《サイレント・ワールド セカンド・アイスエイジ Absolute Zero》 (2006年,アメリカ)


 地球の磁極が反対になっちゃって,第2氷河期が来て,零下273℃,つまり絶対零度になっちゃった,という中学生程度の科学知識もない連中が作ったクズSF映画でございます。知識もない,それなのに頭も使っていない,俳優にも金をかけない,CGにも金をかけない・・・という時間潰しにすらないらない貧乏大馬鹿映画。何でこんな映画を作っちゃったんでしょうか。

 ちなみに,こんな宣伝文句が踊っています。

人類は再び絶対絶命の危機を迎える!!零下273度の“第2氷河期”による人類滅亡の危機を描いたSFパニック。世界各地で観測される異常気象の謎を解くため、氷河危機が迫る南極基地を訪れた気象学者のデビッド・コーツマン。彼はそこで“第2氷河期”を予言した古代人のメッセージを発見する。

 そしてDVDのジャケットも素敵です。これに騙されちゃいけません。


 で,どんな映画かというとですね,主人公は気象学者のデヴィッド。その頃地球は異常気象に見舞われていて,南極基地は温暖化で半袖でバーベキューをしているし,一方,アメリカ各地は異常気象で,リゾート海岸ではいきなり雪が降ってビキニのお姉さんが震えているし,渡り鳥は季節を間違えて北に向かっています(・・・と,ニューヨークのお天気お姉さんがテレビで話しています)。そこで彼は南極に向かい,温暖化でできた氷河の割れ目を探査しているうちに凍りついた古代人の死体を見つけ,壁に絵が書かれていることを見つけます。

 アメリカの研究所に戻ったデヴィッドは顔料の磁性体を分析し,その向きがバラバラであることがわかります。つまり,磁極が短時間のうちに入れ替わった証拠です。そして彼は磁極の反転が氷河期を引き起こし,氷河期が数時間後に襲ってくることを知ります。つまり第2氷河期の襲来です。

 果たして人類はこの未曾有の危機で生き延びられるのだろうか,デビッドがひそかに愛していた女性に愛を告白できるだろうか・・・ってな素敵な映画でございますだよ。


 うーん,どっから突っ込んだらよろしいのでしょうか。まともな部分が全くない映画だからです。まず,科学知識がムチャクチャ。磁極が数時間で入れ替わって,それで氷河期が起こるんだ・・・なんて説明は可愛いもんです。

 例えば,原題は "Absolute Zero",つまり《絶対零度》です。どうやらこの映画を作った人たちは,氷河期になると絶対零度になると思い込んでいるようです。オイオイ,絶対零度というのは絶対に到達できない温度なんだよ。それなのに,実験室の温室の中を絶対零度にして,研究スポンサーに「氷河期になると絶対零度になり,植物は凍りつきます」ってな説明しちゃうんだぜ。しかも,絶対零度になるとすべてが凍りつき,光も反射できなくなって暗黒の世界になるんだって。オイオイ,ブラックホールと絶対零度を混同してないか?

 おまけに「第2氷河期」って何? もしかしたらこの映画を作った人たちは,氷河期はこれまで一度しかなかったと思ってるんじゃないの? しかも,その氷河期襲来までの時間はカウントダウンで表示される親切設定。「氷河期まであと1分25秒!」って具合です。


 しかも,磁極の移動に従って次々と氷河期部分と熱帯部分が移動すると説明されています。その説明どおり,マイアミは一瞬にしてマイナス273℃になっちゃうのですが(・・・それなのに,最初の説明と違って暗黒の世界になってないけどね),ニューヨークのテレビでのお天気番組は普通に流されていて,どうやら異常気象はニューヨークでは起きていない模様。この映画の超テキトーさがよくわかります。
 しかも,画面に映るのは南極とマイアミの海岸とマイアミにあるらしい気象研究所の3箇所だけで,その他の都市やアメリカ以外の国で何が起きているのか,全く不明。急に地球が凍りつく映画といえば,《デイ・アフター・トゥモロー》ってのがあり,こちらも荒唐無稽お馬鹿映画ですが,今回の《サイレント・ワールド》に比べるとはるかに良質の映画でした。


 これだけでも悲惨貧乏系の映画なのに,アメリカの自然パニック映画にお約束の「親子の愛」「男女の愛」を絡めちゃうのです。これが超うざいです。主人公の気象学者は中年前期という感じだし,ヒロイン役もお姉さん,というよりオバサンです。しかも,美人じゃないし・・・。この二人に「今まで言い出せなかったけど,ずっと君が好きだったんだ」ってな具合に愛を語られてもなぁ・・・,しかも猛吹雪の中で・・・。

 こういうタイプの貧乏映画の特徴は主要登場人物が極端に少ない,というのがあります。アメリカ軍も絡んでいる研究所なのに研究員は数人しかいなくて,特に異常気象が起こるあたりからは威張って怒鳴るしか能のない馬鹿所長一人しかいなくなります。猛烈に人手不足の研究所と思われます。

 それだけじゃさすがに寂しいので,気象学者が持ち帰った壁画の顔料を分析する係りとして学生二人が登場します。何でここで学生?
 しかも,男子学生はいかにも役に立ちそうにもないオタク系・・・だけど,女子学生のほうはちょっぴり可愛くて有能な感じ。もちろんアメリカ映画ですから,オタク君は彼女を不器用に映画に誘ったりします。お約束,ってやつです。氷河期襲来まであと数時間なんですけど,のんきなものです。
 おまけに,オタク君はあっけなく墜落死。何のために登場させた人物なんでしょうか。


 唯一の救いは,一人登場する少女(例の愛を告白されるオバサンの子供)がしっかりけなげな演技をしていたことですね。この子だけがこの映画で光っていました。

(2008/05/03)

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