです。

 ジョスとアリシアは,このホテルは絶対に変,何か邪悪なものがいるってことに気がつき,さっさと出ようと言いますが,普段は不自由な学生寮住まいのタイラー君ですから,エリカちゃんと二人になれただけで頭の中はピンクモード全開,ジョスの言葉なんて入りません。それどころか,「俺,疲れているから一晩休もうぜ」とか「このホテル,なかなかいいじゃん」といって,宿泊モードに突入。タイラーとエリカ,アホです。この時点で,タイラーとエリカはエッチの最中に殺されちゃう要員だな,と誰しも予測すると思います。私もそう思いました。でも違いました。この映画で唯一,予測が外れた部分です(・・・それ以外の予測は,すべて当たってしまった・・・悲しいことに)

 で,ジョスは警察署に向かい,警察署長(?)が女性の舌を抜いた張本人であることに気がつき,これじゃマズイってんでそこにあった銃を手にホテルに戻りますが,今度はアリシアちゃんの姿が見えません。実は住民たちが拉致したんですね。何でも,ゾンビが生き返るのを阻止するためにメキシコ女性の生贄が必要なんだって。前述の「舌抜かれお姉さん」はその生贄だったんだって。だからその身代わりにアリシアちゃんを拉致したんだって。なるほどな,という説明ですが,何で,アリシアちゃんがメキシコ人だってわかったんでしょうか。


 そこでジョス君,教会みたいなところで裸で縛られているアリシアちゃんを見つけ,すんでのところで助け出してホテルに連れ戻ります。ところがその頃には,復活したゾンビ君たちがウジャウジャ町を歩いています。しかも銃弾はもう残り少なくなっています。

 そこでジョス君,銃弾の補給のため警察署にダッシュ。そこで例の「舌抜かれ女」がゾンビみたいになって跳びかかってきます。部屋にあったライフルで撃っても撃っても襲ってきて太ももを咬まれてしまいます。このシーン,結構派手なワイヤーアクションです。なぜか,このシーンだけは真面目に撮影したようです。

 何とかホテルに足を引きずりながら戻ったジョス君ですが,ソファに倒れこみます。外はゾンビでウジャウジャ,おまけにジョス君はゾンビに咬まれています。そこでアリシアとエリカが「いつゾンビに変身するかもしれない奴と一緒にいるのはいや」,「恋人を捨てろって言うの? 信じられない」なんていう不毛なののしり合いを延々と続けます。ここ,かったるいです。で,外においてあるエリカの車の周りにはゾンビがいないんで,誰かがダッシュして車に乗り込んで動かし,ホテルの入り口につけ,それに乗り込むという,緻密にして大胆にして杜撰な計画を立てます。

 さあ,ここで活躍するエリカ様,じゃなくてエリカちゃん。ホテルの入り口を飛び出しますが,さすがはチアリーダーです。タイラー君の援護射撃を受けながら,鉄棒選手級の大車輪,走り幅跳び選手級の大跳躍,短距離選手級の猛烈ダッシュで車にいとも簡単に到着でき,車のエンジンをかけます。ところがタイラー君,さっさと車に乗ればいいのになぜかまったりモードで動くもんだから,哀れ,ゾンビにムシャムシャと喰われちゃいます。それを見たエリカちゃん,気丈にも車を走らせますが,ホテルに向かわず,喰われかけているタイラーのところに戻って彼の死体を車に乗せようとします。もちろん,そこでゾンビ軍団に襲われて一緒に御昇天。純愛に生きるアホの姿が涙を誘います。それにしてもこのカップルの行動,訳がわかりません。

 一方,ホテルの中のアリシアはいつも無表情のメイドさんに何が起きたのかを問いただします。するとこのメイドさん,それまでの無口は何だったのというくらいベラベラと,113年前のサンタボニータに起きた忌まわしい事件とその後の悲劇を懇切丁寧に教えてくれます。なるほど,そういう真相だったのか・・・ってなことは全然なく,そんなの全部知っているよ,いまさら教えてもらってもなぁ,という程度の真相です。そして最後はアリシアちゃんがホテル最上階の秘密の部屋に入り,そこで見ちゃうのですよ,○○を。そしてゾンビ軍団がウジャウジャとその部屋に押し寄せます。


 というわけで,映画の内容を思い出しながら書いているとなんだかまとまった作品に思えるかもしれませんが,説明過剰の部分と説明不足の部分がゴチャゴチャになっているため,「なんだこりゃ」感が強いです。何より,怨念物なのか,ゾンビ物なのか,復讐物なのか,それもはっきりしません。おまけに,怖いってほどじゃないし,スプラッターシーンもかわいいもんだし,謎解きの要素はあまりに幼稚すぎるし,一体どういう映画にしたかったのか,それが最後までわかりませんでした。

(2007/10/23)

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