《ザ・ダーク》 ★★★(2004年,ドイツ/イギリス)


 一応分類としてはホラー映画に入るのだろうが,それほど怖くなく,むしろちょっと物悲しくて切ない感じが残る映画です。幽霊というか怨霊は登場するけれど,怖さはそちらになく,追い詰められていく人間の怖さみたいなのが迫ってきます。

 一番の問題はラストでしょう。この結末,救いようがありません。ラストで2回,どんでん返しがあって最初のどんでん返しで「ちょっと悲しいけど,これはこれでよかったかな」と思っていると,ラストに「オイオイ,これじゃ・・・」という結末が待っているのです。このラストは最後の最後まで読めなかったな・・・というか,こういう結末にはなって欲しくなかったよ。


 舞台はイギリスはウェールズ。その岬に住む父親(画家らしい)のもとに車を走らせる母と娘の様子から始まります。何だか二人の間はギクシャクしている雰囲気で,夜になって車で一夜を過ごすことになり,母親はここで悪夢を見ます。車の窓にいきなり出てくる羊の顔がちょっと怖いです。

 翌日,父親と再会します。父親の家は岬に近い古い家で,なにやらちょっと曰くありげ。近くの岬は断崖絶壁にあり,覗き込むと吸い込まれそうな雰囲気で,しかも荒い波が打ち寄せています。風光明媚というよりは荒涼寂寞,ただならぬ雰囲気を漂わせています。しかも岬の突端には一つの石碑が立っていて,ウェールズ語で「アンヌン(Annwn)」,つまり「あの世への入り口」というような意味の言葉が書かれているのです。そして突然,羊の群れが押し寄せたかと思うと,いきなり崖からダイブ! まるで悪夢のような光景です。

 翌日,父親と一人の村人は溺死した羊の死体を焼却するために集め,母と娘は海岸を散策していますが,いつの間にか娘の姿が見えなくなり,波間に彼女の靴が浮いています。半狂乱になった母親は海に飛び込みますが娘の姿は見つかりません。村人総出の捜索に関わらず,彼女の死体は見つかりません。
 そして,目の前で娘を失ったことがまだ信じられない母親が立ち尽くす窓の外に,娘の姿が見えます。必死で追う彼女はそれが娘でなく,かつてこの家で不幸な死を遂げた少女の亡霊であることを知り,娘はこの世とあの世の狭間で彷徨っていると告げられます。そして,娘を取り戻そうと狂ったように行動する母親は次第にその家で50年前に起きた惨劇を明らかにしていきます。

 50年前,その家では羊飼いとその娘が暮らしていましたが,娘は病気で死にます。しかし,羊飼いは娘の死を納得できず,「一人死ねば,一人生き返る」というウェールズの言い伝えを信じ,村人に説教をして騙し,例の断崖から飛び降りるように仕組み,集団自殺させます。
 その結果,娘は返ってきますが,それから羊が大量に死ぬという事件が続き,父親は甦った娘の頭の中に悪魔が巣食っていると考え,ウェールズで古くから伝わる凄惨な悪魔祓いをします。

 すべてを知った狂乱の母親はようやく娘を見つけますが,ここから先は現実と悪夢が錯綜し,母と娘の間の確執と羊飼いと甦った娘の凄惨な事件が交互に映し出され,自分の娘と羊飼いの娘の区別もつかなくなってきます。そしてついに母親は,全てに決着をつけるために,羊飼いの娘を抱いて崖から飛び降り,冷たい海の中に飛び込みます・・・自分の娘を取り戻すために・・・。

 と,こんな感じの映画です。


 娘のために半狂乱になって行動する母親の姿が鬼気迫っていて,迫真の演技です。ちょっと暴走し過ぎなんですが,彼女と娘の間にあった過去の事件を知るにつれ,もう絶対に娘を手放したくないという愛情が痛いほど伝わってきます。考えてみれば無茶苦茶な設定の映画なんだけど,彼女の必死の形相を見ていると,それが納得できるんですね。母は強し,という言葉を思い出します。

 そして,この母親役に輪をかけて凄いのが,羊飼いの娘エブリル役の子役(10歳前後でしょう)の演技。父親の羊飼いに椅子に縛り付けられて○○されるシーンでの絶叫,そして同じことを50年後に現れた女性(母親)にするシーンの迫力はちょっとびびります。彼女の演技は素晴らしいです。


 この二人の演技を除くと,普通の「あまり怖くないホラー映画」なんですが,最大の問題は結末のつけ方でしょうね。特典画像を見ると別の結末も考えていたようですが,見比べるとやはり本来の結末のほうが「怖い余韻」が残りますね。救いようはない結末だけど,その後この母親(の○○)はどうなるのか,という次なる惨劇が作れるかもしれません。

(2008/10/10)

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