ううむ,つまらない映画だった。あまりにグダグダした内容のため,途中で何度見るのを止めようと思ったことだろうか。後味も悪いし,説明不足の部分が大過ぎる。B級はB級でいいけれど,「なぜそうなのか」という最低限の説明すらない。韓国では大ヒットした映画だったらしいが,本当なんだろうか。
舞台となる漢江(ハンガン)は,ソウル中心部を流れる雄大な川。この河畔で雑貨店(みたいなの)を営むパク一家。おじいちゃんがパクさん,おばあちゃんはいなくて,パクさんの長男のカンドゥとその娘ヒョンソと暮らしています。ちなみに,カンドゥの奥さんは旦那のだらしなさに愛想を尽かして家を飛び出しています。で,パクさんにはもう一人の娘がいて彼女はアーチェリーの選手。もう一人,パクさんの次男がいて,こちらはカンドゥよりしっかりもの。
冒頭,在韓アメリカ軍の研究室かどっかで,薬剤を処理せずに下水に捨てるシーンから始まります。もちろんそれは漢江に流れ込みます。このシーンからもわかるとおり,この映画は「アメリカ軍大嫌い映画」みたいです。
そしてある日,家族連れなどでにぎわっている漢江にいきなり怪物が登場! そして,人々をパクパク食ったあと,ヒョンソちゃんを尻尾に巻き込んでそのまま漢江に飛び込み消えてしまいます。
で,合同葬儀が行われますが,その場にいきなり,黄色いツナギに透明ヘルメットの一団が現れ,「あの怪物に触れた者はいるか。手を挙げて」というとパクさん一家が手を挙げます(この黄色軍団に,「お前らは誰だ! まず名乗れ!」と誰も言わないところが変なんだけど・・・)。するといきなり「ウイルスで汚染されている」と言われて拘禁されます。
そんな時,カンドゥの携帯電話が鳴ります。娘のヒョンソからの「パパ,助けて」という電話です。しかし,すぐに切れてしまいます。かといって,軍も警察も頼りになりません。娘は生きていると訴えても,警察は聞く耳持たず。そこから,娘を助けるためのパクさん一家の戦いの始まるのでありました。
とまぁ,こんな内容だったと思います。
怪物(グエムル)の造形は,ま,こんなものでしょう。長い尻尾のあるカエルの化け物というか,胴体寸詰まりのカメレオンというか,そんな格好をしています。口はカマキリの口みたいで,何かのモンスター映画に出ていたのとほとんど同じです。ちなみにこのモンスターに関してはハリウッドに外注(・・・丸投げともいうか?)して作ってもらったようです。
それはいいとして,そもそもこいつがなぜ出てきたのか,何から変異した怪物なのか,冒頭の化学薬品垂れ流しと関係あるのかないのか,そのあたりの説明は一切ありません。ウソでも適当でもいいから説明するのが筋ってものじゃないでしょうか。
それと,グエムルが他の人間をパクパク食っているのに,なぜヒョンソちゃんだけ喰わずに生きたまま巣穴(みたいな下水道の穴)に持ち帰ったのかが意味不明。確かにこの子が助からなければ映画にならなかったといえばそれまでだけど,助けるなら助けるでいいけれど,なぜ助かったのかは説明すべきでしょう。
こういう怪物が出てくるなら当然,韓国軍の出動だろうと思うんだけど,最初の方の「漢江封鎖」と最後のところに出てくるだけ。途中で出番全くなし。軍の総力を挙げたらこれくらいの怪物,倒しちゃえるはずなんだけどなぁ。かなり不自然です。
冒頭と真ん中あたりで出てくるアメリカ軍の研究者(?)も怪しすぎ。当初,グエムルに触れた人は背中に皮疹ができたりして,いかにもウイルス感染症という感じで,パクさん一家もそれで隔離されるのですが,途中から「ウイルス感染でない」となります。もちろん,ウイルスが見つからなかったからと言う説明があるのですが,それならあの皮疹は何だったのか,という疑問が生じます。接触性皮膚炎とも思ったんだけど,背中は怪物に接触していないし・・・。カンドゥさんが背中を痒がるシーンがあったけど,あれは一体何だったんでしょうか。このあたりも一切説明なし。
ちなみに,冒頭のシーンでもわかるとおり,この映画は「反米軍」ガチガチです。ハリウッドにグエムルを作ってもらいながら反米映画にしちゃうってのも,なかなかのもんですね。
最後のヒョンソちゃんの運命もなぁ・・・。この映画を見た人,この結末に納得しました? 代わりの子供がいるから,ってこと? 私はこの結末,大嫌いです。
あるいは,パクさんの次男が携帯電話の通話記録を先輩に調べてもらい,ヒョンソちゃんの居場所を突き止める部分も,なぜあれで,次男君が逃げられるのかも,ちょっと都合よすぎ。あれで逃げられるとしたら,この会社の社員は運動能力が低すぎます。
それと,冒頭からグエムルが登場し,ヒョンソちゃんをさらって行くまではすごく快調なテンポなんだけど,その後のテンポが悪すぎます。一家の生活とか,隔離された施設での様子とかが長すぎますて,緊張感が殺がれます。ああいうところを切りつめて,80分映画にすべきでしたね。
(2007/05/31)