《地獄の変異 The CAVE》 (2005年,アメリカ)


 全然期待しないで見たんだけど,これが結構面白かったです。大雑把に言えば,「人跡未踏の洞窟を探検したら,人間が変異した怪物に襲われた」という内容で,「オイオイ,それって《ディセント》と同じじゃん,パクリなんじゃないの,と思われるかもしれませんが,製作も発表もこちらのほうが一年ほど早いです。でも,こっちの方は全然評判にもならず,《ディセント》の方はかなり話題になりました。でも,どちらも見ましたが,どちらがより優れているということもなく,どちらも同じくらいの面白さじゃないかと思います。

 この手のモンスター・ホラー映画としては全然怖くなく,グロいシーンは少ないし,スプラッターシーンは皆無です。要するに,家族で安心して見られますね。それから,タイトルから予想されるようにB級映画かと思うとこれが結構丁寧に作られていて,モンスターの造形もまあこんなものなら合格でしょう(もちろん,エイリアンなどのパクリなんだけどね)。洞窟の中も手抜きなしに作っていて,結構リアルでした。

 それから,最後の最後まで兄弟愛が貫かれているのもよかったし,「こんな奴,さっさと死んじゃえ!」というような悪人が登場しないのもいいです。洞窟というだけでもう極限状態なのですから,それ以外に悪人登場人物との葛藤とか罠とかあったら,もうそれだけで胸焼け状態です。やはりこういう洞窟パニック映画は,どうやってそれから脱出するか,どうやってモンスターを倒すかに的を絞ってくれたシンプルな映画の方が私は好きですね。


 舞台はルーマニアです。1970年代にルーマニアで13世紀の修道院後が発見され,それはテンプル騎士団の根城だったんですね。ところがその騎士団は地中に住む悪魔に滅ぼされたという言い伝えがあり,巨大洞窟が廃墟となった修道院の地下に続いていたんですよ。そこに宝物を探して一攫千金を狙うとレジャーハンターが入り,そこで崩落が起こり,とレジャーハンターたちは姿を消します。

 それから30年後,研究者チームがその洞窟を発見し,洞窟の先が地底湖が広がっていたため,潜水のプロからなる洞窟ダイバーチームを招く,というところから本編が始まります。このチームのメンバーが,沈着冷静なリーダー役のジャック,その弟でちょっと血の気の多いタイラー,男勝りで抜群の登攀技術を持った女性チャーリーなど,一人一人がキャラが立っています。

 で,地底湖に潜るんだけど,その直後に洞窟の入り口が崩落して退路を断たれるのはお約束的展開。そして,正体不明の動物(最初はネズミくらいの大きさ)が襲ってきて,ジャックが咬まれ,それからジャックの様子が少しずつおかしくなっていきます。そして,洞窟内にはかつて姿を消したとレジャーハンターのものと思われる遺留品が発見され,正体不明の動物の組織から,未知の寄生生物が発見されます。出口を求めてさまよう一行は,怪物から襲われるわ,地底湖の滝に流されるわ,水中からも何から襲ってくるわと危機の連続。
 さあ,生きて洞窟から逃げられるのか,ってな作品です。


 とまあ,よくあるパニック映画の定番中の定番的ストーリーですが,音楽の盛り上がり方(怖がらせ方)もツボにはまっていて,しかも静か過ぎず,うるさ過ぎずとサービス精神満点だし,色々な小道具が効いているし,垂直の壁を登攀するシーンも結構本格的です。

 リーダーのジャックは寄生生物が体に入っていることを自覚しつつも,みんなを守ろうと必死になって奮闘しますが,とても男臭くて格好いいです。明らかに彼は,洞窟生活に適応した体に変身しつつあるのですが,弟のタイラーは最後まで兄を信じ,「半洞窟人間」となった兄が能力を駆使してみんなを守ってくれるはずだと皆を説得します(一度失敗するけどさ)。そういうところがいいです。

 それにしても,テンプル騎士団は《ダ・ヴィンチ・コード》他,いろんな小説,映画で大活躍です。テンプル騎士団の修道院跡,というだけで何かありそう,という感じを持たせるのですから,存在感抜群ですね。

(2007/10/16)

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