《フロム・ダスク ティル・ドーン From Dusk Till Dawn》 (1996年,アメリカ)


 最初に断っておきますが,以下の文章はネタバレしまくりです。ネタバレがいやな人は読まないでね。


 荒唐無稽系馬鹿馬鹿系「アクション映画の皮をかぶったホラー映画」という,おもちゃ箱ひっくり返したような映画です。無茶苦茶な方向に無理矢理展開をねじ曲げていく力技をよしとするか拒否するかで,評価はまっぷたつでしょう。ちなみに私は「馬鹿だね〜。でも面白いから許す!」と喜んだくちです。でも,61分30秒頃からいきなり,アクションからホラーに何の説明もなしに転換するため,事前情報なしにこの映画を見ると呆気にとられるはずです。

 監督はあの《エル・マルアッチ》《デスペラード》のロバート・ロドリゲス,制作は《キル・ビル》のクエンティン・タランティーノ。二人はとっても仲良しで,何でも「よお,ブラザー!」と呼び合うほどの中だとか。ちなみにタランティーノはこの映画に出演していますが,目が変質者系犯罪者っぽくてかなりヤバイ感じです。映画を撮っていなければ,単なる危ないお兄さんです。


 えーとですね,主人公はゲッコー兄弟。兄(Seth Gecho,ジョージ・クルーニー)は銀行強盗をお仕事にしていて服役中,弟(Richard Gecho,クエンティン・タランティーノ)は性犯罪ばかり繰り返しています。そして弟が兄を脱獄させてまた強盗事件を起こし,逃げる最中に警察官を含め16人を銃殺し,メキシコに逃げようと国境の町にやってきて,モーテルに泊まります。

 一方,牧師さんも二人の子ども(高校生くらいの男女)とともにトレーラーハウスに乗ってその街のモーテルにやってきます。奥さんを交通事故で亡くしたばかりで「神の実在」に疑問を持ち,教会の仕事を放棄しています。

 そして,ゲッコー兄弟はこの3人を人質にして,彼らのトレーラーハウスに潜んで検問をかいくぐり,国境を越えてメキシコに入ります。そこで仲間に連絡し,落ち合う場所として砂漠の真ん中にある巨大でいかがわしい酒場,「ティティ・ツイスター(Titty Twister・・・オッパイ・グルグルという意味かな?)」で翌朝会おうと言うことになります。ちなみに,この酒場の営業時間は "from Dusk till Dawn" ,つまり「黄昏から夜明けまで」で,これが映画のタイトルになっています。この酒場,トップレスお姉ちゃんがそこらで踊っているようなお店でございます。

 と,ここまでは銃撃戦を中心とした快調なアクション映画,悪党映画です。ジョージ・クルーニーは「頭は切れるけれど冷酷で怖い」感じがよく出ているし,タランティーノは「こいつ,完全におかしいんじゃない? 危ないよ」という雰囲気です。
 そして酒場では店の女王様の踊りが始まります。オッパイを出したりしませんが,妖艶なフェロモンを放射しまくっています。ちなみにこの女王様,サルマ・ハエクが演じています。《デスペラード》で清楚なヒロインを演じていた美人女優です。


 さあ,このとき,映画が始まって61分くらいです。ここで酒場の用心棒(?)とゲッコー兄弟の乱闘になり,弟の手が血塗れになります。それを見た女王様の口から牙が生え,顔が変形し,ヴァンパイアに変身! そして弟に襲いかかり,首に噛みつきます。恐らく,ほとんどの人はこの瞬間,「何だそりゃ! 別の映画フィルムと間違えているんじゃないか」,と思うはずです。驚天動地とも言えるけれど,反則とも言えます。

 ここから先,トップレスのお姉さんたち,酒場の用心棒たちが皆,ヴァンパイアに変身して客に襲いかかってきます。なんとか酒場の中のヴァンパイアを倒すんだけど,外にはコウモリの大群が集まり,それらがすべてヴァンパイアに変身し,襲ってくるのです。

 酒場の倉庫みたいなところに逃げ込み,何とか奴らを倒す方法はないかという事になり,ゲッコー兄が牧師に「あなたが神を心から信じていれば,木の棒も十字架になるし,水道の水も聖水になる。俺たちが助かるためにはそれしかない」と説得します。果たして,一度は神を信じられなくなった元牧師の祈りが込められた水道水と十字の棒,そして銃とボウガンと木の杭を武器に,彼らはヴァンパイアの群に立ち向かうのだった・・・ってな映画ですね。


 まあこんな感じなんですが,とにかくストーリーの展開のテンポがよく(特に前半),快適です。それとゲッコー兄弟の会話が絶妙です。弟のあまりの異常さを持て余して爆発して殴り倒すシーンなんて,思わず納得。銃撃シーンも迫力で,さすがロドリゲスです。ヴァンパイアへの変身はごく普通のCGで,造形的には,ま,こんなものでしょう。

 また,後半になるに従って主要登場人物がどんどん死んじゃうのも《デスペラード》と同じでです。可哀想なんだけど,見終わった時に不思議な余韻を残すのも共通しています。牧師一家の生き残りが,ゲッコー兄に「連れていって!」と頼むんだけど,それをきっぱりと断って去っていくのもいいし,彼の最後の言葉も格好いいです。


 で,こういう映画なんだから,変なところにツッコミを入れるのも大人気ないけれど,ちょっと許してね。

 最後の方で,ヴァンパイアたちに囲まれ,絶体絶命と言うところで酒場の屋根の穴から光が射し込むところ。ここは本当に,天上からの光で美しいシーンですが,光の方向が滅茶苦茶。太陽の光がこんなに四方八方からはいる訳ないよ。画像的には美しいのはわかるけどさ。

 それと,ヴァンパイア軍団に立ち向かうシーン。いろいろな武器を手に手に持つのですが,その一つが聖水です。なら,その聖水係を先頭にすべきでは? 水がちょっとでもかかったらヴァンパイアは死んじゃうのですから,水鉄砲に入れて放水しちゃえば,ヴァンパイアがいくら多くても勝てたんじゃないでしょうか。これは見ていておかしいと思いましたね。


 と,こんな映画ですから,もしもご覧になる方は,「これは途中からホラー映画,モンスター映画になるんだよ」ということは予め知ってから見た方がいいような気がします。そちらの方がこの映画を楽しめるでしょう。

(2007/06/20)

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