《アウト・オブ・タイム》★★★(2004年,アメリカ)


 元特殊部隊に所属していた男がある事件に巻き込まれて薬剤を打たれ,8時間以内に解毒剤を手に入れないと死んでしまう,というタイム・リミット型サスペンス・アクション映画。とても丁寧に作られているし,タンクローリー炎上爆破墜落シーンとか,最後のヘリコプターとの対決シーンとか,かなりの迫力ですし金も十分にかけていることがわかります。90分ちょっとの映画ですが,最初から最後までハラハラドキドキの連続で飽きさせないし,謎解き部分もまあこれなら十分でしょう。暇つぶしにはちょうどいい感じかな。

 でも,こういうアクション映画ってほかにも腐るほどあるわけで,その多くを見てしまった人間としては,なんだか新鮮味がないなぁというか,どこかで見たことがあるんだよねというか,そういう感じを持ってしまうんですね。おまけに,スティーブン・セガールとかブルース・ウィルスとか,「こういう映画のスペシャリスト」もほかにも沢山いて,多くの映画ファンは彼らの映画をいやというほど見ています。そういう中にウェズリー・スナイプスが割って入ろうとしてもなかなか大変なんですね。この映画を見ると,どうもこのスナイプスさん,ウィルスとかセガールに比べるとあくがないというか,印象が薄いんですよ。こいつならどんな不可能な状況で大丈夫なんだよね,という安心感がないんですね。ここ数年のスナイプスはこのようなB級アクションスター路線を走っているようですが,そうなるためには何かが欠けているんじゃないかと思います・・・少なくともこの映画を見た限りでは。


 で,どういうストーリーかと言うと,主人公は元特殊部隊に所属していたディーン。彼はボスニア紛争にも参加していましたが,そこで親友を助けることができず,それがトラウマになっているようです。そこで,その親友の妹で刑事をしている女性エイミーとレストランで待ち合わせをしていたら,別の人間と間違われて薬物を打たれてしまいます。それは「XE」という特殊薬剤で,身体能力がアップするんだけど,他人の言葉が幻覚を引き起こし,「お前は火に包まれている」と言われると本当に炎に包まれていると思い込んでしまうのです。また,過去の出来事を思い起こさせる言葉を聞くとその途端に過去と現実がゴチャゴチャになってしまいます。そのため,ディーンは尋問を受ける場面で過去に起こった事件(親友が拷問の末に殺された)がフラッシュバックし,現実との見分けが付かなくなって大暴れ。おまけにこの薬剤,解毒剤を打たないと8時間で脳が破壊されてしまい死んでしまうという厄介な奴なんですよ。

 で,わけがわからないままに事件に巻き込まれたディーンはラリッた状態で車が走っている車道に走り出したり,得体の知れない連中に捕まったりするし,一方,彼の恋人であり,捜査をするエイミーの前にはFBIとかCIAが現れて捜査を妨害しようとするし,時間は刻一刻と過ぎていく・・・ってな具合に最後のクライマックスに向かって進んでいくのでありました。


 うーん,こうやってあらすじを思い出して書いていても,記憶に残るシーンがあまりないんですね。前述のようにタンクローリーのカーチェイスが見せ場のひとつでそれなりに迫力がある派手なシーンなのですが,肝心のディーンのアクションがいまいち迫力がありません。元特殊部隊なんだから,もうちょっと派手に立ち回りしてくれてもよかったような気がします。要するに,「歴戦の勇士の元特殊部隊」という設定が見ているほうに具体的に伝わってこないんですね。

 それを補って余りあるのが,ディーンの親友の妹にして恋人のエイミーの活躍です。ディーンより明らかに強くてタフです。FBIがきてもCIAが文句を言ってきても,一歩も引かずに職務を果たそうとして,精神的にもタフです。超美人というほどではありませんが,そういう強さがとても魅力的です。もしかしたら,彼女を主人公にしたほうがよかったんじゃなかったか,という気さえします。

(2007/08/28)

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