新しい創傷治療:ヴァン・ヘルシング VS スペースドラキュラ
《ヴァン・ヘルシング VS スペースドラキュラ Doracula 3000》 ★(2003年,アメリカ)
こういうタイトルを見ると,多分しょうもない映画なんだろうな,《ヴァン・ヘルシング》の人気にあやかっただけのクズ映画なんだろうな,とピンと来ますよね。そして多分,レンタルショップで見ても借りないですよね。それが大人の分別というものです。
しかし,世の中にはクズ映画と聞くとなぜか見たくなる変な奴がいるものでして,見ちゃうんですよね。えっ? もちろん私のことでございますよ。クズだとわかってクズ映画を見てツッコミを入れるのが老後の唯一の楽しみなんですから温かい目で見て下さいまし。
それにしても,目も覆わんばかりの低予算映画でございました。ストーリーは一応(それなりに)しっかりしているし,登場人物の性格の書き分けも(それなりに)できているので「端にも棒にもかからない」というほどはひどくありませんが,普通のモンスター映画ファンには時間潰しになるかならないか,微妙なところでしょう。なぜかというと,普通の映画のレベルに達していないからです。
舞台は西暦3000年の宇宙のどこかでございまして,登場するのは漂流宇宙船を見つけては中身をいただいちゃうもんね,という「そりゃ,盗賊か?」というあたりを基本スタンスにしているヘルシング船長以下数人のクルーです。説明の都合上,登場人物を最初に説明しておきますね。
- ヴァン・ヘルシング船長(キャスパー・ヴァン・ディーン):普通に格好いいイケメン兄ちゃん。そこそこ活躍しますが,主人公というほどは活躍しません。ちなみにこの俳優さん,《スターシップ・トゥルーパー》のリコ役の人ですね。
- オーロラ(エリカ・エレニアック):副船長で巨乳担当です。ちなみに女優さんはプレイメイトから女優になった人だったかな。ナイスバディでございますが,乳ポロリのサービスシーンはございません。
- 教授:車椅子生活のエンジニア。
- ハンビー:ごつい黒人。見るからに頼れる戦闘要員。
- 187:知能指数が187ということからこう呼ばれている。中米系と思われるお兄ちゃんですが,ヤク中でおまけにうるさくしゃべっているだけなんで,本当に知能指数が高いかどうかはよくわかりません。
- ミーナ:見習い航海士の女性。印象薄いです。美人でもナイスバディでもありません。
で,映画はいきなり冒頭で西暦2950年の漂流宇宙船の船長さんのビデオから始まります。何でも,原因不明の伝染病が発声して宇宙船の中で蔓延したらしいです。そしてなぜか彼の手には十字架が握られています。
そして50年後にそれを発見したのがヘルシング船長の宇宙船です。そしてミーナとハンビーが偵察として乗り込み,誰もいないことがわかって全員がその船に乗り込みます。そして捜索するうちになぜか自分たちの宇宙船は勝手に切り離されて戻れなくなり,その50年前の宇宙船で地球に戻るしかなくなります。しかも,船長室では体を椅子に縛り付けて十字架を持ったミイラ化した死体が見つかり,しかも,他にも誰かいるような気配がします。一方,船長が残したビデオから,その宇宙船がトランシルバニア(地球のトランシルバニアなのか,宇宙のどこかのトランシルバニアなのかは最後まで不明)からの積荷を運んでいる最中にトラブルに見舞われたことがわかってきます。
頭の中はヤクの事しか考えていない187は貨物室に幾つもの棺桶を発見。密輸船ってのはこういうのにヤクを隠して運んでいるもんさ,と棺を開けようとしますが誤って手を切ります。そして幾つかの棺を開けますが,砂しか入っていません。そこに187の血がポタポタと落ちます。もちろん,棺に入った砂といえばアレしかありません。そこに血液ですからお約束で,ドラキュラ伯爵が蘇っちゃいます。そしてまず,187が襲われて吸血鬼に変身,仲間を襲い始めます。
一方,教授はコンピュータの起動に成功し,吸血鬼についてのデータを検索。木の杭で殺せるとか太陽の光に弱いいう情報とともに,昔,ヴァンパイアハンターとして有名なヴァン・ヘルシングという男がいたことを知ります。偶然にも船長と同姓同名! というわけで,船長はヴァンパイアハンターの末裔ということになります。
太陽の光を浴びせればいいとわかっても,そこは宇宙の辺境のため,最寄の二重恒星まで行くのに13時間必要です。仕方がないので,その恒星を目指して走行します。
一方,オーロラ副船長はドラキュラ伯爵に襲われたはずなのになぜかどこにも咬み傷はなく,吸血鬼にもなりません。なぜかというと,彼女はヘルシング船が怪しいとにらんだ政府組織(?)が潜入操作させたロボットだからです。しかし,教授も吸血鬼になり,ヘルシング船長もお陀仏。残された巨乳ロボとハンビーとドラキュラ伯爵の最後の戦いが始まるのでありました。
順不同で,思い出した順に突っ込みます。
- 漂流宇宙船の中は酸素87%とわかり,いきなり「ここは安全よ」とガスマスクみたいなのをはずすミーナとハンビー。危ねぇ! お前ら,死ぬぞ。
- しかも87%酸素の中でタバコを吸うヘルシング船長。焼身自殺を図ろうとしたんでしょうか。
- 漂流宇宙船に始めて偵察ではいる二人がかぶっているのはガスマスクで,後ろは髪の毛が出ています。真空だったり,あるいは有毒ガスが立ち込めていたらいちころでした
- 宇宙船は宇宙空間にありますが,宇宙船の中は無重力でなく,普通に走ったりしています。ある意味,すごいです。
- 西暦3000年という気が遠くなりそうな未来なのに,2950年に作られた宇宙船の内部はどう見てもそこらの配管むき出しの工場内部みたいにしか見えません。おまけにクルーが持っている銃も20世紀の機関銃です。セットも組む予算も,格好いい未来の武器を作る予算もなかったんだね。
- 最初の偵察二人が漂流宇宙船に入ったところで,ミーナは変な気配を感じますし,実際,背後で走り回る影も映し出されます。この時点でドラキュラ伯爵が動き回っていたとしか考えられません。そして,187の血が棺の中にポタポタというシーンはその後です。つまり,187の血で蘇ったのがドラキュラ伯爵だとすると,その前にもう一人の吸血鬼が宇宙船内にいたはずですが,このあたりは全く説明なし。
- あれだけ棺があるのだから,吸血鬼がわらわらと復活するかと思っていると肩透かしを食います。やはり,予算がなかったんだね。
- しかもドラキュラ伯爵の服装は西暦3000年なのに,伝統的なドラキュラ伯爵のマント姿です。
- 西暦3000年になっても,黒人差別は深刻ですし身障者差別もひどいです。「黒くて醜い」なんて台詞(字幕)をみているだけでヒヤヒヤします。
- それにしても,宇宙船は無重力なのだから,教授は車椅子移動でなく自由に動き回れますよね。
- 結末はある意味,すごいです。巨乳ロボは捜査官ロボの前は風俗系ロボだったことが明かされ,ハンビーに「楽しみましょう」と持ちかけます。ここはサービスのエッチシーンかなと思っていたら,唐突に宇宙船は爆発炎上! この唐突な終わり方はどう考えても,ここで予算が尽きたとしか思えません。貧乏がにくいです。
- ハンビーと187の会話,シモネタ系が多くて下品です。他にもそれっぽい台詞が満載。これだけ下品だと,少し黙れ,といいたくなります。
- ミーナちゃんは全然可愛くないのですが,吸血鬼になって棺で眠っているときは,ムチャクチャ化粧が濃いです。
- 最後の方でドラキュラとヘルシング船長という宿命の対決がありますが,そのシーンはなく,ヘルシング船長はあっさりと咬まれてしまった模様です。主人公としての仕事をしていません。
- 西暦3000年なのに,棺の蓋を開けるのに使われるのはバールです。この方面でも道具は1000年以上,進化しなかったようです。
- これだったら,西暦3000年なんて無理をせず,23世紀くらいにしとけばよかったのに。
- そういえば,日本語吹き替えがないDVDってのは久し振りでした。
あっ,そういえば上記のDVDのジャケットのような化け物ちゃんは最後まで登場しなかったような気が・・・。このジャケットもいい仕事をしています。
(2008/09/26)
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