《アタック・オブ・ザ・キラー・トマト》(1978年,アメリカ)


 以前から見たいなぁと思っていた伝説のお馬鹿映画がついにDVD化されました。これを見ずしてアホ・カルト映画を語るなかれと語り継がれてきた無茶苦茶映画らしいです。もちろん,速攻でレンタルしてみました。

 で,どうだったかというと,さすがは伝説的アホ・ムービーでした。これほど作り手側の熱意がまったく感じられない映画というのは久しぶりです。筆舌に尽くしがたい脱力っぷりは表現する言葉に困るほどです。このレベルになると,最後まで見続けるのに多大な努力を必要とします。さすがの私も,途中で何度か意識を失ってしまいましたが,何とかがんばって最後まで見通しました。人間,やればできるものです。


 どういう映画かというと,突然トマトが人間を襲いだしちゃったよぉ,殺人トマトに人間はやられてしまうのか,という,それはそれはナイスというか,何でそんなことを思いついて映画にしちゃったんでしょうかというか,そういう内容です。ちなみになぜトマトが変身しちゃったのか,なぜ人間を襲うようになってしまったのかという説明は一切なしです。

 まず何がすごいって,オープニングの音楽がぶっ飛んでます。♪Attaaaaaaack of the Killerrrrrrrr Tomaaaaaatooooos♪ という歌詞で始まるんですが,悲壮感すら漂わせる行進曲調の歌で,一度聞いたら暫く頭の中でしばらくリフレインがかかるほど強烈です。それに,潰されてグシャグシャのトマトの画像が重なります。

 それが終わると,台所で皿かなんかを洗っている主婦が排水口から突然飛び出してきたトマトに襲われます。どうやら最初の犠牲者のようです。警察がやってきますが,「おい,これは血じゃないぞ,トマトジュースだ」なんていうナイスな会話をしています。それを皮切りに,町中にトマトが出没しては人間を襲い始めるのです。ヘリは落ちるし,車のフロントガラスもトマトまみれ,海水浴場にも登場してジョーズさながらに海中から人を襲います。しかし,トマトがどのようにして人を殺しているのかはまったく描写されず,スプラッター系の要素は皆無なので御安心を。

 でもって,大統領だったか大統領補佐官だったかが,トマト対策のために科学者と軍のチームを作ったり,自体を公表するとパニックになると公表をしぶるやつがいたり,新聞社の新人女性記者がトマト事件の真相を探れと命令されたりします。とはいっても,個々のシーンは前後の脈絡なくというか,投げやりでどうでもいいような造りなので,印象が薄いです。


 まず最初の対策がロボットだったかな。ブルースという名前だったような気がしますが,誰が見ても人間そのもの。全然メカじゃありません。おまけに片足が動かせないのです。それなのに,「ブルース,ジャンプしてみろ」なんて命令するもんだから,壁か何かに激突して壊れちゃい,それでお役ごめん。
 そういえば,対策チームが会議する部屋が無茶苦茶狭くて,机の上を乗り越えて自分の席に座るというシーンが何度も繰り返されます。だから何なの,というシーンですが,そこそこ面白かったから許します。

 次に,ディクソンという男を中心として4人の特殊部隊が結成されます。

 サムと言う黒人は変装の達人ですが,なぜか真っ白な付け鼻をつけています。どこが変装なのかわかりません。「トマトに変装して,トマトの基地(?)に潜入する」のが任務で,トマトの気ぐるみで見事にトマトたちと仲良くなり,キャンプファイヤーなんぞをしますが,そのとき,「トマトケチャップはないの?」って言っちゃったもんだから,あえなく正体がばれて殺されます。単なるアホです。

 お次は水泳の達人の女性。元オリンピック選手らしいのですが,なぜか任務は野原でトマトが現れるのを待つこと。で,シリアル(ステロイドという商品名!)を食べて座っていたらトマトが襲ってきてあっけなく絶命。水泳選手でなくてもよかったような気が・・・。

 その次は潜水の名人という男。アクアラングにシュノーケル,足ひれという格好で地べたをペタペタ歩き回ります。そして公園の噴水に潜水した後は出番なし。

 そして,一番登場場面が多いのがパラシュート部隊の男。なぜか日本刀片手に,いかにも邪魔くさそうなパラシュートを常に引きずっています。狙撃犯人を追いかけるときもパラシュートを離しません。「パラシュートを捨てれば追いつけるだろうが! あほちゃうか?」というツッコミが四方八方から入るシーンですが,パラシュート男は懸命に走ります。


 こういうやる気というものを全然感じさせない登場人物たちを尻目に,トマトはますます凶暴化し,巨大化していきます。巨大なトマトはなぜか運動会の玉ころがしかハリボテにしか見えませんが,温かい目で見てあげましょう。「巨大なトマト」と「殺人トマトから逃げ惑う人々」の映像が交互に出ますが,のどかな運動会にしか見えません。手抜きで作ったハリボテ・・トマト軍団が哀れを誘います。

 そしていよいよアメリカ軍が登場し,アメリカの各都市でトマト軍団との市街戦が展開されます。近代兵器(?)をフル装備しているアメリカ軍がトマトに銃弾を雨あられと撃ち込みますが,なぜかまるで効果がありません。当然(?)トマト軍の圧勝,アメリカ軍の惨敗です。もう,人類は凶悪トマトたちの前になすすべがありません。人類の運命は風前の灯です。


 しかし,特殊部隊のリーダー,ディクソンは偶然,トマトたちの弱点を発見します。なんと,アメリカ中でヒット中の「思春期の恋」という,名前を書くのも恥ずかしくなる曲が弱点だったのです。そういえば,それまで何度も映画の中でこの歌が流されていることに気がつくのですが,この歌が下手を通り越して無残なほど歌になっていないのですよ。多分,変声期を過ぎたくらいの男の子が裏声で,猫のしゃっくりみたいな声(何じゃ,そりゃ?)で無伴奏で歌っているんだよ。理由は不明ですが,どうやらトマト軍団はこの歌が弱点なのです(・・・この歌だったら,私も苦手だな)。なんでこんな曲がヒットするんだよ,というツッコミが四方八方から入りまくるシーンです。

 そして生き残った市民を野球場に集めてトマトたちをおびき寄せ,そこで大音量の「思春期の恋」を流すのですよ。そして集まってきたトマト軍団はこの歌声に「萎え〜〜」になってしまい,人間側が反撃開始。動けないトマトを踏み潰し,自由と平和を高らかに宣言するのだよ。

 人間側の大勝利かと思ったそのとき,ディクソンの前に一個の巨大トマト君が立ちはだかるのです。なんと彼は,手作り(としか見えない)のちゃちなヘッドフォン型耳栓をあて(トマトのどこが耳なんだか・・・),「思春期の恋」攻撃を封じたのです。ディクソン君,絶体絶命かと思ったそのとき,彼の手には「思春期の恋」の楽譜があったのです。そして楽譜のオタマジャクシを見たトマト君は「萎え〜〜」となり,あえなく撃退されます。ついに,人類はトマトに勝ったのです。


 そして,トマトとの勝利の立役者,ディクソン君と,新聞社の新人女性記者がお互いに惹かれあっていたことを告白し,「一目見たとき,なんて嫌な奴なんだと思ったけど,もう君なしではいられないのさ〜♪」ってなミュージカル仕立ての腑抜けたデュエットをして抱擁するのだよ。

 しかし,人類に報復を考えている野菜はトマトだけじゃないんだよね。「邪魔なトマト連中はいなくなった。次は俺たちの出番だ」と,ニンジン君たちが畑で立ち上がっていたのだ! 果たして人類はニンジンとの戦争に勝てるだろうか。


 これくらい,とってつけたように筋書きが展開する映画になると,ストーリーをまとめるだけで大変ですよ。だって,展開に前後の脈絡が全然ないんだもの。これをどう理解しろと・・・。

 因みにこの映画,一部の熱狂的な(?)支持を得て,第三部まで作られたそうです。でも,このくらいひどい内容になると,この低レベルな質を維持するのは逆の意味で大変だろうなと思いますね。気合を入れて作らないと,すぐに「普通の映画」になっちゃいますから・・・。

(2007/07/02)

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