《ウィッカーマン》 ★★(2006年,アメリカ)


 1973年にイギリスで作成された同名映画を,われらがニコラス・ケイジ主演に据えたリメイク版です。もちろんハリウッド映画でございます。
 もともとの1973年の映画はカルト映画の中でもとりわけ評価の高い作品で,主演のクリストファー・リーが支配する島に迷い込んだ敬虔なキリスト教徒が目の当たりにする反キリスト教的文化のなかで恐怖体験をするという作品らしく,「70年代でもっともエロティックでもっとも怖い映画」なんて作品らしいです。ちなみに1973年版は日本でも販売されたもののすぐに絶版になり,一時は4万円を超える値段がつき,おまけに原版を収めた倉庫に行こうとしたらその上に道路が作られていて取り出せなかったというエピソードまであり,伝説の怪作にして傑作の名にふさわしいものを感じさせます。
 これはしばらく入手困難なDVDでしたが,amazonでは廉価版を販売しています。一番最後にリンクしておきましたので,この伝説のカルト映画を見たいという人はどうぞ。


 さて,2006年のニコラス・ケイジ版はどうかというと,2006年のラジー賞,つまり最悪映画賞の5部門だったか6部門を受賞する作品となっています。ホラー映画としてはそれなりに面白いし,謎めいた言葉に翻弄されつつも次第に真相に迫っていく過程はサスペンス映画の王道という感じだし,ニコラス刑事,じゃなくてケイジ扮する警察官は恐怖の島を走り回って奮闘します。その意味ではラジー賞を総なめにするほど悪い作品ではないような気がします。もちろん傑作じゃないけどね・・・。

 それにしてもこの映画のラストはちょっとすごいよね。あのまま終わっちゃうのか。もちろん,1973年版でも同じような結末を迎えるらしいのでそれに忠実にリメイクしただけなんだろうけど,この結末でニコラス・ケイジ,本当に良かったの? 彼は要するにアメリカの良心,アメリカ人の理想みたいな俳優さんだと思うんだけど,あのラストの絶叫はケイジファンにはちょっとショックだろうな。「いい人オーラ」しか感じさせないケイジの顔を見ていると,あの結末はないだろうと思ってましたよ。どういう結末か気になる人は,是非ご覧ください。


 一応,ストーリー紹介。

 出だしはなかなか快調です。主人公はケイジ扮するメイラスという白バイ警官。ちなみに「めいらす」と入力して日本語変換すると「滅入らす」と出ますが,後々の彼の運命を予言しているようでございます。
 彼がいつものようにハイウェイをパトロールしていたら,一台の車の窓から人形が投げられたことに気がつきます。その人形を拾った滅入らす,じゃない,メイラスはその車を追いかけて車を止めさせ,車の後ろに乗っている女の子に人形を手渡します。母親は「すみません」と謝るんだけど,肝腎の女の子はせっかく渡された人形をまた道路に放り投げます。躾のなっていないクソガキです。でも性格のいいメイラスはもう一度その人形を拾いに行きます。その瞬間,親子を乗せた車にトラックが激突,車は炎に包まれます。必死に助けようとするメイラスですが,間に合わず,ついに車は爆発し,メイラスは吹き飛ばされます。

 しばし入院していたメイラスですが,同僚から「あの車からは死体は発見されなかったし,車は登録すらされていない」と告げられます。この記憶が何度もメイラスの脳裏に蘇りますが,この不思議な事件(悪夢?)は最後まで何だったのか明かされませんし,メインの物語にも一切関与していない模様です。これは一体なんだったの?

 そんな彼の元に消印の押されていない手紙が届きます。かつての婚約者ウィローからです。彼女は8年前,突然彼の前から姿を消し,その後音信不通だったのですが,「娘のローワンが行方不明だ。誰かに誘拐されたと思うが,誰も信じられない。あなたしか頼る人がいない」という悲痛な内容です。友人の警官に相談しても,「子供がいるってことは父親がいるってことだろう? 娘がいなくなったらそれを探すのはまず父親の仕事だ。無視しろ!」という答えしか返ってきません。しかし,ニコラス・ケイジはいい人です。無視するわけがありません。そして,ウィローとローワンが暮らす島,サマーズアイルに向かいます。


 そうです。この映画はいい人のケイジがいいことをしているのにどんどん悪い方向に巻き込まれるという,怖い映画なんですね。


 サマーズアイル島はワシントン州沖の島でサマーズアイルが所有しています。,一種の原始的共同生活をしているようで,住民のほとんどが女性(成人と女の子)で,わずかにいる男たちは一言も口を利かないという完全女権社会です。島では大量のミツバチが飼われていますが,まさに女王蜂のサマーズアイルが支配し,多数の働き蜂(メス)と少数のオス蜂がいるという構造をしています。

 メイラスはウィローと再会し,早速捜査を始めますが,島民の誰もローワンを見たことがないといいます。島で唯一の学校に行っても,先生も生徒もローワンを知らないと答えます。しかし机が一つ空いていて,明らかにそれはローワンの机です。

 そして島民たちの話から,豊作を願う収穫祭が近く開かれ,その儀式には生贄が捧げられるということを聞き,ローワンがその生贄になるのだろうと推理します。そして同時にウィローから,実はローワンはメイラスの子供なのだと知らされます。メイラスはさらに必死に捜査を続けますが,一向に進展せず謎は深まるばかり。

 そしてついに収穫祭の日になり,クマの着ぐるみで変装して祭りに参加したメイラスは今まさに生贄になろうとしているわが子ローワンを発見。何とか彼女を救い出し,山中を逃走しますがローワンが向かった先で驚愕の事実が判明・・・ってな映画でした。


 ちなみに映画タイトルのWickerとは「枝編み細工で覆った」という意味ですが本物(?)のWicker Manは最後に登場します。なるほど,こいつのことだったのね。

 物語り全体がわかってしまっても,救いようのない内容のため後味の悪さは一級品ってとこでしょう。しかも,メイラスは善意から島に行き,しなくてもいい捜査を善意から買って出て(だって,子供の失踪事件なのだから,それはワシントン州の州警察の管轄ですよね),それなのにみんなの嘘に翻弄され,じわじわと真綿で首を絞められるように逃げ場を失っていくのですから,暗澹たる思いです。ただ,ホラー風味のサスペンス映画としては普通のできだし,構成はしっかりしているため,「ニコラス・ケイジが出演しているちょっと変わった映画」程度の予備知識で見る分には,十分に楽しめるんじゃないでしょうか。

(2008/09/)

Top Page