《ホスピタル Boo》 ★★★(2005年,アメリカ)


 ちょっとヒットしたホラー映画《ホステル》を思わせるDVDジャケットとタイトル,少ない登場人物,しかもどう見てもアホ馬鹿ホラー映画の登場人物にぴったりの5人組,病院の1階と3階を行ったり来たりするだけというチープさなど,どう見たって超低予算・悲惨系ホラー映画だとばかり思っていたら,全然違うんですよ。いい意味で裏切られました。正統派ホラー映画でありながら,正体は主人公の成長物語なんですね。逆にスプラッター系ホラー映画だと思ってみると肩透かしを食った感じかも知れません。


 舞台は30年前の火災が原因で廃墟となったままの病院。幽霊が出るという噂を聞きつけた男女5人組(20代初め頃かな?)がハロウィンだし肝試しに行こうぜ,と入り込んだ,というよくあるパターンのホラー映画です。最初に5人のうちの一人が色々な仕掛けをするために皆より先に病院に乗り込むんだけど,次第に変な現象が起こり始め,これはなんかヤバイんじゃないか,なんて思い始めたときに,いきなり! そして何も知らない4人組(カップル二組というのはお約束)が病院に到着し,病院の扉を開けて入り込みます。同じ頃,その病院に友達と入り込んだ妹が帰ってこないということで警察に依頼があり,彼女の兄と黒人警官(昔,映画のアクション俳優だった)が乗った車も到着。警官が車で待ち,兄が病院の中に入り込みます。

 5人組の一人の少女が主人公で,彼女は霊感が強いためにとても怖がり。最初から逃げ腰ですが,「大丈夫さ,俺たちが守ってやるよ」なんて恋人の調子のいい言葉に帰る機会を失い,皆と奥に進み,そして誘うようにエレベータが空き,それに乗り込むと3階へ。仲間が消えたかと思うとすぐに姿を現すんだけど,なんだか変。そしてちょっと遅れて,妹を探す兄も3階へ。

 やがて,その病院の3階で起きた忌まわしい事件が明らかになり,何が襲ってきているのか,何のために襲ってくるのかわかってくるが,果たして彼らは呪われた3階病棟から脱出できるのだろうか・・・という映画です。


 とにかく,この手の低予算ホラー映画にしては珍しく,ストーリーと脚本がしっかりしています。誰が何のために襲ってくるのか,亡霊が外に世界に執着する理由は何なのか,主人公の霊感の原因となったトラウマは何なのか,あの少女は誰なのか,窓から投げ捨てられた鍵は一体何なのか,なぜ主人公には亡霊たちが見えるのか・・・などの,さまざまに張られたすべての伏線が最後に見事に説明されています。何一つ,謎のままに投げ出していません。非常に丁寧に作られています。

 主人公の少女(超美人でも巨乳でもないけど,意志が強そうな表情が印象的)は最初「霊感怖がりキャラ」なんだけど,その原因となった過去の出来事とトラウマから逃げずに真正面から見据えることで,亡霊たちから逃げるのでなく,対決する道を選びます。このあたりの変化(成長)がなんだか感動的です。

 そして,ホラー映画としても低予算ということを忘れさせる出来上がりといっていいでしょう。最初のほうは不気味な雰囲気だけで,それでいてなかなか亡霊が登場せず,そろそろかなと思ってもまだです,こちらが安心したタイミングを見計らっていきなり登場します。しかも,出てくるタイミングが計算されているため,ホラー慣れしていても最初のうちはちょっと怖いです。そして,見ているほうがそろそろ慣れてくる頃には主人公がたくましく成長しているため,ホラー映画にありがちな単調さをうまく逃れています。また,2組の動きが交互に描かれ,二組が合流するのは後半になってからというのも,うまい設定じゃないでしょうか。

 取り浸かれた人間(死体?)が少しずつ融けてくる様子も程よく気色悪いし(監督はこういう特殊メイクの専門家らしい)また,誰が生きていて,誰が取り憑かれているのかがわからない,という設定もよく,私はむしろこちらのほうが怖かったです。

 それと,意味のない色気シーン,オッパイシーンがないのもいいですね。5人組に一人「小悪魔キャラ」がいるため,普通ならエッチシーンが挿入されるんだろうな,と,たかをくくっていたら,いい意味で期待を裏切ってくれました。

 唯一生かされていなかった設定は「黒人警官は昔アクション俳優をしていて,それから警官になったんだ」という人物設定です。あの「マッチのシーン」で格好よく決めさせてやっても良かったんじゃないでしょうか。


 そうそう,唯一意味がわからなかったのは,原題の《Boo》です。辞書を見ても「ブーイングすること,つまらないこと」なんて意味しか見つからないので,一体どういう意味でこのタイトルをつけたのか,最後まで意味がわかりませんでした。DVDのタイトルを《ホスピタル》にして良かったと思いますね。

(2008/10/08)

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