10年以上前の映画だが,今見ても気色悪くて怖いサイコ・キラー系のホラー映画である。そして,公開直後から全米で話題になって2ヶ月以上のクランクインとなり,翌年パート2も作られ,こちらの方もあっという間に興行収入1億ドルを突破,という人気シリーズとなった(ちなみにパート3まで作られているが,2,3となるほどパワーが落ちるという「よくあるパターン」を踏襲してしまった)。
スプラッターホラーとしては非常にうまく作られているんだけど,サイコ・サスペンス系の映画としてみると謎解き部分が投げやりな感じで,なぜこいつがシリアル・キラーになったのかという説明が全く不十分なまま終わってしまう。そこらが気にならなければ見て損はないと思うよ。
舞台はカリフォルニアの片田舎の街,ウッズボロー。家(豪邸ですよ)で一人でビデオを見ようとしている女子高校生ケイシーに電話がかかってくる。はじめはイタズラ電話と思うんだけど,次第に不気味な内容になってきて,生死をかけたゲームを持ちかけられる。間違えたら彼女のボーイフレンドを目の前で殺すというのだ。そしてボーイフレンドが椅子に縛り付けられて内臓をえぐられて死ぬ様子を見せ付けられ,逃げ出そうとする彼女も犠牲になる。帰ってきた両親は,木から吊り下げられ,内臓をえぐられた娘の死体を見つける。ここまでが開始部分だが,凄く怖いぞ。訳がわからないうちに殺人者が迫り,理由もわからず追い詰められていく怖さは心臓に悪い。
そして彼女が通う高校の同級生,シドニー登場(主人公はこちら)。彼女の母親は1年前にレイプされて惨殺されるという事件の犠牲者で,まだその心の傷が癒えていない。一応ボーイフレンドはいるんだけど,体を許すまではいっていない。そして,父親が出張に出たその日,彼女にも電話がかかってきて,「電話を切ると母親のように殺す」と告げられ,いきなり,ハロウィンの死神のマスクを被った犯人が襲ってくる。しかしその時,彼女のボーイフレンド,ビリーが現れ,死神マスクは逃げ出し,彼女は間一髪で助かる。しかし,ビリーが携帯電話を持っていたこと(当時は個人で持っている人はまだ珍しかったのだろう),あまりによ過ぎる登場のタイミングに不信感を抱き,駆けつけた警官はビリーを容疑者として連行する。しかし,彼が留置所に交流されているまさにそのときに,また例の電話がかかってくる。
翌日,登校したシドニーはトイレでまたも死神マスクに襲われ,休校になった学校内で校長も惨殺される。一方,シドニーの母親惨殺事件を追っているテレビレポーターはこの事件との関連に気付き,事件の謎を解明しようと彼女に近付いてくる。
そして,ビリーのなかまたちは「休校を楽しもうぜ」とパーティーを開催し若者達が集まるが,ここで惨劇が幕をあげる・・・という風に物語りは進み,息もつかせぬ最後の15分間のジェットコースターのようなクライマックスに突入し,凄惨な血みどろの結末を迎える。
この映画の面白いところは,作り手が徹底的に楽しんでいることだ。さまざまなホラー映画,サスペンス映画を引用し,登場人物(映画オタク,ホラー映画オタクが多い)は映画の薀蓄を披露し合う。シドニーとビリーの「俺たち,X指定かR指定映画のように愛し合ってたじゃないか」なんてセリフには笑ってしまうぞ。
さらに面白いのが,パーティーでホラー映画オタクが「連続殺人鬼から生き延びるには」と説明するんだけど,これが傑作。
他の場面でも,シドニーが「ホラー映画の女の子って馬鹿みたい。外に逃げればいいのに二階に逃げちゃう」なんてのも笑ってしまった。ホラー映画の約束事を知り尽くして,それを逆手に取ってネタにするなんて,よくできてますよ。さらに,「倒したと思ったボスキャラはなかなか死なない,必ずもう一度襲ってくる」という鉄板シーンもあって,しかも一ひねりしてあるし,こういうところも凝っていた。
ただ,前述のようにサスペンス映画,犯人探し映画としては極めて杜撰。パーティーの場面でドンドン殺されていき,怪しそうな奴も殺され,やっぱりこいつか,と誰しも思う人物も死神マスクに切り付けられ,見ているほうにしては「もうここまで殺されちゃうと,犯人候補が残っていないじゃないか」と匙を投げるしかなくなってしまう。
まぁ,確かに,犯人は最後にはわかるし,死神マスクがなぜ神出鬼没なのかも明らかになる。ただわからないのは,なぜこの犯人が連続殺人を起こしたのか,なぜ,シドニーの母親を殺したのかである。さらに,「シドニーの母親殺人事件」のあと,1年間鳴りを潜めていて,映画冒頭のケイシーとそのボーイフレンド殺人事件の後に怒涛の如く殺人を重ねた理由もよくわからない。なぜ1年間,大人しくしていたんだろうか。それとも,1年に一時期だけ殺人衝動に駆られたんだろうか。このあたりは最後までよくわからなかったな。
というわけで,細かいところを気にしなければ,ホラー映画ファンなら十分に楽しめるだろうと思う。
(2008/11/11)