《フライト・オブ・フェニックス》 (2004年,アメリカ)


 サバイバル映画で,脱出映画で,知恵と工夫と根性で役に立たないものから役立つものを作る工学系映画だ。私の好みど真ん中路線ということもあり,最後まで飽きずに鑑賞した。

 でも,素晴らしい傑作かというとそうもいえないのだ。作りの丁寧さがなくて,雑で強引な部分が目に付くからである。娯楽映画としては悪くないのだが,その評価はあくまでも「B級映画としてはよい出来」止まりである。基本的な設定自体は悪くないので惜しいなあと思う。

 ちなみにこの映画は,1965年に公開された映画《飛べ! フェニックス》のリメイクとのことだ。


 舞台はモンゴルのゴビ砂漠。ここで油田開発をしていたチームに突然,本国(もちろんアメリカ合衆国)から閉鎖命令が下り,彼らを北京まで連れ戻す輸送機が到着する。この機を操縦しているのは機長のフランク。彼は輸送機にスタッフと廃材,そして作業機器を積み込んで帰途につくが,行く手には巨大な砂嵐が起きていた。飛行機の積荷は重量オーバーのため嵐を避けきれず,ゴビ砂漠の真ん中に不時着させるのが精一杯だった。

 10人ほどの生存者は当初,積荷の食料と飲料水を分け合って救助を待っていたが,会社にとっては自分たちも積荷も,金をかけてまで捜索して救い出すだけの価値がないのでは,という意見が広がっていく。その時,一人の若い男が「壊れた飛行機から新しい飛行機を作ろう。幸い2つのエンジンのうちの1つは壊れていないし,翼も二つある。これで作れる。僕は飛行機の設計技師だ!」と声を上げる。

 このままでは全員餓死するか,脱水で死ぬだけだ。生きるためには無謀でも飛行機を作り上げ,飛び立つしかない。そして,夜を徹しての作業が始まる。しかし,その砂漠には武装した密輸業者集団もいて・・・・というような映画だ。


 まず,壊れた飛行機から新しい飛行機を作ろうという発想が面白い。なぜそんなことが出来るかというと,もともとの飛行機C-119の独特の形状にある。

 私は航空機については全く知らないのだが,写真でわかるように,前方に客室と貨物室があり,その後方に左右2つのプロペラとエンジン(そして多分,燃料),そして二つの尾翼があり,尾翼同士は最後尾で連結されている。事故で壊れるのは中央の客室+貨物室部分,そして,左側のエンジンだ。そこで,右側の主翼とエンジンを胴体から切り離し,ここに左の主翼をくっつけるというのだ。確かにこれで単発エンジンの飛行機にはなる。これはまさにアイディアの勝利。この映画はもしかしたら,このC-119の機体を見て思いついたんじゃないだろうか。もちろん,翼をつけるといったって,飛行機に詰んである溶接機で溶接しただけで強度は保てるのだろうか,という根本的疑問はあるが,ま,そこらには目をつむろう。


 それと,完璧な正義のヒーローもいなければどうしようもない悪党もいない,という登場人物の造詣も好感が持てる。主人公のパイロットも大きな判断ミスをしてそれを悩んでいるし,飛行機の設計を担当する若い男も「僕がいなければどうしようもできないだろう。だから僕がリーダーだ」と威張り散らす嫌な奴だ。他の登場人物にしても一長一短,いわば等身大の人間しか登場していない。

 最後にこの飛行機が砂漠を滑空し始めた時,武装密輸業者たちが襲って生きて,間一髪のところで飛び上がる,というのはお約束の展開。また,尾翼を操作するワイヤーが切れるという事故が起こり,そこで例の嫌味野郎の設計技師お兄ちゃんが勇気を奮って直しちゃうのもお約束。わかりきった結末だけど,最後に飛び立つシーンは爽快だ。その意味では最後までハラハラさせるけど,安心して見ていられる映画といえる。


 だが,それ以外の部分はちょっと雑。いくらでもツッコミが入れられるのだ。

 例えば冒頭の砂嵐は結構な迫力なんだけど,それにあの飛行機で突っ込んでいくかなぁ? 誰が見ても「こりゃ落ちるな」と思うもの。パイロットと副操縦士のやり取りは面白いけど,言ってみれば二人の単なる判断ミスである。ま,こういう無茶野郎がいないと映画にはならないんだけどね。

 そして,飛行機が砂漠に不時着して機体は砂に完全にすっぽりと埋もれるんだけど,なぜか次のシーンでは機体はきれいに掘り出されている。一晩で誰が掘り出したの? このシーンは笑ってしまったぞ。

 そして,最初の晩にトイレに立った若い男性が転落して行方不明になるんだけど,ここも意味不明。だって,断崖絶壁でオシッコをしたわけでなく,せいぜい,なだらかな砂丘である。それで足を滑らせてどこに消えちゃったの? たとえ足を怪我したとしても,翌朝まで横になり,そこで声を上げればいいだけのこと。彼が姿を消す理由が全く理解できない。


 あと,そのほかにも行方不明になる奴が出てきて,そのたびに探しにいくんだけど,これがまた,広大なゴビ砂漠を当てもなく適当に歩いているだけなのに,ドンピシャで探し当てちゃうんだよ。これだけでもかなりおかしいけど,勝手にいなくなった奴をなぜそこまでしつこく探すのかもよくわからなかった。

 また,「水は一日半リットル」という取り決めがあって,水がなくなったら全滅という状況のはずなんだけど,登場人物はなぜかガンガン照りつける太陽の下で作業をしたり話し合いをしたり取っ組み合いをします。わざわざ水を体から蒸発させようと努力しているとしか思えません。当然,最後の方は飲み水が尽きて脱水状態か,と思うと,そうではなくて皆さんかなり元気です。踊ったりするほどの体力は維持されています。水も食料も最後まで十分に供給されていたのでしょう。

 飛行機の設計技師のお兄ちゃん,実は本物の飛行機でなくも軽飛行機の設計をしていることが後半明かされる。「人が操縦できない模型のほうが,安定飛行させるのが難しいんだ。だから僕が設計したこの飛行機は飛ぶ!」と主張する。もちろん,他のメンバーは呆れ顔。
 そこに強い風が吹いてきて,前方からの風を受けた飛行機がわずかに浮かび上がる,というシーンがある。「ほら,飛行機だって飛びたがっているじゃないか」という気持ちが全員に伝わり・・・といういいシーンである。ところがその次,強烈な砂嵐がまた襲来し,飛行機は砂の中に埋もれてしまうのだが,その前の風であれほど浮いてしまうのなら,嵐の強風で吹き飛ばされてどっかに行っちゃうのでは? これはどう見てもおかしかったな。


 こういう雑なつくりは多少気になるが,基本的には安心して見られる面白い映画だと思う。まだ見たことがない人にはちょっぴりお奨め。

(2008/04/23)

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