《遺体安置室〜死霊のめざめ〜》 (2005年,アメリカ)


 ホラー映画の傑作といわれる《悪魔のいけにえ》,《ポルターガイスト》を作ったとビー・フーバー監督の作品だけあって,ホラー映画の王道を行っている作り方だし,気色悪い場面はそれなりに気色悪いです。ですが,いまいち怖くないというか,予定調和的というか,意外性がありません。ま,それだけ,私が「ホラー映画慣れ」しちゃったんでしょうけど・・・。


 とりあえず,ストーリーはというと・・・。

 父親を亡くしたばかりの一家(母親レスリー,お兄ちゃんのジョナサン,妹のエイミー)がカリフォルニアの田舎町に引っ越してきます。葬儀屋さんの勉強をした母親が,その町で以前葬儀屋をしていた古い屋敷を買い取り,そこで葬儀屋を開くためです。兄のジョナサンはコーヒーショップでアルバイトが決まり,そこで,美少女のリズと仲良くなるんですが,彼女からその屋敷にまつわる話を聞かされます。その屋敷では昔,ボビーという男の子が生まれたものの,生まれつき顔の先天異常があって,口が大きく裂けていたのですね。そこで両親は彼を一つの部屋に閉じ込めて虐待を繰り返していたのですが,ボビーはある日,突然姿を消します。そして,1年後,その両親が虐殺されるという事件が起こり,その町では,ボビーは今でも生きていて,その地下室かどこかにひっそりと暮らしている,という言い伝えがあったんですね。

 一方,葬儀屋を始めたものの,まだ仕事に慣れない母親は,頚静脈からの脱血操作を失敗したらしく,血液が排水溝に流れてしまいますが,その血液で地下の死体が次々と蘇り,ジョナサン,エイミー,リズたちを襲ってくる・・・という感じの映画です。


 映画が始まってから30分くらいまでは非常に丁寧に作っていて,この手のホラー映画によくある安っぽさがありません。登場人物たちの過去や性格を的確に紹介する手際は,正統派映画に匹敵する(といったら褒めすぎだけど)かもしれません。また,最初のほうは事件は全く起きないんだけど,屋敷全体の陰鬱さはそれだけで結構怖く,その後の展開を十分期待させてくれます。

 しかしそれからがいけません。やたらと死者が蘇るのはいいとしても,その動きはゾンビのパクリだし,口から黒い液体(ゲロ?)を吐くのも,その黒い液体を飲むと感染(?)するのも,お約束といっていいでしょう。珍しくもなんともありません。もちろん,怖さも中途半端です。
 というか,むしろ一番怖いのは,黒い液体を顔に吐きかけられて変貌する母親の形相ですね。別に怖い顔に変身するわけでありませんが,行動が怖いんですね。特にあの会食のシーンは変に怖いです。
 こういう場合,主人公の親子3人は最後まで生き延びるのがホラー映画の定石ですから,母親がしつこく子供たちを追ってくる姿はかなり意外でしょう。しかも,最後までこの母親は元気(?)だし・・・。

 それと,なぜその排水溝に血液が流れただけで死霊たちが生き返るのかもよくわからないし,その死霊たちとボビーが生きている人間を投げ込む「井戸」も何なのか,最後まで碌な説明はありません。つまり,何のためにこいつらが蘇ってくるのか,という最も重要な部分の説明がないままに,話だけがどんどん進んでしまうため,「だからなんなんだよ,こいつらは?」感ばかりが強く,消化不良のまま終わってしまいます。


 ボビーも全然怖くありません。すごい特殊メークでもするのかと思ったら,未治療片側唇裂でした。しかも,捕まえたエイミーからキャンディを貰って喜んだりしています。もしかしたらこのボビーは「顔は怖いけど心は優しいよい人キャラで,キャンディをくれたエイミーを最後まで守るんだろうな」と思っていたら,実はそっちの方向にも行かず,最後の方でエイミーを捕まえて井戸に落とそうとします。ボビー君が何を考えているのか,全くわかりません。ボビー君はこの物語でかなり重要な登場人物だとばかり思っていたら,実は小物でした。このあたりも「がっかり感」を強めます。

 そうそう,死霊君たちの弱点は普通の「塩」なんですよ。塩をかけちゃうと消えちゃいます。君たち,ナメクジか? というわけで,ジョナサンとリズは食塩の容器を手にとって妹を助けようとする,という展開になります。そして最後の「井戸」のところで塩を振りまいて妹を助け,井戸の中にも塩を投げ入れます。オイオイ,全部入れちゃっていいの,死霊君たちの生き残り(・・・生きてないけど・・・)が襲って来たらどうするんだよ,と誰しも心配するような塩の大盤振舞をするんですよ。すると,やはりというか何と言うか,最後に○○になっちゃうんだよ。私は,リズが最後まで大事に塩を取っていて,という方向に行くのかと思っていましたが,そうでもありません。

あるいは,最初の方でマリア像のところで見つかった首飾りが実は岩塩でできていて,それでエイミーが・・・なんて伏線になるのかと思ったら,そういうのもなし。あのネックレスはてっきり,最後の伏線だと思ったんだけどなぁ。

 その他にも,色々使えそうな小道具やら伏線になりそうなシーンやらがありましたが,全て私の深読みでした。リズの男友達(といってもゲイだけどね)もあそこだけしか登場シーンがないのも,なんだかもったいないなぁ。もうちょっと活躍させてもいいと思うんだけどなぁ。


 そういえば,リズちゃんはいかにも,って感じの美少女です。彼女の無駄な色気シーンがなかったのがこの映画唯一の美点かもしれません。

(2008/06/0)

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