一応ホラー映画という分類に入る映画だろうが,怖くて見ていられないというより,残虐で痛々しくて見ていられないという怖さである。というか,こんな映画作るなよ,絶対におかしいよ,この監督は。映画作っていなければ犯罪を犯していたぞこいつは・・・という危ない系映画である。
一般的なスプラッター映画はどんなに血がドバドバ出ても,内臓が飛び散ったり首が吹っ飛んだりしても,大袈裟であればあるほど笑えてくるものだ。恐怖と裏返しの笑いがあって,怖くて笑えるというのがホラー映画である。だが,そういう笑いの要素というか,余裕を全く排除し,恐怖と苦痛だけを追及した映画というのもあり,以前紹介した映画で言えば《テキサス・チェーンソー》,《ビヨンド・ザ・リミット》あたりがそれにあたる。特に《ビヨンド・ザ・リミット》は拷問映画としか言いようがなく,人体を破壊するのを目的に作られた鬼畜映画だったが,この《ホステル》もその系統だと思う。
ちなみに監督は《キャビン・フィーバー》のイーライ・ロス,製作はクエンティン・タランティーノだ。タランティーノはやはり危ないなぁ,と思う。
どういう内容かというと,ひたすら刺激(=ドラッグとセックス)を求めてヨーロッパ各地の歓楽街を旅する3人の青年(アメリカ人1人とアイスランド人1人)がいて,アムステルダムのホステルで楽しんでいるんだけど,そこで「チェコのブラティスラバはすごいぞ。アメリカ人もてまくりで,しかも世界中の女の子と楽しめるんだぜ」と聞き,美しい古都に足を踏み入れるわけだ。そして,到着したその晩からロシアやイタリアの女の子とベッドイン。ここは天国か,ってな数日を送るんだけど,まず青年一人が姿を消し,次いでもう一人が姿を消し,そこから恐るべき事実が明らかになる・・・という感じかな。
えーとですね,最初の25分くらいは登場する女性の半分がオッパイ丸出しだし,そこらで交尾しておりいます。ですが,ここらからチラチラと拷問シーンが見え隠れし始め,46分以降はもう拷問シーンの連続である。電動ドリルを突き刺すわ,ワイヤーカッターみたいなやつで指は切り落とすわと,やりたい放題だ。そしてこれがシャレや冗談になっていないのだ。ただひたすら,痛めつけているだけなのだ。
そして加害者側に関する情報がほとんどないため,見ている方は被害者の視点にならざるを得ず,恐怖と苦痛と悲鳴を上げるしかなくなる。おまけに,テーブルに並んでいる拷問道具を見ていているだけで痛いというか,痛みが伝わってくるのだ。
なんでも,監督であるイーライ・ロスはは「1万ドルで拷問殺人ができる」というタイのインターネットサイト広告を見てこの映画のアイデアを得たんだそうだ。人間の好みというか性癖はさまざまだし,「人を痛めつけて殺してみたいもんだなぁ・・・だけど・・・それをやったら死刑なんだよなぁ・・・だけど殺してみたいなぁ・・・金ならいくらでも出すんだけどなぁ・・・」という馬鹿金持ちがいても不思議はないし,ドラッグとセックスしか脳味噌に詰まっていない馬鹿青年が行方不明になっても問題になることは少ないだろうし,まして警察幹部までグルだったら事件にすらないだろうな。しかも舞台は旧東ヨーロッパだし・・・。
こういう鬼畜系の映画なんで,絶対に駄目な人は駄目だろう。私はスプラッター系の映画は大丈夫なんだけど,この映画は好きではないし,もう一度見ることもないだろう。どうやら続編が作られているみたいだけど,よほどのことがない限り見ることはないだろう。。
唯一いいのは,結末で爽快なカタルシスが得られ,その意味では後味がそれほど悪くないこと。この結末がなかったら,この映画を取り上げなかったと思う。
(2007/09/14)