すごいタイトルですね。ヴァンパイアと侍ですよ。明らかに「ギター侍(もうテレビから消えちゃいましたが・・・)」よりはインパクトあります。ヴァンパイア侍に匹敵する組み合わせといったら,「チェーンソー侍」とか「人魚姫侍」とか「侍とチョコレート工場」くらいしか思いつきません。そして内容も,このタイトルを裏切らないムチャクチャさです。こういう映画を作り,公開する勇気をもつアルバトロスに感動すら覚えます。
この映画には現在,ある疾患に対する治療効果が認められています。不眠症です。これを見たら,どんな頑固な不眠症患者さんも眠ってしまうはずです。最後まで眠らずに見通すには,超人的な努力が必要になります。とってつけたようなストーリー展開と説明不足のシーンの連続が,集中力を奪い,あなたを夢の世界にいざなってくれるはずです。
一応,400年前の日本と現在のロスが舞台になっているようですが,時代考証なんて全く気にしていません。カリフォルニア・ロールを江戸前寿司と言い張っているような感じです。だから,全てのシーン,全ての小道具にツッコミが入れられるという,ツッコミマニア(そんなのいないってば)には夢のような映画です。異文化の相互理解がいかに難しいかを改めて考えさせたりします・・・ってのは大嘘で,中途半端な知識で適当に作っただけの映画です。
えーと,どんなストーリーだったか,思い出すのが難しいです。ムチャクチャだからです。確か,一番最初は400年前の日本が舞台だったような気がします。武士の娘,シラ(Shira)ってのがいて,ルーマニアから日本に侵入したヴァンパイアに追いかけられるシーンで始まっていたような気がします。シラさんは浴衣姿で逃げています。耳にはきらりとイアリングが光っています。そしてどう見てもこのシラさん,木の実ナナ(私くらいの年齢のおじさんは知ってますよね)にそっくりで,戦国時代の日本人とは思えないバタ臭い顔立ちでございます。「木の実ナナ度」は当社比50%増しです。
このシラさん,ヴァンパイアさんたちに捕まり血を吸われます。普通なら彼女もヴァンパイアになるはずですが,さすがは武士の娘,ヴァンパイアの血(毒?)が全身に回る前にハラキリ自害をするのです。そのため彼女は完全なヴァンパイアにならず,しかも命も助かり,不死身になります(なぜ助かるかって? アルバトロスに聞いてください)。おまけに,不完全ヴァンパイアなんで日光に当たっても大丈夫。ちなみに,彼女の父親の武将(?)は源平合戦の頃の鎧兜に身を固めています。「サムライといえばヨロイさ,キャサリン(・・・そりゃ,誰だ?)」ってなナイスな会話がアメリカの映画館で交わされた様子が目に浮かびます。
でもって,吸血鬼を倒すには刀で切るしかないらしく,彼女は激しい稽古の末,武術の極意を会得します。武術の稽古をする木の実ナナさん,じゃない,シラさんのゆったりした体の動きは太極拳か暗黒舞踏を思わせますが気にしないようにしましょう。そして,古来から伝わる「キタノの書」にヴァンパイアについての預言が書かれてあったり,仙台(センダイ,としっかり発音されている)で作られた伝説の刀(日本刀の形はしていないし,柄やつばの形も変だけど,キャサリンは気にしないのだ)を手に入れ,ヴァンパイア抹殺のために戦うのでありました。
かたやヴァンパイアたちは,日光でも活動できるシラとの間に混血を作り,最強のヴァンパイアになり,地球征服を狙っているのでありました。そしてついに,現代のロスに舞台を移し,シラとその仲間たち,そしてヴァンパイアたちの死闘が始まるのでありますよ。ちなみに,シラを助ける博士はヴァン・ヘルシングといいます。どこかで聞いたことがありますが,あえて思い出さないようにしてあげましょう。
途中で,シラの仲間が膝を痛め,シラが「見せなさい」というシーンがあります。怪我の手当てをしてあげるのかなと思ったら,なぜか強引にエッチシーンに突入。この手の映画に必須のオッパイ・サービスシーンですが,何しろシラさん,おばさん指数が60%ほど入っている木の実ナナさんなんで,別にオッパイを見せてくれなくてもよかったです。ここ,早送りしていい場面です。そうそう,DVDのパッケージには派手な「巨乳くの一忍者」が描かれていますが,こういうお姉さんは全然登場しませんので,期待しないように。
それから,ヴァンパイアたちとの剣戟シーン,レベル低いです。チャンバラごっこをしているようにしか見えず,迫力ゼロです。最後のボスキャラとの対決は「鏡だらけの部屋」に誘い込まれる,という,どっかのカンフー映画そっくりです。そしてよくわからないけど,日光が差し込んでボスキャラ絶命でおしまい。なぜ日光が差し込むようになったのか,映像を見てもよくわかりません。
そういえば,400年前のサムライの名前が「ケンジ」とか「ユウジ」ってのもナイスでした。
これだけですごいのに,まだまだツッコミどころが沢山残っているのです。ツッコミ・マニア必見の映画といえましょう。
(2007/07/25)