《ニュースの天才》 (2003年,アメリカ)


 面白い映画と面白くない映画に二分すれば,多分この映画は面白い映画に入るんだろうけど,「この事件に全米が震撼した」と宣伝されている割には,大したことがない映画だったな。捏造記事を書いた若い記者がすぐにばれるような嘘で誤魔化そうとしてさらに嘘の上塗りをし,動かぬ事実を突き付けられると逆上する姿はとても後味が悪く,途中から気の毒になってきた。

 かといって,騙しの華麗なテクニックが楽しめるわけでもなく,むしろその手口は杜撰きわまりないもので,天才詐欺師というほどでもなく,詐欺師を主人公に据えた映画としても極めて小粒で面白くない。

 要するに,心に残るものが何一つないのである。空虚な映画でしかないのだ。なぜこの映画を作ったのか,そこが全然伝わってこなかった。


 New Republic Magazineという一流雑誌の若き花形記者が主人公である。この雑誌は,大統領専用機に置かれている唯一の雑誌であり,権威ある雑誌なのである。その記者の一人がスティーブンだった。彼は大きな政治記事ではなく,ちょっとした面白い記事を独自のルートで発見しては記事にして,それが話題になっていた。事件に関わった人物の人間くさいエピソードを加えることで彼の記事にはユーモアと人間味があり,それが読者の評判を呼んだ。

 ある時彼は,天才ハッカー少年が大手のコンピュータ・ソフト会社のサーバに侵入し,それがハッカー仲間間で話題になったが,侵入されたソフト会社その天才少年を社員として高給で雇い入れた,という記事を書いた。「少年はペントハウスとプレーボーイ誌の生涯定期購読も雇用条件として提示した」というお得意の小ネタもあり,それが雑誌に掲載された。記事の元になった情報はスティーブンの取材ノートがあるだけだった。

 しかし,その記事があるコンピュータ雑誌の記者の目に留まった。シリコンバレーにある会社の名前ならほとんど知っているのに,その「大手ソフト会社」の名前は初耳だったからだ。おまけに,ハッカー連中に連絡しても,そういう事件はなかったというし,そういう天才少年の名前も知らないと言うし,全米ハッカー協会という組織もないという。

 そして,スティーブンの上司である編集長にコンピュータ雑誌編集長から連絡が入る。「彼の記事に登場する固有名詞は,全く存在しないか,連絡できない」という電話だ。やがて,スティーブンの記事の嘘が次第に明らかにされていった。


 とまぁ,こんな映画である。確かに,雑誌記者の捏造記事は大問題だが,この映画に登場する捏造記事はどれもこれもスケールが小さいというか,微笑ましい感じのものばかりだ。少なくとも,小泉政権下で起きた「民主党 捏造メール事件」より小粒である。このあたりで既に「スケールの小さな映画だなぁ」感が漂ってくる。これじゃまるで「発掘あるある捏造大事典」と同じレベルである。いくら超有名雑誌を舞台にした捏造記事であっても,あえてそれを糾弾するために映画にするほどの事件ではないのである。

 少なくとも「あるある」のような健康被害に結びつくような捏造に比べたら,スティーブンの捏造は実害がない嘘であって,「オレさ,口裂け女に会って追いかけられたことがあるんだ」程度の嘘である。この程度で「アメリカが震撼」っていわれてもなぁ。

(2007/03/23)

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