《プレスリーVSミイラ男 BUBBA HO-TEP》 (2002年,アメリカ)


 タイトルを見た瞬間,内容なんてどうでもいいから借りて見てみようと思った映画だ。だって,プレスリーといえばロックの帝王エルヴィスですぜ。そのプレスリーがミイラ男と戦うんだぜ。ステージアクションそのままで戦うんだろうか,それとも声で倒すんだろうか,それとも腰の振りで圧倒しちゃうんだろうか。それともタイトルは全く嘘で,エルヴィスとミイラ男は出てくるけれど全く対決しない,なんて展開もありだよね。どっちにしてもしょうもないお馬鹿映画なんだろうけど,見る前からこんなに想像力を掻きたてるイトルは滅多にございません。クズ映画愛好家としては絶対にはずせないタイトルです。


 内容ですか? 絵に描いたような低予算映画(登場人物が少ない,舞台が老人ホームと原っぱの2箇所しかない,など),展開はまったりユルユル,プレスリーとミイラ男の対決シーンはありますがとてもショボイぞ。

 それなのにムチャクチャ感動的なのだ。ラストシーンが長く心に残る。すっかり爺様になってしまったプレスリーが,老人ホームのほかの仲間たちを救うために死力を尽くしてミイラ男とバトルを繰り広げるのだよ。格闘シーンがショボくたっていいじゃないですか,だって爺様なんだもの。歩行器なしには歩けない爺様がミイラ男に立ち向かうだけで涙モノだ。生きる目的あっての命だ,生きる目的を失ってしまったら生ける屍と同じだ,なんていうプレスリーの台詞がとっても格好いいぞ。

 しかも,プレスリーのほかにジョン・F・ケネディーもローンレンジャーも実は生きていて,(それなりに)活躍するのだ。もちろん,皆様,老人ホームに暮らすよぼよぼの爺様である。おまけにミイラ男は4,000歳の超々高齢者(?)だ。考えてみれば,これほど登場人物の平均年齢が高い映画ってのは滅多にないんじゃないだろうか。


 なお,個人的な趣味というか勢いで★★★★という高評価にしてしまいましたが,もちろん常識的には★★程度の映画です。見るか見ないかは,以下の文章を読んでよく考えてから決めて下されたく御座そうろう。


 映画のあらすじは次の通り。

 エジプトで "BUBBA HO-TEP" 王のミイラが発掘され,アメリカ各地で公開されたが何者かが盗み出してしまう。そしてミイラを積んだトラックはテキサス州の橋の上で事故を起こし,そのショックでミイラは生き返ってしまう。

 一方,その橋の近くには老人ホームがあり,なんとロックの帝王,エルヴィス・プレスリーが暮らしていた。人気の絶頂期にあったエルヴィスはスターであり続けることに疲れ果て,自分のソックリさんに「自分はソックリさんとして暮らすから,君は本物のエルヴィスとして活動してくれ」と持ちかけたのだ。現代版『王子とこじき』である。その後,本物のソックリさんは(多分,ドーナツの食べ過ぎで)死ぬが,ソックリさんとして活動する本物エルヴィスも舞台上の事故で寝たきりとなり,この老人ホームで暮らしていた。歩行器がなければ歩けず,かつてのエルヴィスの面影もなかった。

 しかし,あの「ミイラ積みトラック事故」以来,毎日のように死人が出るようになる。そしてついにエルヴィスの部屋に10センチ大のゴキブリが出現し,エルヴィスを襲ってくる。

 死者が増えた原因を突き止めたのは,同じ老人ホームに暮らす黒人で,彼は「実は自分はジョン・F・ケネディーだ」と打ち明ける。大統領だったケネディーは命が狙われていて,彼の命を救うために皮膚の色を変えて黒人に変身したのだ。つまり,ダラスで殺されたのはソックリさんだったのだ。すっかり老人になった黒人ケネディーは,「蘇ったミイラ男は生きている人間の魂を唯一の食べ物にしている。それで老人ホームに忍び込んでは老人の魂を食っているのだろう。魂を食われた老人は死ぬが,老人が死ぬのは当たり前だから不審に思われないのだ」と説明する。

 そして,ミイラ男から老人ホームの仲間たちを守るため,プレスリーとケネディーはタッグを組んで立ち上がる(・・・歩行器と電動車椅子だけど)。現役時代の純白のステージ衣装とスーツに身を包んだ二人はミイラ男が潜む橋に近づくが,不意にミイラ男が襲ってくる・・・ってな素敵な映画だ。


 と,このようにまとめると,いかにもしっかりした映画のように思われるかもしれないが,映画だけ見るとすごくわかりにくいぞ。説明不足の部分が多く,ミイラが生き返る過程もなんだかよくわからないし,それ以外の部分の説明も超テキトー。それでいて,余分なところでどうでもいいところが長かったりするし,シモネタも下品だし・・・という映画である。
 おまけに,一度は炎に包まれたミイラ男が再び襲ってくるシーンがあり,普通なら炎以外の方法で倒すのが定石のはずなのに,なぜか同じ方法で倒せちゃうし,ミイラ男という割にはあまり強くなかったりする。
 そうそう,あのゴキブリは結局何だったのか,最後までしっかりした説明はなかったよな。


 ミイラ男の動きはプレスリーたちに合わせたかのようにスローです。でも,ミイラ男が食って栄養(?)にしている魂は,何しろ「限りなく天国に近い魂」ですから栄養(?)不足なのが原因なのだ。そういうミイラ男とプレスリーの格闘シーン,何かに似ているなと思ったら,晩年のジャイアント馬場,あるいはドリーファンク・ジュニアの引退試合そのままなのである。

 そういうプレスリーがミイラ男を倒す時に,勝負衣装はこれさ,と現役時代に来ていた純白キラキラの舞台衣装に身を包んで立ち向かう(もちろん,両手は歩行器を握っているけど)のだが,それがすごく格好いいのだ。そして熱いロック魂が炸裂する。
 そして,ミイラ男を倒したものの虫の息のプレスリーは,仲間たちの魂を救うことができ,人生の最後に生きる意味が見出せたという満足感に包まれ,夜空を見上げるが,星たちが集まって感謝の言葉を伝えている。それを見たプレスリーは「Thank You!」と呟く。格好いいぞ。プレスリー,あんたは最後まで帝王だ。

 他にも,ミイラ男に襲われたローンレンジャーは最後まで(おもちゃの)拳銃を離さなかったりして,これも(ヨボヨボだけど)格好いいのだ。あるいは,プレスリーがケネディーに「最後に教えて欲しいんだが,マリリン・モンローはどうだったんだい?」,「それは国家機密だからいえないが,一言答えよう。ワォー!ってやつだった」なんて答えるところなんて大笑いだった。
 あるいはプレスリーがケネディーに「老人ホームが何をしてくれるかを問うのでなく,俺たちが老人ホームのために何ができるかだ」って言い,それに対してケネディーが「俺のセリフをパクルんじゃねえ!」って文句を言うシーンもおかしかったな。


 ま,このモンローの部分にしてもプレスリーの言葉にしても,ケネディーの部屋に張ってあるオズワルドとジャック・ルビーの写真などは,私の年代の人間なら覚えているけれど,ケネディーをあまり知らない人にはチンプンカンプンだろうな。

 そういうあたりの前提知識をそれなりに持っていて,ユルユル・グダグダの展開やゆる〜い格闘シーンも笑って許せる広い心を持っている人にのみ,オススメ映画だ。それ以外の人は絶対に見ちゃ駄目だぞ。


 ちなみに,何と「エルヴィス・プレスリーVS吸血鬼」という続編まで作られているらしい。アメリカ人にとってプレスリーは不滅なのだ。こっちもレンタルDVDになったら見ようっと。

(2008/06/25)

Top Page