アルバトロスの映画にしてはかなりまともに作られています,というか,普通に面白い部類です。ただし,サメパニック映画だと思って見るともの足りません。登場するサメはウジャウジャいますが,実はそんなに人間をパクついたりしないからです。
全体で80分ちょっとの映画なんですが,冒頭に「暇と金が有り余っているのよ」的セレブ妻4人を食べ,その後はしばらく登場しないため「この映画はもうサメが出てこないの?」と心配になってくる22分頃に2人を食べてサメ映画だよと安心させ,その後はまたおとなしくしていて,42分頃にやっと数人食べて・・・という具合で,最初の50分はサメ君のお食事シーンはあまりありません。ウジャウジャ押し寄せてくるのは65分過ぎ頃だっただったかな。この数は笑っちゃうほど多いです。サメ映画史上,もっとも数が多いかも知れません。ヤケクソな感じです。
じゃあ,それまでの間,何のシーンかというと,フロリダのシーガルビーチでのピチピチ・ビキニ姉ちゃんと,彼女たちをものにしようと狙う頭の軽そうなお兄ちゃんたちの海岸でのナンパシーンと,パーティーで羽目はずしちゃいましょうと言うシーンが延々と連続します。主人公はダニエルちゃんという可愛い女子高生なんですが,「春休みなんだから楽しまなきゃダメよ」と彼女の友達に誘われてこのビーチにやってきたんですね。
女の子たちは最初から「格好いい彼でも見つけましょう」ってなノリだし,大学生の兄ちゃんたちは「誰でもいいからやっちゃおうぜ」というスタンスだし,ま,モンスター映画にはこういう連中は欠かせない登場人物ですが,こういう連中ばかりというのも何だかなぁ。でも,登場する女の子がどれも可愛いくて高低差のあるビキニ姿だし,男の子は引き締まったイルカみたいな体型のイケメン揃いだし,そっち方面の目的で見ても楽しめます。
なぜそのビーチでサメがウヨウヨ集まってきたかについては,きちんと説明されていて,この手の映画としてはかなり良心的。人工珊瑚礁を埋めると熱帯魚が増えるけどサメも寄ってくる,というのはその通りだろうし,さらに「あのオッサン」もサメ大群をおびき寄せていた訳ね。こいつがおびき寄せるに至った理由もよくわかるぞ。
それと,ダニエルちゃんがサメ君たちに囲まれたときの対処法はちょっとびっくり。今回のサメはイタチザメ(獰猛なことで知られているサメですね)なんですが,それに対しては「動かない,刺激しない」というのが有効だそうです。動かないとエサだと認識せず,食い付いてこないらしいです。もしも皆さんがイタチザメに囲まれたら,是非,思い出して下さい。ちなみに,本物のイタチザメは群をつくって行動しないと映画内で説明されていました。
それと,ダニエルちゃんと彼女の兄,そしてヒーロー役のシェーンが,人々を襲おうと群がる大量のサメを船におびき寄せてビーチの人たちを助けたまではよかったけど,そこで船が動かなくなって鮫が船を襲ってくる,というのも定番中の定番的展開。元祖ジョーズの場合は高圧電線を咬ませるとか,水素ボンベをくわえさせて銃で撃って爆発させるとか,そういう派手な終わり方をしましたが,この映画はそういう安易な解決法は選びません。ダニエルの兄が研究している防御法でサメたちを追い払うのですが,ここでも上述の「イタチザメがいても動かないこと,おとなしくしていること」という知識が生かされます。
確かに,この映画に登場するサメはモンスターではない普通のサメですし,たまたま人間がおびき寄せて大群になっているだけですから,このような「寄ってきたら追っ払うけど,殺したりはしない」というのが,生態系的には一番正しいのかも知れません。サメだって生きているんだ,友達なんだ,殺せばいいってもんじゃないんだぜ,というメッセージ性すら感じさせます。
というわけで,この映画で一番恐ろしい存在は,ダニエルちゃんをものにしようとクスリを盛るイケメン兄ちゃんでした。
(2007/04/05)